プロシーンのニッチピック通信簿vol.4 リサンドラ on EULCS

June 25, 2018 by lol-cla管理人, Patch 8.11

永き眠りから解き放たれた氷の女王、その特性とは
こんにちは。
サッカーやLCS、梅雨の合間の突然の熱波など夏バテシナジーの高い環境攻撃にやられつつある昨今、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

各国のサマーシーズンが始まってはや2週間。サモナーズリフト同様、混沌としたメタのなかで様々なニッチチャンピオンがサモナーズリフトを沸かせています。

これはあのシリーズを復活させるべきではないか!ということでプロシーンのニッチピック通信簿、久々の投稿です。

ちょっと古いメタですが、以前の投稿はこちら。

第1回 ヴェル=コズ編(Link
第2回 スウェイン編(Link
第3回 ジンクス編(Link


今回扱うのは氷の魔女・リサンドラ。



シーズン7ではWorldsのノックアウトステージでSSGのCrown選手がピックして(一部で)話題になったチャンピオンですが、シーズン通してピック数は13と完全にメタから外れた存在でした。

それはシーズン8に入っても同様で、スプリングシーズンでは2回のピックにとどまっていましたが、サマーに入ってからはすでに7回もピックされ、5勝2敗と好成績を残しています。(6月25日現在)

いかにしてこの最低最悪の魔女がサモナーズリフトに再誕したのか、それにはまさにフレヨルドのように厳しい8.11の環境と3つに分かれて争う勢力が関係していたのです。

現在のメタ、リサンドラの特徴・強さ、ビルドの選択、最後に今後もピックされるかの評価といった順に進めてみようと思います。

今回もそこそこ長くなると思います。といってもモルガナのダークバインドのスネアが解けるまでには読み終わるはずです、ご安心を。



8.11における3つのチーム構成



まず最初に現在のメタについて軽く解説をいれておこうとおもいます。

ボットレーンからADCが消えたり、ミッドとジャングルが一緒にジャングルを回り始めたりと、様々なことが起こりすぎて混乱してらっしゃる方も多いと思いますが、実はこれらは3種類のチーム構成に集約できます。

チームファイト構成、キャッチ構成、ファンネリング構成の3つです。

これらを一つひとつ見ていくとそれで1つの記事になってしまうので、(チーム編成の記事はこちらなどを参照)それぞれ簡単に特徴などを説明していこうと思います。


チームファイト構成



文字通り5v5の集団戦を戦うためのチーム構成です。
AOEスキルを豊富に持ち、バロンやドラゴン、タワー前などオブジェクト周辺でのファイトを得意としています。
従来のチームファイト構成と違うのはボットレーンにスウェインやブラッドミアなど集団戦能力の高いメイジを配置するパターンが存在するということです。

代表的なピック例(レッドサイド・KT)



KT Rolsterはカミール、ラカンといったエンゲージツールをもったチャンピオンに、集団戦でのポテンシャルが高いスウェイン、イレリアをキャリーとして配置しています。

BBQ vs KT Week2 game1(動画はこちら

現在はいわゆるマークスマンタイプのチャンピオンが減ったので全体的に集団戦で両チームが密集しやすくなり、よりAOEが効果的に機能しやすい環境にあります。

そういった条件も踏まえるとある種一番「安全」な構成といえるでしょう。

弱点は集団戦性能に偏るため、少数戦時にダメージが足りないということが起こりやすい点です。
また大きなオブジェクトにフォーカスしている構成なので、序盤から試合を動かしていくのがやや難しいといった点も弱点でしょう。


キャッチ構成



スカーミッシュ構成とも言います。
スカーミッシュとは少数戦のことで、先に説明したチームファイト構成と違い、2v2や3v3など全員が揃わない戦闘に特化したチーム構成です。
(いわゆる赤スマイトのアイテムの名前もスカーミッシュセイバーといいます)

1人を捕まえて倒しきることが得意なチャンピオンを主にミッドとジャングルに配置して、相手のジャングラーやミッドを狙い撃ちにする、というのが今のメタではよく見られます。

ルル、ノクターンによるアルティメットコンボだったり、ゾーイとカミールのような長射程CCと高機動力を組み合わせるようなコンボピックがよく見られます。

代表的なピック例(ブルーサイド・FPX)



Funplus Phoenixはルル、ノクターンのコンボピックに加え、との相性のいいシェン、少数戦にアルティメットの船旅で駆け付けられるタム・ケンチ、サポートがロームしてもある程度安全にファームが出来るエズリアルという構成。

このピックはをスノーボールさせることをフォーカスした構成ですが、トップにエイトロックスを置いたり、ボットにルシアンを置いて、レーナーをスノーボールさせるというパターンもあります。

LPL week2 Funplus Phoenix vs Rouge Warriors(動画はこちら

序盤(ノクターンの場合はレベル6以降が中心ですが)から積極的に試合を動かしていけるため、ゲーム展開が早いいまのメタにマッチしています。
現在非常に強力なリフトヘラルドも獲得しやすく、オブジェクトのスノーボールが期待出来る構成です。

弱点はパワースパイクが前半に寄りがちという点です。

大概は敵中にダイブするジャングラーをピックすることになるので、ゲーム後半の集団戦ではフォーカスを受けてあっというまに倒されてしまうといったことが多発します。

またこういったキャッチ構成が流行ったことで、パーフェクトタイミングを選択するプレイヤーが増えたのもやや逆風といえるでしょう。

はじまりのストップウォッチの使用可能時間が試合開始8分からと、ちょうどジャングラーのレベル6タイミング直後になったので、ここでアウトプレイされてしまうと流れを失って、そのまま相手チームの集団戦パワーに押し負けてしまう、といった展開に陥りがちです。


ファンネリング構成



ファンネルとは漏斗のこと。一人のチャンピオンにファームを集中して、強引にパワースパイクを早め、そのチャンピオンを中心に戦っていう構成のことです。
(ファンネリングに関してはこちらに非常に良い記事があります。未読の方はぜひ)

簡単にいうとジャングルの経験値がチャンピオンのレベルに寄らず一定値得られるようになったことや、リフトスカトルの経験値が大きくなったことがこの戦術が生まれるきっかけとなっています。

LCK開幕戦でいきなり出た、ヌヌ・カーサス対タリック・マスターイーのファンネリング対決は印象的ですね。

最近ではLJLでも見られたカイ=サやLCKで出たザヤ・ラカンファンネリングなどADCを育てるパターンが多くなってきました。

代表的なピック例(ブルーサイド・V3)



V3 esportsはトップにCCタンク(チョ=ガス)を置き、3体のサポートチャンピオンと経験値とゴールドを集めるカイ=サという典型的なファンネリング構成になっています。
ブラウムとカイ=サは2人セットになって動き、ミッドのCSとジャングルキャンプをすべて1人に集中させます。

この場合ルルをボットレーンのADC枠として使用することが多いです。
モルガナにCSをあつめるとするとW上げをしてウェーブクリアしなければいけないのに対し、ルルはQ上げをすることでCCとウェーブクリアが両立できるからです。

サポートを2枚にする場合はCCチェインの出来るヤスオを置いたりもします。

LJL week2 V3 esports vs PENTAGRAM (動画はこちら

このチーム構成の特徴はミッドでのレーン戦を拒否することで相手のミッドレーナーのレーンの強さを無視できること、そしてファンネリングを受けたチャンピオンが集団戦で多くのサポートに守られてキャリーするという2点です。

プロテクトADC構成の亜種と言っても良いでしょう。

弱点は、キャリーが育つまで何もできないこと。
またファンネリングの最中にミッドをプッシュされ過ぎると、相手のミッドレーナーにロームのチャンスを与える他、スカトルのコントロールが難しくなり、ファンネリングの効果が薄れる、といった問題点を抱えています。


この3つの勢力が相争っているのが8.11のメタです。

単純な3すくみになっているわけではなく、お互いがお互いに強いところを押し付け合って、うまくいったほうが勝つという、
ADCがいなかったりミッドレーナーがレーンにいなかったりと見た目はいびつですがバランスは取れている環境と言ってもいいかもしれません。



いまのメタでリサンドラをピックする利点



さて本題であるリサンドラに話題を移していきましょう。
リサンドラはこの3つのメタ構成に対してどう作用するのでしょうか。
それぞれの構成ごとに見ていきましょう。


ファンネリング対策になるプッシュ性能と確定CC



リサンドラはパッシブによるマナコスト踏み倒しと、QのAOEによってレーンをプッシュすることが容易なチャンピオンです。

ファンネリングの項でも書きましたが、ミッドレーンをプッシュされるとファンネリング側はミッドレーンへのカバーに時間を取られ、リフトスカトルの確保が難しくなったり、ジャングルクリアが遅くなったりする弱点があります。

さらにプッシュしたあとにロームすることが出来るのもリサンドラの強みです。
優秀なブリンクスキルのEや対象指定不可になるRを活かして序盤からタワーダイブを狙っていけます。

ジャングル内での2v2でもキャッチ能力に優れたリサンドラは活躍します。CCが豊富なので、グレイブスやトランドルといったダメージを出し始めると強いチャンピオンと組み合わせることでファンネリングチャンピオンを制圧することも可能です。

またファンネリングされたチャンピオンが育っても、リサンドラには対象指定の1.5秒スタンという非常に強力な確定CCであるアルティメットがあります。
ファンネリング構成は育てたチャンピオンが集団戦でキャリーする構成ですが、それに対し常にプレッシャーをかけ続けることが出来るのです。

序盤・中盤・終盤、全ての時間帯でファンネリング構成に対してカウンターとして機能するため、1枚ピックするだけで相手のファンネリングを咎めることが出来る非常に便利なピックとなっています。

実際LCKで最初にリサンドラがピックされたのは、いわゆるMa-Ta構成に対してでした。(Ma-Ta構成とはの名前から付けられた愛称)

Afreeca Freecs vs bbq Olivers week2 game2(動画はこちら


2回の無敵と高性能ブリンクでキャッチ構成に刺さる



リサンドラはアルティメットフローズングレイブをセルフキャストしたときに2.5秒間の対象不可状態になることが出来ます。
さらに先に触れた採用率の上がっている始まりのストップウォッチ、その合成先のゾーニャの砂時計を使用することで追加の2.5秒無敵を得ることができるので、都合5秒間無敵になれるチャンピオンなのです。

キャッチ構成で良く採用されるカミールのヘクステック・アルティメイタムですら効果時間は4秒なので、その効果時間のすべてを無敵でやり過ごすことが出来る計算になります。

Eのグラシアルパスも、あらかじめ発動させておけば、途中で短いCCを受けたとしても再使用でワープが可能な超優秀ブリンクスキルで、リサンドラを捕まえきるのは容易ではありません。

もちろんスノーボールしたチャンピオンをアルティメットでキャッチすることも出来るので、スノーボールさせない、スノーボールされても止められるといった面でキャッチ構成に対してもカウンターとして機能するわけです。


チームファイトで役立つ短射程高性能CC



リサンドラの弱点はダメージがミッドレーナーとしてはやや物足りないこと、そしてAOEスキルの射程が全体的に短いことが挙げられます。

8.10以前のいわゆるEUメタの構成が大勢を占めていた時代では、相手のキャリーを止めに行くと深く踏み込むせいでAOEを活かしきれず、
AOEを活かそうとフロントラインにスキルをいれてもダメージが物足りないというジレンマを抱えていました。

ところがボットレーンにライズやブラッドミアといったのやや射程の短いDPSメイジや、モルデカイザーやヤスオといった近接型チャンピオンがピックされるようになった8.11以降では、お互いのチャンピオンが密集した状態での集団戦が多くなりました。

つまりリサンドラは持ち味である強力なAOECCを、キャリーとフロントライン、同時に巻き込めるチャンスが増えたということです。

集団戦でリサンドラが機能した1シーンを見てみましょう。

バロンをスタートしていたレッドチームに対してE→Wで4マンスネア



アルティメットでフォーカスを外しつつスローフィールドを展開したところにブラッドミアのアルティメットがコンボ



この時点で7000ゴールドビハインドだったRoccatでしたが、集団戦を2-0で勝利することになりました。(集団戦の動画はこちら


まとめると、リサンドラはチームファイト構成にマッチしていて、キャッチ構成とファンネリング構成をカウンターできるチャンピオンということになります。

いまのメタにこれ以上ないほどフィットしているといっても過言ではないでしょう。



2種類あるリサンドラのビルドパスの使い分け



さて、リサンドラがいかに今のメタにあっているかはお判りいただけたとおもいますので、次はビルド・ルーンについて見ていきましょう。


アイテムビルド



現在の競技シーンで見るリサンドラは大きく分けて2種類のビルドが採用されています。
1つはへクステック・プロトベルトルート、もう1つはロッド・オブ・エイジスルートです。

ルートは、基本的に対ファンネリング構成のときにビルドされます。
パワースパイクが早く、(と違って買った瞬間から強い)、ウェーブクリア能力もアップするため、ゲーム展開を早めたい時に買うアイテムです。

ルートは、対キャッチ構成時にビルドされています。
ヘルスが増えるので、集団戦のイニシエートが行いやすくなるほか、ノクターンなどにフォーカスを受けた時の生存確率があがります。

2つ目以降は大体固定されていて、まずはゾーニャの砂時計、3つ目以降は反映率があまり高くないことも加味して魔法貫通率重視の、モレロノミコンやヴォイドスタッフなどが主流です。

AOEが多いので重症をばら撒けるモレロノミコンは敵チャンピオンに寄らずビルドする傾向にあるようです。

靴はルートの場合はアイオニアブーツ、ルートの場合はソーサラーシューズが安定の選択肢。

最終的なビルドは以下のような感じです。

対ファンネリング:
対キャッチ:


ルーン設定例





エアリー召喚がパワースパイク的にもリサンドラの長所とマッチしていて、これが一番採用率の高いキーストーンになっています。
他のルーンは無難に相性のいいものを選択した形です。ロームを強く意識するなら至高にかえて追い風というのも良いでしょう。

パーフェクトタイミングはのクールタイムを15%軽減してくれる効果があり、よほどレーンがきついマッチアップ以外で必須と言えそうです。
ミニオン吸収装置もロームチャンスを生む他、初手に統率の旗を買うミッドルルへの対策にもなっています。(8.12以降はが削除されたので少し変わるかもしれませんが)



リサンドラは今後もピックされ続けるか



今回も評価の時間がやってまいりました。
ファンネリング対策、チームファイト構成のCC・イニシエーターとしてピックされているリサンドラは
それとも一時的なブームに終わってしまうのでしょうか。


評価は4段階で行いたいと思います。評価は以下の通りです。


4点:エウレカ! これはきっと世界を席巻するNewメタになりますね。

3点:素晴らしいピック! このチャンピオンをピックするフォロアーが各地で出てくるでしょう。

2点:悪くないね! 弱点はあるけど部分的には成立しています。

1点:残念! 意欲的なピックだったけどあまり成功しなさそうです。





さて今回のリサンドラの評価は・・・


3点:素晴らしいピック! このチャンピオンをピックするフォロアーが各地で出てくるでしょう。

EULCSでRoccatのBlanc選手が最初にピックしたリサンドラですが、今後も一定数はピックされ続けると思います。

安定した性能をもった万能メイジであり、メタ的にも恵まれたチャンピオンですが、どうしてもミッドレーナーとしてはダメージが物足りないという弱点は付きまといます。

それでもピックされるルルやガリオと比べると味方に与えるユーティリティ性能は低いので、
ボットレーンやトップレーンにある程度しっかりとしたダメージディーラーが用意しなければいけない点や、

イニシエーターとしての信頼度がそこまで高くないので、他にもイニシエートが出来る、あるいは補助できるチャンピオンがいたほうがいい点など、

ドラフト面で多少の制約がかかるので、とりあえず取っておく、といったほどのチャンピオンパワーは感じませんが、十分競技シーンで活躍できるだけのポテンシャルは備えていると思います。



おわりに



いかがだったでしょうか。

2週間の間に目まぐるしくメタがまわっている印象がある今の競技シーン。
特にノクターンの評価の上がり方やADCファンネリングなどはプロの研究のすごさを感じさせられますよね。

リサンドラは何でもできる器用貧乏なチャンピオンなので、特化したチャンピオンに対しては及ばないチャンピオンともいえます。

またアルティメットのキャッチ性能も実はスタン発動までに0.4秒のラグがあり、そこでザヤのRカミールのRなどの対象不能スキルを発動されると、拘束に失敗するといった弱点があります。(スローフィールドとダメージは発動する)

SKTが採用したようなザヤファンネリングに対してリサンドラをピックして、ザヤが超反応を見せてアウトプレイする、といったシーンが見られるかもしれませんね。

とはいえ久々にメタが彼女に回ってきているのは間違いないので、今週以降の活躍にも期待したいです。


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