WCS 2017 SKT vs SSG ゲーム前分析
いよいよ明日にせまった決勝戦、両チームのピック傾向などを分析する
いよいよ明日、11月4日16:00に迫ったWorlds2017の決勝は去年に引き続き韓国勢、LCK代表のSKTelecomT1 (以下SKT)対 Samsung Garaxy(以下SSG)のカードになりました。
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本記事ではそれぞれのチームのここまでの戦績やピック・バンの傾向を振り返り、どのようなチャンピオンが焦点になっているか分析します。
SKTはここまで11勝5敗。
去年は決勝進出時点で11勝4敗だったので数字的にはそこまで変わらないようにも見えますが、
グループステージのEDG戦、準々決勝のMSF戦など落としても不思議ではない試合をいくつも奇跡的なプレイで乗り越えてきた上での11勝5敗で、数字以上に今年は苦戦している印象があります。
その大きな要因はジャングラーのプレゼンスの低さだと思います。
ジャングルがどれだけゲームを支配できているかの指標になるワード破壊率(敵チームがワードを置いた数に対して自チームがどれだけワードを破壊できたかの割合)ですが、
去年は46.5%だったのに対し、今年36.1%とかなり数字を落としています。
去年はジャングラーのメタがリー・シンやオラフなどのファイター系中心だったので、タンク中心の今年のメタよりも数値が落ちるのは致し方ないところはありますが、それでも36.1%という数字はかなり悪いです。(ノックアウトステージ進出チーム8チームの中で6位)
これはPeanut選手やBlank選手の不調、もあるかもしれませんが、SKTのドラフト戦略がジャングルをかなり軽視したものになっていることに由来していると考えています。
セジュアニのピック数は3回でこれはノックアウトステージ進出チーム8チームの中で7位、最下位は自分たちでセジュアニを高確率でバンしていたCloud9(セジュアニのバン率75%)であることを考えるとかなり低い数字です。
ところでSKTは今シーズン一貫してBotレーンを重視したドラフト戦術を敷いています。
Worlds2017でもジャンナをバンしてWolf選手のためにルルを取るというドラフトを頻繁におこなっています。
ルルは現状、ピックすればボットレーンの優位をほぼ確実に取れるチャンピオンになっています。
Bang選手にトリスターナ、コグ=マウ、トゥイッチといったチャンピオンをピックし、レーンで優位をとって相手のボットレーンよりも先にパワースパイクを迎えるというドラフトです。
ボットレーンの優位を取るためにバン枠を割くので、ジャングラーにしわ寄せ、具体的には対面ジャングラーにセジュアニを渡すこと、が来ているのです。
本大会のSKTは赤側の勝率が4-4の5割と低いのですが、赤側はカリスタをかならずバンしなければいけない関係でバン枠が実質ひとつ少なく、ボット偏重のドラフト戦略とこのバン枠制限があいまって、よりジャングラーに負担を背負わせがちになっている、と言えるでしょう。
これにはPeanut選手とBlank選手のチャンピオンプールの問題も関わってきます。
Peanut選手はキャリータイプのジャングラーを好み、本大会のメタでいえばジャーバンIV、グラガス、ニダリー、エズリアルあたりが使いたいプレイヤーです。
Blank選手はタンクタイプのジャングラーが得意で、セジュアニ、ジャーバンIV、グラガスといったところがチャンピオンプールになっています。
準決勝のRoyal Never Giveup戦ではBlank選手が最初の3戦で先発しましたが、赤サイドだった1、3戦目でグラガスをバンされセジュアニを取られるというドラフトになり、Blank選手は仕方なくザックをプレイさせられるという展開になっていました。(結果は両方とも敗戦)
ここまで悪いことばかり書いてきたので、良い点も挙げておきましょう。
1番目立つ点はやはりHuni選手の存在です。
1番多くピックしているジェイスに限らず、カミールやナーといったキャリーできるトップレーナーをピック出来る点がSKTのストロングポイントになっています。
チョ=ガス、シェンをかなりの確率でバンしていますし、Huni選手の個人技で状況が打開しやすいピックの組み立ても多くみられます。
Faker選手はガリオをメインにタリヤ、オリアナといったユーティリティ性能の高いチャンピオンをピックしてチームを支える動きに徹しています。
ジャングルにパワーの弱いチャンピオンを渡しがちということで、それを補助できるチャンピオンを取るといった感じでしょうか。
SSGはここまで11勝3敗。
グループステージこそ2位通過でしたが、ノックアウトステージに移ってから3-0、3‐1と安定した成績で決勝まで勝ち上がってきました。
SSGのドラフトの特徴はアーデントセンサー持ちのチャンピオンを積極的にバンすることです。
ジャンナ31%、ルル31%、ラカン38%と3枚ものアーデントセンサーがバン率上位6位内に含まれています。
SKTは上位6つだとジャンナしかランクインしていないことを考えると非常に偏ったドラフトであるといえるでしょう。
なぜこれだけ積極的にセンサーサポートをバンできるかというとサポートのCoreJJ選手がタリックを非常に得意としているからに他なりません。
タリックはアーデントセンサーを持てる上にタンクタイプのチャンピオンという独特な性能でボットレーンで集団戦が起きやすい現在のメタにも非常にマッチしているチャンピオンなのですが、扱いが難しく積極的にピックするプレイヤーは多くありません。
Worlds2017でCoreJJ選手はタリックを5回ピックしていますがこれはもちろん1位で、2位がピック数2回ということからもいかに傑出した数字かというのが伝わると思います。
もうひとつの特徴はRuler選手のヴァルスのピック率の高さです。
彼はもともとアッシュやジンといったCC持ちのADCを得意としており、ヴァルスもそんな彼のプレイスタイルにマッチした選択といえるでしょう。
ビルド面でもセカンドアイテムにウィッツエンドを選択することが非常に多く、これはタリヤ、マルザハールといったバーストタイプでないチャンピオンを多くピックしているミッドのCrown選手のプールともマッチしています。
タリックとヴァルスという2つの他チームの優先順位がやや低いチャンピオンをメインにおくボットレーンを抱えているSSGは、そのおかげで自由なドラフト戦略を組み立てやすいのが特徴です。
オーソドックスな最初の3pickでジャングル、ADC、サポートを取るにしてもジャングル以外は優先する必要がないからです。
そのおかげもあってジャングルのAmbition選手はセジュアニ、グラガスという彼にとってのコンフォートピックが全体の約2/3を占めています。
ここがSKTとの大きな違いですね。
ワード破壊率も41.7%とノックアウトステージ8チームの中で断トツの1位です。
トップのCuvee選手はここまでシェンとチョ=ガスをメインにピックしてきています。これらはSKTが高確率でバンしているチャンピオンですが、他にもケネン、ナー、カミールといったスプリットプッシャーもプールにあるのでそんなに心配はいらないでしょう。
ドラフト面ではSSGの弱点らしい弱点は見つけられません。
しいていえばチーム全体でここまで1回しかジャーバンIVをピックしていない点です。(しかもピックした試合は負けている)
対戦相手のSKTは8回ピックして6勝と好成績を残しているので、このチャンピオンにはバン枠を割かざるをえないでしょう。
一番の注目は
Faker選手の本大会のメインチャンピオンですが、Crown選手はマルザハールやコーキといったチャンピオンで対抗できます。
さらにガリオを優先することでまたSKTはジャングラーに負担を強いることになりますから、少し取りづらいです。
とはいえガリオというチャンピオンのポテンシャル自体は非常に高いですし、それを信じてSKTがピックし続ける可能性もありますし、SKTが敬遠した場合に逆にSSG側がガリオを取り上げるというパターンもありえるでしょう。
2つ目はSKTのスターターです。
個人的には青側のときはBlank選手、赤側のときはPeanut選手という起用がベストなのかなという印象です。
赤側だと前述の通りタンクジャングラーを潰しきられてしまう可能性が高く、Blank選手がまたザックを使う憂き目にあってしまうでしょう。
先に2ピック出来るのも赤側の強みなので、強いボットデュオを1stローテーションで確保し、3rdピックにPeanut選手用のニダリーを取るというドラフトは強力そうです。
というのもSSGはアーデントセンサー系のサポートを多くバンする傾向にあるので、ジャングルでアーデントセンサーを持てるニダリーというのは非常に価値が高いのです。
逆に青側のときはAmbition選手からセジュアニとグラガスという2チャンピオンをバンないしは取り上げることが容易で、Blank選手が活躍しやすいドラフトが組み立てられるでしょう。
まとめると、両チームとも青側のほうがドラフトが組み立てやすいように思えます。
如何に青側できちんと勝利するかというのが両チームにとって重要になりそうな決勝戦といえるでしょう。
ドラフトの観点からいうと、ピックの柔軟性やここまでのパフォーマンスを見て
ような気がしています。きっと当たりませんが。
とにかく1ファンとして決勝の行方を楽しみにしたいと思います。GLHF!
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本記事ではそれぞれのチームのここまでの戦績やピック・バンの傾向を振り返り、どのようなチャンピオンが焦点になっているか分析します。
昨年よりも苦しんでいるSKT
SKTはここまで11勝5敗。
去年は決勝進出時点で11勝4敗だったので数字的にはそこまで変わらないようにも見えますが、
グループステージのEDG戦、準々決勝のMSF戦など落としても不思議ではない試合をいくつも奇跡的なプレイで乗り越えてきた上での11勝5敗で、数字以上に今年は苦戦している印象があります。
その大きな要因はジャングラーのプレゼンスの低さだと思います。
ジャングルがどれだけゲームを支配できているかの指標になるワード破壊率(敵チームがワードを置いた数に対して自チームがどれだけワードを破壊できたかの割合)ですが、
去年は46.5%だったのに対し、今年36.1%とかなり数字を落としています。
去年はジャングラーのメタがリー・シンやオラフなどのファイター系中心だったので、タンク中心の今年のメタよりも数値が落ちるのは致し方ないところはありますが、それでも36.1%という数字はかなり悪いです。(ノックアウトステージ進出チーム8チームの中で6位)
これはPeanut選手やBlank選手の不調、もあるかもしれませんが、SKTのドラフト戦略がジャングルをかなり軽視したものになっていることに由来していると考えています。
セジュアニのピック数は3回でこれはノックアウトステージ進出チーム8チームの中で7位、最下位は自分たちでセジュアニを高確率でバンしていたCloud9(セジュアニのバン率75%)であることを考えるとかなり低い数字です。
ところでSKTは今シーズン一貫してBotレーンを重視したドラフト戦術を敷いています。
Worlds2017でもジャンナをバンしてWolf選手のためにルルを取るというドラフトを頻繁におこなっています。
ルルは現状、ピックすればボットレーンの優位をほぼ確実に取れるチャンピオンになっています。
Bang選手にトリスターナ、コグ=マウ、トゥイッチといったチャンピオンをピックし、レーンで優位をとって相手のボットレーンよりも先にパワースパイクを迎えるというドラフトです。
ボットレーンの優位を取るためにバン枠を割くので、ジャングラーにしわ寄せ、具体的には対面ジャングラーにセジュアニを渡すこと、が来ているのです。
本大会のSKTは赤側の勝率が4-4の5割と低いのですが、赤側はカリスタをかならずバンしなければいけない関係でバン枠が実質ひとつ少なく、ボット偏重のドラフト戦略とこのバン枠制限があいまって、よりジャングラーに負担を背負わせがちになっている、と言えるでしょう。
これにはPeanut選手とBlank選手のチャンピオンプールの問題も関わってきます。
Peanut選手はキャリータイプのジャングラーを好み、本大会のメタでいえばジャーバンIV、グラガス、ニダリー、エズリアルあたりが使いたいプレイヤーです。
Blank選手はタンクタイプのジャングラーが得意で、セジュアニ、ジャーバンIV、グラガスといったところがチャンピオンプールになっています。
準決勝のRoyal Never Giveup戦ではBlank選手が最初の3戦で先発しましたが、赤サイドだった1、3戦目でグラガスをバンされセジュアニを取られるというドラフトになり、Blank選手は仕方なくザックをプレイさせられるという展開になっていました。(結果は両方とも敗戦)
ここまで悪いことばかり書いてきたので、良い点も挙げておきましょう。
1番目立つ点はやはりHuni選手の存在です。
1番多くピックしているジェイスに限らず、カミールやナーといったキャリーできるトップレーナーをピック出来る点がSKTのストロングポイントになっています。
チョ=ガス、シェンをかなりの確率でバンしていますし、Huni選手の個人技で状況が打開しやすいピックの組み立ても多くみられます。
Faker選手はガリオをメインにタリヤ、オリアナといったユーティリティ性能の高いチャンピオンをピックしてチームを支える動きに徹しています。
ジャングルにパワーの弱いチャンピオンを渡しがちということで、それを補助できるチャンピオンを取るといった感じでしょうか。
特異な武器でドラフトを優位に進めるSSG
SSGはここまで11勝3敗。
グループステージこそ2位通過でしたが、ノックアウトステージに移ってから3-0、3‐1と安定した成績で決勝まで勝ち上がってきました。
SSGのドラフトの特徴はアーデントセンサー持ちのチャンピオンを積極的にバンすることです。
ジャンナ31%、ルル31%、ラカン38%と3枚ものアーデントセンサーがバン率上位6位内に含まれています。
SKTは上位6つだとジャンナしかランクインしていないことを考えると非常に偏ったドラフトであるといえるでしょう。
なぜこれだけ積極的にセンサーサポートをバンできるかというとサポートのCoreJJ選手がタリックを非常に得意としているからに他なりません。
タリックはアーデントセンサーを持てる上にタンクタイプのチャンピオンという独特な性能でボットレーンで集団戦が起きやすい現在のメタにも非常にマッチしているチャンピオンなのですが、扱いが難しく積極的にピックするプレイヤーは多くありません。
Worlds2017でCoreJJ選手はタリックを5回ピックしていますがこれはもちろん1位で、2位がピック数2回ということからもいかに傑出した数字かというのが伝わると思います。
もうひとつの特徴はRuler選手のヴァルスのピック率の高さです。
彼はもともとアッシュやジンといったCC持ちのADCを得意としており、ヴァルスもそんな彼のプレイスタイルにマッチした選択といえるでしょう。
ビルド面でもセカンドアイテムにウィッツエンドを選択することが非常に多く、これはタリヤ、マルザハールといったバーストタイプでないチャンピオンを多くピックしているミッドのCrown選手のプールともマッチしています。
タリックとヴァルスという2つの他チームの優先順位がやや低いチャンピオンをメインにおくボットレーンを抱えているSSGは、そのおかげで自由なドラフト戦略を組み立てやすいのが特徴です。
オーソドックスな最初の3pickでジャングル、ADC、サポートを取るにしてもジャングル以外は優先する必要がないからです。
そのおかげもあってジャングルのAmbition選手はセジュアニ、グラガスという彼にとってのコンフォートピックが全体の約2/3を占めています。
ここがSKTとの大きな違いですね。
ワード破壊率も41.7%とノックアウトステージ8チームの中で断トツの1位です。
トップのCuvee選手はここまでシェンとチョ=ガスをメインにピックしてきています。これらはSKTが高確率でバンしているチャンピオンですが、他にもケネン、ナー、カミールといったスプリットプッシャーもプールにあるのでそんなに心配はいらないでしょう。
ドラフト面ではSSGの弱点らしい弱点は見つけられません。
しいていえばチーム全体でここまで1回しかジャーバンIVをピックしていない点です。(しかもピックした試合は負けている)
対戦相手のSKTは8回ピックして6勝と好成績を残しているので、このチャンピオンにはバン枠を割かざるをえないでしょう。
両チームの傾向から見る明日の予想は?
一番の注目は
ガリオをどうするか
です。Faker選手の本大会のメインチャンピオンですが、Crown選手はマルザハールやコーキといったチャンピオンで対抗できます。
さらにガリオを優先することでまたSKTはジャングラーに負担を強いることになりますから、少し取りづらいです。
とはいえガリオというチャンピオンのポテンシャル自体は非常に高いですし、それを信じてSKTがピックし続ける可能性もありますし、SKTが敬遠した場合に逆にSSG側がガリオを取り上げるというパターンもありえるでしょう。
2つ目はSKTのスターターです。
個人的には青側のときはBlank選手、赤側のときはPeanut選手という起用がベストなのかなという印象です。
赤側だと前述の通りタンクジャングラーを潰しきられてしまう可能性が高く、Blank選手がまたザックを使う憂き目にあってしまうでしょう。
先に2ピック出来るのも赤側の強みなので、強いボットデュオを1stローテーションで確保し、3rdピックにPeanut選手用のニダリーを取るというドラフトは強力そうです。
というのもSSGはアーデントセンサー系のサポートを多くバンする傾向にあるので、ジャングルでアーデントセンサーを持てるニダリーというのは非常に価値が高いのです。
逆に青側のときはAmbition選手からセジュアニとグラガスという2チャンピオンをバンないしは取り上げることが容易で、Blank選手が活躍しやすいドラフトが組み立てられるでしょう。
まとめると、両チームとも青側のほうがドラフトが組み立てやすいように思えます。
如何に青側できちんと勝利するかというのが両チームにとって重要になりそうな決勝戦といえるでしょう。
ドラフトの観点からいうと、ピックの柔軟性やここまでのパフォーマンスを見て
SSGが3-2でSKTを下して王朝を終わらせる
ような気がしています。きっと当たりませんが。
とにかく1ファンとして決勝の行方を楽しみにしたいと思います。GLHF!
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