【LoL星人の生態】MSI決勝の細けえ話【Game5】

July 15, 2025 by lol-cla管理人, Patch 25.13

MSI決勝戦でGENのスノーボールを支えた基礎力とゲーム理解力
こんにちは。
今回はMSI決勝のGame5でGEN.Gが見せたゲームプランとファイトへのセットアップについて解説する。
普段、筋肉にものを言わせて不利な集団戦を覆す、というスタイルのGENですが、MSI優勝がかかったGame5ではいつになく丁寧で理性的な戦い方をしていたので、正直参考にならないと思うほどの上手さだが、1mmでも皆さんのLoLライフに役立ててくれたら嬉しい。



ドラフトと両チームのゲームプラン



解説する前に両チームのドラフトを確認しておこう。


フィアレスドラフト5戦目ということでかなりのチャンピオンプールが制限されていたが、
T1はその中でもティアの高いレネクトンをFP。さらにGumayusiの残されたプールの中で最も得意なケイトリンを確保し、トップボットのレーニングでの勝利、そこにJg-Midの少数戦コンビを加えて、ケイトリン3コアまでテンポを取って進めていく構成になっている。

対するGEN.GはT1の構成にエンゲージチャンピオンが少ないことを重く見て、エイトロックス、オーロラ、MFというゾーニングが得意な構成を選択。
しかしトップ、ボットでは厳しいレーニングが予想されるため、どこかで状況を打破しないとずるずると相手Jgのスノーボールを許し、Canyonのニダリーが腐ってしまう展開もありえる。



芸術的トップダイブ、成功のメカニズム



さてご存じの通りGENがトップタワーへのダイブで2キル獲得からスノーボールに成功し、その後はオブジェクトファイトごとに勝利を繰り返し、そのままT1にほぼ何もさせずに完勝、という結果に終わった本試合だったが、そのきっかけとなったトップダイブを見ていこう。

ゲーム時間は6分手前、両ボットレーンは1stリコールからトップレーンへとスワップしている。
T1の作戦はおそらく、

① 相手がスワップを合わせてこなかった場合、トップサイドをプッシュしてタワープレートを割りつつヴォイドグラブを取るセットアップをする。
② 相手がスワップを合わせてきた場合、レーン有利を活かしてタワープレートを狙いつつトップレーンのマッチアップ差を活かしてドラゴンを取りに行く。

といったところだろう。

GENの目線で考えると、一般的に相手がスケールで優っているので(この試合でいうとケイトリンがMFよりもスケールで優る)、ドラゴンをストレートで4つ重ね25分以内にソウルを狙いに行く作戦が有力。
逆に言えばT1は1st、2ndのどちらかのドラゴンを、相手のローテーションやスワップの隙をついて取って、相手のドラゴンソウルを遅らせる→ケイトリンのパワースパイクが間に合う、という展開に持ち込みたいわけだ。


さてここでゲーム画面を見てほしいが、GENはスワップに付き合う形にして、JgのCanyonはドラゴンピットにワードを置いている。
T1としてはGENがスワップを合わせたなら、ドラゴンを狙いにくるはず。
その読み通り、Onerのヴィエゴはドラゴンの前に姿を現す。


それを確認するとChovyはマナを消費してミッドをプッシュしきるとトップにローテーションしてタワーダイブを敢行。
一方、ミッドをカバーしなければいけないFakerは合流することが出来なかった。
結果この作戦は見事に成功。2キルを獲得し、ボットレーンのマッチアップ差を覆すきっかけをつくりだした。

このダイブ、タワーの受け渡し、追い込み方とすべてがうまかったのだが、注目したいのはRulerがAAをケイトリン→カルマ→ケイトリンの順番で入れていた点だ。

直前でKeriaと勝ちあったDuroは小競り合いを起こしカルマからフラッシュを奪っていたため、サモナーズスペルが2つ残っていてより倒しづらいケイトリンを先に殴ることでラブタップを2回入れて、両方を倒しきることに成功しているのだ。



丁寧で教科書通りの視界取り




次はGENの視界取りについて。
まずは3ドラ目のシーンを見てみよう。


トップレーンでの小競り合いを制したGENはそのままトップをプッシュ。タワーにダメージを与えながら2分後にポップするドラゴンへのセットアップを開始する。

この時、GENはトップとボットのタワーをトレードするような形を取っていたので、Fakerのアーリは2ndタワーまでミニオンをプッシュしていて、GENから見てトップがストロングサイド、ボットがウィークサイドになっている。


リコールを終えたGENのメンバーはKiinがボットのChovyがボットのプッシュを終えるとChovyはミッドレーンにコントロールワードを置き、Kiinはオラクルレンズをつかって自軍Jg内のデワードを行っている。

この時Doranのテレポートはアップしており、ドラゴン中にレネクトンによるフランカーが負け筋になりえると考えての行動だ。

しっかりと自軍のJgの安全を確保するとDuroがラプター手前にワードを刺すことでミッドレーン、ジャングルからの進入路を閉鎖し、ドラゴンを易々と獲得することに成功した。

次は5体目のドラゴン前のシーン。


GENはバロンバフを活かしてミッドとボットの2レーンプッシュを行っている。
その間にボットサイドの敵軍Jgにワードを落とし、さらにその入り口をDuroのパイクが死守し、Jg内への進入を防いでいる。

これは相手のJg-Supがヴィエゴ-カルマと固くないチャンピオンということもあるが、高いラインに自軍のワードを維持するためにSup単体で身体をぶつけに行っている。

このようにオブジェクトへのワーディングというのは、

① レーンプッシュと連動させる。
② 自分たちにワード位置をできるだけ高く、相手のワード位置を出来るだけ低くする。
③ ラインを確保したらそれを死守する。
④ 自分たちのワードのラインの裏側に相手のワードを残さない。

この4点が基本になっていて、それらを遵守したGENの丁寧なワーディングを見ることが出来た試合だった。



LoL星人たちの集団戦プランニング


ここまでGENの、相手のゲームプランを崩す序盤のタワーダイブ、オブジェクトを確保する丁寧なワーディングについて解説してきたが、T1も無抵抗で敗れたわけではない。

実際何度もオブジェクトでファイトを起こし状況を打破しようとしたが、GENのファイトの組み立ての前に悉くはじき返されてしまった。

最後にそこを解説して終わろうと思う。

この試合のGENの集団戦プランを読み説くと、

① レネクトンを孤立させる。
② MFを相手から隠す。

この2つをテーマに戦っていたように見えた。

T1の構成は前述の通りレーン勝利からの少数戦でのスノーボールを経て、ケイトリンの3アイテムパワースパイクへとつなげる構成なため、5v5の集団戦におけるエンゲージ力が不足している。
(T1のコーチの名誉のために書いておくが、これはT1のドラフトが悪かったというよりフィアレスドラフトの5戦目なのが強く影響している)

そのためDoranのレネクトンの位置をある程度隠してGENのバックラインに突っ込ませ、あとからOnerのヴィエゴやFakerのアーリが追いかけて入っていき1体をフォーカスして人数差を作るような集団戦の形にする必要がある。

これはヘラルドファイトのシーンだ。


GENは幅広く視界を確保するとミッドのウェーブをクリアしていたRulerを安全な道を通して本体に合流させ、Doranの入ってくるポイントを限定させる。


Chovyの世界の狭間とRulerのバレットタイムで完全にT1メンバーを分断している。


またこの試合たびたび見られたシーンだが、Doranが入ってくるタイミングでKiinやCanyonがわざとRulerと重なるポジションを取ることで、Doranのメッタ斬りによるスタンの身代わりになろうとする動きを取っていた。

実際にこのシーンでもKiinが身代わりにスタンすることでクレンズを温存しながらRulerは安全な位置を確保、バレットタイムを発射することに成功している。


次は4体目のドラゴンでの戦いだ。


ドラゴン確保のためにChovyは早めにアルティメットを切って相手の入ってくるルートを閉鎖している。
T1目線ではRulerの姿が確認できないため、消去法でドラゴンピットの正面またはややボット側に寄った位置にいることが予想される。

そこでFakerとDoranはRulerとCanyonに対してエンゲージすべくドラゴンピットの壁を越えて侵入を試みる。

しかし、ドラゴンを狩り終えたRulerはChovyと位置を交換するようにミッドレーン側へと流れる。


T1はCanyonを打ち取ることには成功するものの、狙いのRulerはそこにおらず、
いるのはChovy。
逆にGENとしてはボットデュオの2v2のような形をつくっている。
この時点で防御靴持ちかつレベル2先行しているMFがGumayusiに殴り負けるわけもなく、Gumayusiはたまらずフラッシュアウト。
Rulerの代わりに狙われて危険のように見えるChovyは仮面派生2つの固めビルドを選択していたおかげもあって余裕をもってFaker、Doranを捌き切り集団戦に勝利した。

MFは機動力がなく、アルティメットで大ダメージを出すのに味方によるスペース確保が重要とプロシーンではピックされるたびに、その活躍するための条件の厳しさが敗因にもなりやすいチャンピオンだが、
フィアレスドラフトというエンゲージが枯れる環境、GENの丁寧なセットアップと集団戦のプランニングという「下ごしらえ」によって輝きを放った、そんなゲームだった。


おわりに


いかがだっただろうか。
プロシーンが冷蔵庫の余りもの調理選手権になってしまうのでフィアレスドラフト自体には否定的な自分だが、それはそうと試合内容は国際大会の決勝に相応しい素晴らしいものだったと思う。

来るWorldsまでに、このGENを倒せるチームが出てくるのか、あるいは悲願のWorlds制覇となるのか、まずはEWC、そして各リージョンのサマースプリットを楽しみに待ちたい。