プロシーンのニッチピック通信簿vol.1 ヴェル=コズ on LCK

March 15, 2018 by lol-cla管理人, Patch 8.4

プロシーンで少数ピックされたチャンピオンにスポットライトを当てるコーナー
こんにちわ。

花粉のガンクが一層厳しくなり、桜のパワースパイクが近づいてきたこの頃、いかがお過ごしでしょうか。

各国のリーグも後半戦に差し掛かり盛り上がる中、パッチ8,4というドラスティックなメタの変化に伴って様々なニッチピックが飛び出しています。

そんなニッチピックにスポットライトを当てて、ピックされた背景、ビルドといった面から考察を入れていき、文末には、今後ピックされるかどうか、4点満点で私個人の評価を乗せる、といった記事になっております。

記念すべき第一回は(続くかどうかは知りません)LCK・KSVのミッドレーナー、Crown選手がパッチ8.4で5回ピックし勝率8割と好成績を残しているヴェル=コズをピックアップしてみたいと思います。



試合の動画はこちらなど。
(KT Rolster vs KSV LCK2018 spring Week7Day4 Game2)



ヴェル=コズはアジ―ルのカウンター?



実は今年に入ってヴェル=コズをミッドレーンに持ち込んだのはCrown選手が初めてではありません。
パッチ8.4になってからはNAでも少数ピックされています。

何故このパッチになってヴェル=コズが注目されるようになったのか、考察を進めていく前に
まずは、ヴェル=コズのチャンピオン性能に触れておきましょう。

彼(?)はスキルの射程が全体的に長く、Wのヴォイドの裂谷によるウェーブクリアが強力で、集団戦に強いというのが強みになっています。
また固有能力によって確定ダメージを発生させることができるため、一般的なメイジの中ではバロンやドラゴンといったエピックモンスターを狩る性能に優れています。

逆にヴェル=コズの弱点は、機動力に乏しいため自衛能力やローム性能に不安があるといったところでしょうか。

パワースパイクとしては早めでスケーリング性能はそこそこ。CCが多いチャンピオンなのでミッドゲームで試合を決めるといった展開に向いたチャンピオンです。

こういったプッシュ力が高く、射程が長いといった性能面から、アジ―ルに対してピック出来るのではないか、ということでヴェル=コズが試されているのです。




アイテムとメタの変更がヴェル=コズに出番を与えた



ところで、パッチ8.4以前ではアジ―ルの(ニッチな)カウンターピックとしてはベイガーが良く採用されていました。

ベイガーはEのイベントホライズンによるゾーニング性能が高いことや、固有能力によって魔力が伸びていくことを活かしてアビサルマスクを初手に買うことで長い時間帯、アジ―ルに対してダメージ勝ちが出来るというのが彼をピックする理由です。

実際今年に入ってからアジ―ル対ベイガーというマッチアップは37回行われ、勝率はベイガーから見て51.4%とまずまずの成績をおさめています。

ではベイガーとヴェル=コズを比べて、なぜヴェル=コズをピックする必要があるのか。

それには2つの外的要因があります。


1つ目はメタの変化です。


パッチ8.4は統率の旗のバグ修正やバロンバフ、エルダードラゴンバフの強化など、8.3以前に比べてゲーム時間が短くなるような変更が加えられました。

特にバロンバフの重要度は過去最大級に高まっているとも言えます。

バロンバフと統率の旗のバフを両方受けた砲台ミニオン、通称「バノンミニオン」は10発に満たない攻撃でインヒビタータワーを破壊する超性能になっています。

ゲーム時間20~25分頃にバロンにタッチし、それまでにトップ、ジャングル、サポートが統率の旗をビルドしてタワーシージを行うといった戦術が横行しているので、パワースパイクが遅いチャンピオンというのはそれなりの見返りが必要になってきます。

ベイガーは無限にスケールするというチャンピオン性能だけあって、非常にパワースパイクが遅いチャンピオンになっています。
それに対してヴェル=コズは豊富なCCや確定ダメージと中盤戦にパワースパイクが来るチャンピオンです。
さらに、先述のとおり確定ダメージによってバロンを獲得しやすいメイジチャンピオンでもあり、「バノンミニオン」に対しても固有能力の確定ダメージである程度の影響力を発揮できます。


2つ目の要因はアイテムの変更です。


パッチ8.4で魔力系のアイテムが一新されました。

中でも最も大きな変更だったのが、アークエンジェルスタッフのビルドパスの変更といえるでしょう。

ロストチャプター派生のアイテムに生まれ変わり、得られる魔力こそ減りましたが、クールダウン短縮が20%もつくようになったのが非常に大きく、
以前はこのアイテムを買っていなかった、タリヤや、シンドラといったチャンピオンでも採用されるようになってきています。

ヴェル=コズも以前はモレロノミコンをビルドするのが一般的でしたが、8.4以降は女神の涙を買うビルドが積極的に採用されています。

セラフ・エンブレイスに進化すると発動効果でシールドを得ることが出来、これがヴェル=コズにとって足りなかった自衛能力を底上げしてくれているのです。




ヴェル=コズのルーンやアイテムビルド紹介



さて、ヴェル=コズがピックされるようになった理由はある程度説明できたかとおもいますので、次はどんなビルドが向いているのが、見ていきましょう。

Crown選手を参考にしつつ、紹介してきましょう。
アイテムビルドに関しては、ここ数試合、ほとんど変えていないので決定版と言っても良いかもしれません。

ヴェル=コズのアイテムビルド



初手はアークエンジェルスタッフ。

潤沢なマナを確保しつつヴェル=コズにとって必要なクールダウン短縮、さらにはセラフ・エンブレイスに進化後のシールドと欲しいものをすべて与えてくれるアイテムと言えるでしょう。

2手目はラバドン・デスキャップ。

パッチ8.4でバフが入り、さらに素材がムダニデカイロッド2つに変更になった点も地味に強力です。
以前のの時と比べるとお金をもてあましたり、アイテムスロットが埋まるといったことが減りました。
ジャングラーが置けるワードの数が減ったのでミッドレーナーもビジョンワードをスロットに入れておきたいメタですし、純粋に性能面でのバフ以上にこのアイテムの価値は上がっているといえるでしょう。

3手目はヴォイドスタッフ。

で十分な魔力を確保したら、魔法防御貫通を積みにいきます。
もともとヴェル=コズはアルティメットの生体破壊光線が連続ヒットするスキルということ、魔力反映率がそれほど高くないこともあって魔法防御貫通のスタッツと相性が良いです。

4手目はライアンドリーの仮面か、ゾーニャの砂時計。

これは自分がどれくらいフォーカスを受けるかで切り替えているようです。
それほどフォーカスを受け無さそうなら前者、相手がバックラインに飛び込んでくる構成ならば後者がよいでしょう。

靴に関してはアイオニアブーツを良く選んでいます。

ヴェル=コズはスキルを3回当てると発動する固有能力を活かすためにクールダウンが必要なチャンピオンです。
2手目にデスキャップに行くと、CDRが20%で止まる時間が長くなるので、それを補うための選択になっています。
また集団戦での立ち位置が難しいチャンピオンでもあるので、サモナースペルのクールダウン短縮が得られるのもお買い得ポイントでしょう。


ルーンの設定





Crown選手が最も使っているのはこのラインナップ。

対面やチーム構成によって多少の変化はつけているようですが、変更がないのは秘儀の彗星、追い風、追い火の3つです。

秘儀の彗星は、スローやノックアップなどヒットさせやすいCCがそろっているのでヴェル=コズに最適なキーストーンと言えます。

追い風に関しては、ジャングル内での小競り合いにいち早く駆け付けたり、集団戦でより良い位置に陣取るための移動速度確保のために選んでいると思われます。

追火は、強まる嵐と同じ列にあって最近はのほうがよく選ばれる傾向にありますが、ヴェル=コズはそれほど魔力反映率が高くない、ゲームを早めに終わらせる意図でピックする、といった理由からあまりマッチせず、序中盤のダメージ底上げのための追火選択になっていると思われます。

マナフローバンドは対アジール戦、アルティメットハットは対ライズ戦で切り替えていました。

アジールはEQRコンボ、いわゆるシュリーマシャッフルと呼ばれるコンボでヴェル=コズのを妨害できるので、ある程度慎重に使う必要があるのに対し、ライズは単体でを止める手段がないのである程度気軽に使用することが出来るといった違いからでしょうか。

サブパスはこの組み合わせが一番Crown選手のお好みのようですが、覇道にして追い打ちを選んでいる試合もありました。

ミニオン吸収装置はレーンをプッシュして相手をタワー下に張り付けるのには非常に便利なルーンです。

魔法の靴は移動速度+10の効果によってヴェル=コズの集団戦での立ち回り性能を底上げしてくれます。と同じような意味合いですね。


スキルオーダー



R>W>Q>E

一般的なミッド・ヴェル=コズのスキルオーダーです。

Qの電離炸裂弾はレベルを上げることでスロー時間が伸びるため、ポークやチェイスといったシチュエーションで活躍が見込めますが、クールダウンは短縮されません。

一方でWのヴォイドの裂谷はミニオンを貫通しつつ、2回ダメージを与えるので一気に固有能力のスタックを2つ稼ぐことができ、レベルアップによってスタックが溜まるスピードが速くなっていきます。

なので、ミッドにピックする場合はW上げ、サポートでピックする場合はQ上げがヴェル=コズの基本的なスキルオーダーで、ここはCrown選手の場合も定跡どおりとなっています。




ヴェル=コズは今後もピックされ続けるか



さてここまでヴェル=コズに有利なことばかり書いてきました。
ニッチなピックをめでるのがこの記事の趣旨なので当たり前と言えば当たり前ですね。

ただ、一応解説者の端くれとして(JCLという大学生の大会やLCKの2部リーグの解説をしています。見てね)、このヴェル=コズというチャンピオンが今後もピックされていくか、評価をしたいとおもいます。

評価は4段階で行いたいと思います。評価は以下の通りです。


4点:エウレカ! これはきっと世界を席巻するNewメタになりますね。

3点:素晴らしいピック! このチャンピオンをピックするフォロアーが各地で出てくるでしょう。

2点:悪くないね! 弱点はあるけど部分的には成立しています。

1点:残念! 意欲的なピックだったけどあまり成功しなさそうです。


(こういうテンプレートを作っておくと次回以降楽ですからね)




さて今回のヴェル=コズの評価は・・・



2点:悪くないね! 弱点はあるけど部分的には成立しています。





としました。

試合の動画を見てもらうと分かるのですが、今回好成績を残せているのはひとえにCrown選手の素晴らしい技術があってこそかな、というのが私の正直な感想です。

たしかにヴェル=コズはメタにマッチしたピックではあると思いますが、如何せん苦手なチャンピオンもメタに多く存在しています。

特にサポートのラカン、スレッシュ、レオナ、アリスターといった面々はどれもメタゲームにおいて上位に位置するチャンピオンで、その誰もがヴェル=コズに対し、強いプレッシャーを生み出すことが出来ます。

さらにはトップレーンでもカミールやガングプランクは怖い存在ですし、オラフなどのガンクプレッシャーも受けやすいチャンピオンです。

これらすべての要素をBANあるいは自分たちでピックしきるのはほぼ不可能ですし、快適にヴェルコズを運用するというのは、相当なハンドスキルとセンスが必要になってくると思います。

仮に他のリージョンのプレイヤーがCrown選手の真似をしてヴェル=コズをピックしたとしても、中々思ったような成績は残せないでしょう。
(実際に3/15日現在、NAとBRで計3回ピックされて勝率0%です)

個人的にヴェル=コズというチャンピオンは好きなので活躍してほしいと思いますが、しばらくの間は、Crown専用機としての出番に限られそうです。

活躍する確率は3.14%といったところでしょう。



おわりに



いかがだったでしょうか。
普段からチャンピオン紹介の記事は定期的にアップしているのですが、中々メタとのかみ合わせなどに主眼を置いた記事というのは書けなかったので、今回筆を取ってみました。

好評だったら次もあると思うので、気に入ったらシェアしていただけばと思います。
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