LCKレビュー 決勝戦・KZvsAFsから学ぶウィンコンディションとゲームプラン

April 21, 2018 by lol-cla管理人, Patch 8.6

LCK2018springファイナルのゲーム3をクローズアップする
こんにちは。
まだ4月なのに東京はアニーとブランドが一遍に召喚されたような暑さで、筆者はイグナイトを受けたムンドのように参ってしまっていますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

各地のSpringSplitもほとんどが終わり、MSIの代表が出そろいつつあります。

世界最高峰と名高いLCKでも先日決勝戦が行われ、レギュラーシーズンを16勝2敗という圧倒的な成績で制したKingzone DragonX(以下KZ)がプレーオフを勝ち上がってきたAfreecaFreecs(以下AFs)の挑戦を退け、SpringSplitを制覇、MSIの出場権を獲得しました。

今回はそのファイナルのBo5から両チーム1-1で向かえたGame3をピックアップし、ウィンコンディションとゲームプランに関して解説をしていこうと思います。

普段はドラフトの話ばかりしている気がするので、たまにはin-gameの内容についても書きたくなったって感じです。
今回もそこそこ長めになるので、お時間があるときにどうぞ。




そもそもウィンコンディションって何?



さて本題に入る前に言葉の説明をしておこうと思います。
『ウィンコンディション』というLoL用語をご存知ですか?
あまり日本の実況解説では使われていないかなという印象ですが、実は競技シーンにおいては重要で、かつ便利な言葉なのです。

ウィンコンディションに関してのBreakDownが最近上がっていたので、こちらの例をつかって説明していこうと思います。



NALCSの決勝戦のピックです。

左サイドの100Thiefs(以下100T)はトップレーンのナー対マオカイ、ミッドレーンのライズ対アジールがそれぞれ1v1で有利を作っています。
この1v1の優位とポータルワープによる機動力を活かして1-3-1のスプリットプッシュを狙う構成です。

一方右サイドのTeamLiquid(以下TL)はといった集団戦が強力なチャンピオンに加えて、スカーナーとジンというキャッチが得意なチャンピオンを持っているので、自分たちから積極的に仕掛けていく集団戦構成になっています。

ウィンコンデションというのは、自分たちのチーム構成はどうやったら相手をうわまわることが出来るのか、どういう状況を作れば勝ちに近づくのか、その条件や状況のことを指します。

この例でいえば100Tのウィンコンディションは、

① 、あるいはその両方が対面であるに先行してスプリットプッシュできる状況をつくる。

② スプリットプッシュをサポートするために、ウェーブを押し上げてジャングル内をしっかりとワーディングする。

ということになります。

TLのウィンコンディションは、

① がレーンで負けないようにカバーする。

② 視界面での不利を背負わないようにして、出来るだけイーブンな状況でドラゴンやバロンといった重要なオブジェクト前での集団戦を起こす。

といった感じです。

それぞれのウィンコンディションが分かったところで、具体的にどういうことを行うのか、というのがゲームプランになります。

たとえば100T側ならば、トップへのダイブを狙うとか、相手のレーンワードを壊して、プッシュしたあとのブラウムやスカーナーの動きを察知されないようにする、といったことです。

詳しくはBreakDownの動画内で僕の1億倍有能な解説者、Zirene氏がまとめてくれているのでそちらをご覧ください。




仕掛けたいKZとそれをカウンターしたいAFs



さて、本題となるLCK FinalのGame3を見てみましょう。(動画はこちら



P/Bの話をし始めるとそれだけで1記事出来てしまうので今回は省きます。
1試合目をAFsが、2試合目をKZが取っての第3戦になります。

説明のしやすさを考えて先にKZのチーム構成から見ていきましょう。

MidのタリヤとJgのトランドルというラインは非常に強力で、序・中盤ミッド周辺の視界を確保することに長けています。
は対面がアジールなのでプッシュ面でも後れをとることはありません。
そのためと連動してサイドレーンに動いてのガンクやダイブを行えるのが強みです。

集団戦もチョ=ガス、タリヤ、トランドルと分断能力の高いチャンピオンが揃っており、相手をバラしてからモルガナのブラックシールドをもらったカイ=サがクリーンナップをするという形が強力です。


ここまで良いところを上げてきましたが、弱点もあります。


集団戦が強力な構成であるにも関わらず、エンゲージ手段をあまり持たないのです。
一番信頼のおけるエンゲージツールはウィーバーウォールですが、
このスキルをエンゲージで使うには、相手がオブジェクト前に陣取っているor自分たちがプッシュして相手のジャングル内の視界を消しておくといった下準備が必要になってきます。


一方AFsの構成はどうでしょうか。

ミッドレーンでは主導権を取れなさそうというのはすでに書きましたが、Jgが非常に強力なCCを持ったスカーナー、そしてSupが船旅で少数戦などにいつでも駆け付けられるタム・ケンチということで、Bdd選手のタリヤのサイドレーンへの動きを咎めやすい構成になっています。

ADCはジン、NALCSのところでも書きましたがとの相性が非常にいいチャンピオンですし、Topのマッチアップを見てもサイオンのほうがチョ=ガスよりもエンゲージ能力に優れています。

相手の狙いを消しつつ、自分たちから集団戦を作っていくのが得意な構成といえるでしょう。

もちろん弱点もあります。

ジンもスカーナーもややパワースパイクが前傾のチャンピオンなので中盤、ゲーム内時間25分くらいまでにある程度大きな差を作っておかないとトランドル、カイ=サにスケーリング負けしてしまう可能性がある点、
もうひとつは単純な集団戦能力だけ見ると、KZのほうが優れているという点です。

これらを踏まえて両チームのウィンコンディションを考えてみましょう。


KZ側のウィンコンディションはこうです。


① タリヤートランドルのラインを使ってサイドレーン、特にボットレーンサイドにダイブ、あるいはダイブのプレッシャーを作り出してオブジェクト面で先行していく。

② それがうまく行かなかった場合は試合時間を伸ばし、オブジェクト前の集団戦を行う。


それに対してAFs側のウィンコンディションはこうなります。


① タリヤのロームをスカーナーータム・ケンチのラインをつかって止める。

② 相手のジャングル内を掌握し、ジンースカーナーのラインでキャッチをし、オブジェクトにつなげていく。

それでは両チームはウィンコンディションの達成のためにどのようなゲームプランを見せてくれたのか、実際にゲームを見ていきましょう。



両チームのゲームプランと試合の流れ






さてKZサイドは最序盤はタリヤとトランドルが機能して、AFsのジャングル内にワードを置いていくことが出来たのですが、




Mowgli選手のスカーナーにアルティメットスキルインペイルが入ってから、AFsはこの3点のワーディングを徹底してBdd選手のボットレーンへの動きを完全に封殺しにかかります。




AFsサイドはここのワードの維持に全力を尽くしていたので、そのプランを把握したPeanut選手はワーディングが手薄なボットレーンへとガンクを行うプランへと切り替えていきます。
しかしAFsはTusiN選手のタム・ケンチによる献身的なサポートやコントロールワードを躱す巧みなワーディングによってプレッシャーを受け流していきます。

トランドルは元来ガンクが得意なチャンピオンではないので、やはりタリヤを絡めた大きな動きが必要だと考えたKZはSupのGorillA選手をミッドに寄せて、人数差をつくって視界を取り返しにかかります。
が、



ここでTusiN選手、素早い判断で船旅を使用。
人数差を作ったはずのKZはカウンターを取られ、モルガナを倒されてしまいます。

この素晴らしいカウンターによってミッド~ボットへのリバーを完全に支配したAFsは素晴らしいローテーションを行います。



まずはクラウドドレイクを確保すると、そこからミッドレーンに流れて



人数差を活かしてウェーブをプッシュ、タリヤとモルガナがウェーブクリアに当たるのを見るや否や再び、TusiN選手の船旅を発動!



しっかりとサイオンがプッシュをしてセットアップしていたトップタワーへとダイブを敢行し、チョ=ガスをキル、さらにはトップの1st、2ndタワーまで獲得して完全にリードを奪います。



その後もスカーナーを中心にキャッチを決めたAFsはミッドレーンでPray選手のカイ=サをキャッチしたことをきっかけにバロンをスタートします。

ここでKZのTop、Khan選手はバロンを止めるためにテレポートを使用。

これによりAFsのKiin選手との間にテレポート差が生まれました。

ここからAFsはサイオンをボットに、アジールをトップに置く形での1-3-1に近い形にして、テレポート差を活かしてバロンベイトを行う、という選択肢もありました。

幸い次にポップするドラゴンは現状もっとも価値が低いとされているオーシャンドレイクでしたし、相手がドラゴンのコントロールに注力すれば、バロンやトップのインヒビター、ミッドのセカンドタワーといったオブジェクトをリスク少なく狙いにいくことができます。

しかしここでパワースパイクの問題がAFsの判断を鈍らせます。

チーム構成のところで説明したように、AFsの構成は終盤の集団戦にやや不安を残す構成なので、有利なうちに出来るだけオブジェクトを獲得しよう、そう考えたのかも知れません。



オーシャンドレイクに触ったAFsですが、ミニマップをよく見てください。
Kuro選手はチームから遠く離れ、まだトップサイドにいます。

一方オブジェクト前に敵が陣取ってくれているという願ってもない状況になったKZはここぞとばかりに仕掛けます。



孤立したKiin選手を倒してからGorrila選手の上手いベイト、合流したKuro選手のポジショニングミスも重なって4-1のトレード、さらにはミッドのファーストタワー獲得までつなげます。

この集団戦での敗北がさらにAFsを焦らせます。

バロンラッシュを判断したAFsに対してKZはもちろんエンゲージを仕掛けます。



Kramer選手のジンが、タリヤのウィーバーウォールとトランドルの氷冷の柱で完全に分断されています。

この段階ではまだKiin選手がテレポートのアドバンテージを(わずか数秒だったはずですが)握っていたので、バロンラッシュをしたAFsの判断はそれほど間違ってはいなかったと思います。

しかしAFs側のコミュニケーションエラーなのか、あるいはKhan選手の素晴らしい判断だったのか、集団戦が始まる前からチョ=ガスはぴったりとサイオンに張り付き、テレポートを詠唱する隙を全く与えませんでした。

この集団戦で、バロンこそAFsに渡しましたが3-0で集団戦に勝利しました。

その後はチャンピオン性能の差を活かしてオブジェクト前の集団戦を積極的に仕掛けていったKZがゲームにも勝利、シリーズを2-1として王手をかけることに成功しました。


序・中盤のBdd選手の十八番ピックであるタリヤに対して、AFsは素晴らしいゲームプランで彼をコントロールし、王者KZを追い詰めました。

しかしバロンやドラゴンといったオブジェクトへのアプローチ、相手の構成の強みを引き出してしまうような集団戦を行ってしまったのが、敗因となりました。

一方KZは当初のプランが崩されたものの、うまく粘りながら相手のミスをつき、ビハインドながら自分たちの勝てる形を見出した精神力、そしてゲーム理解度の高さが光った試合となりました。



おわりに



いかがだったでしょうか。

このあとの4戦目は不敗神話を持つKhan選手のジェイスが登場し、KZが横綱相撲でシリーズをものにしたわけですが、
4戦目に強気の先出しが出来たのも、この試合での逆転劇で波に乗れていたからではないでしょうか。

MSIではKZのメンバーも認める強敵、RNGとの対決が見られるのか、LPLのプレーオフからも目が離せません。


AFsは万年ギリギリプレーオフに進出できるかできないかのところを彷徨っていたチームでしたが、絶対的なチームの支柱だったMaRin選手放出後、2部に落ちてしまったEver8winnersから当時新人のKiin選手を獲得し、今シーズン一気の躍進を見せてくれました。

LCKの試合とスケジュールが被って高校の卒業式に出られなかったKiin選手ですが、彼のSummer、そしてWorldsでの活躍がいまから楽しみです。


今回も長くなりましたが最後まで読んでいただきありがとうございます。
シェア等していただけると、次も書こうかなという気持ちになりますので、楽しんでいただけた方はRTなどよろしくお願いします。