Botレーンは誰のもの?パッチ8.11のメタを読み解く

June 8, 2018 by lol-cla管理人, Patch 8.11

マークスマン以外のボットレーナ―の登場とその理由を解説
こんにちは。

LoLは一年を通して月に1,2度のペースでパッチがあたる、とても更新頻度の高いゲームです。

その中でも、毎年11月ごろに行われるプレシーズンアップデート、6月ごろに行われるミッドシーズンアップデートは、ゲーム内容の大幅な見直しを行う、いわゆる大型パッチであり、パッチ前後でガラッとメタが変わってしまうこともしばしばです。

さて先週あたった今年のミッドシーズンアップデート、パッチ8.11ではADCの主にクリティカル関係のアイテムが見直されました。
しかしこの変更によって、ボットレーンからADCが姿を消しつつあるのです。

今回はなぜそんなことが起きているのか、ADC以外のボットレーナーはどんなチャンピオンがピックされているのか、などを解説していこうとおもいます。

今回もそこそこ長くなるとおもうので、ビスケットでも食べながら読んでいただけると幸いです。



そもそもなぜADCは必要なのか



ADCがサモナーズリフトから姿を消しつつある、その話題に入る前にそもそも「なぜADCはサモナーズリフトにいままで存在していたのか」について、解説しておきましょう。

そんなの分かってるよという方は飛ばしてしまっても構いません。

ADCがチームに求められていることは主に2つです。

・タワー破壊やエピックモンスター討伐など、オブジェクトに対する影響力

ADCは長い射程を持つ物理ダメージ中心のチャンピオンで、ビルドの関係で攻撃速度が上昇するアイテムを積むことが多いため、タワーやドラゴンなどを取ることに長けています。

ボットレーンのタワーは、トップやミッドと違い、最初の5分にダメージカット効果がついていないため、ボットレーンにADC(とサポート)を送り込んで、最初に狙うオブジェクトにするのがセオリーとなっています。

・集団戦でのDPS(ここでは長い時間をかけて大量のダメージを出すこと)

一般的なADCは通常攻撃が(特にゲーム終盤は)主なダメージソースとなっています。
スキルのクールタイムの影響を受けず、ダメージを出し続けることが出来るADCは集団戦が長引くほどその影響力を増していきます。

つまりこの2つのアイデンティティが失われたからこそ、ADCがサモナーズリフトから消えてしまったわけです。

前者に関しては、実はパッチ8.9での変更が大きかったです。

パッチ8.9ではリフトヘラルドのバフ、そして魔力系チャンピオンのタワーへのダメージが増加しました。

特にタワーへのダメージは魔力反映率が上昇しただけでなく、すべて魔法ダメージになるようになったので、ヴォイドスタッフなどを持つことでタワーに対しても高いダメージを出せるようになりました。

もしこの変更がなければ、シーズン7の序盤のようなシージとCCをばら撒くだけのロールだとしてもADCがサモナーズリフトにとどまり続けることが出来ていたでしょう。



ADC大恐慌を引き起こした2つのナーフ



単刀直入に申し上げますと、パッチ8.11の変更でADCは大幅にナーフされました。

主に変更が入ったのはクリティカルビルドに関するアイテム、、あとは派生の3アイテムです。

エッセンスリーバーは全く別のアイテムへと生まれ変わりました。
これはこれで強力なのですが、クリティカル系のアイテムではなく、スキルファイター向けの調整となりました。

なので、現状クリティカルビルドをするためにはインフィニティエッジをビルドすることが「強要」されているのです。

ストームレイザーという新アイテムも出ましたが、これは効果が特殊なので除外します)

そのがかなり弱くなっているので、詳しく見ていきましょう。

まず、とビルドするだけでもパッチ8.10と比べて600ゴールドも多くかかるようになりました。

さらにのビルドパスがになってしまったため、のために1300ゴールドという纏まったお金を用意しないとビルドが進めることができないという弱点もあります。
(以前はピッケルが素材だったので、中間素材を買うのに必要なのは875gで済んだのですが)

完成したタイミングではAD+10、Crit%+10となりますが、それでもパワースパイクの遅れがかなりの痛手です。

クリティカルダメージが50%上昇するという以前のパッシブと、新パッシブであるクリティカルダメージの15%の違いに関して以下のグラフにまとめました。



xは対象の物理防御、f(x)はダメージ倍率になっています。ダメージ倍率にチャンピオンの物理攻撃力をかけることで与えるダメージが計算できます。
例えばf(x)=1.2のとき、攻撃力が100ならば、実際に与えるダメージは120といった感じです。



攻撃する対象の物理防御が165前後で効果が逆転するようです。
物理防御力が165以上の相手には新IEのほうが効果的ということですね。



イメージが付きやすいようにマオカイさんに登場いただきました。
彼がレベル13時、を装備していると物理防御が163なので、対タンク性能という意味では強いアイテムになったといっても良いでしょう。

しかしこの確定ダメージは対チャンピオンにしか発生しません。
ウェーブクリア能力やドラゴン、バロンに対するダメージといった面では旧IEのクリティカルダメージ+50%のほうが優れていたと言えるでしょう。

つまりIEは新しくなったことで、

バフ

タンクへのダメージ、ジール系1アイテム時のパワースパイク

ナーフ

ウェーブクリア能力、対メイジ、サポートなどの柔らかいチャンピオンへのダメージ、バロンやドラゴンへのダメージ

といった調整を受けたことになります。
トータルでかかるコストも上昇したことを考えると大幅なナーフといっていいでしょう。


この変更だけなら、ただ単にゲーム内でのADCの影響力が下がるだけで済んだのですが、ADCの基礎ステータスまで大幅にナーフを受けたことで風向きが変わってきます。

ステータスのナーフは具体的には物理防御が削られ、その分がヘルスに添加され、さらに基礎攻撃力が4下げられるというものです。

曰く、

前者は「ルシアンやドレイブンといったレーンでオールインを狙うようなチャンピオンを活躍させるために」
後者は「レオナのようなチャンピオンがADCに近づくまでにヘルスを減らされすぎないように」

とのことですが、この調整がきつすぎました。

変更されたステータスをゴールド換算すると、

バフ
15ヘルス→39g相当

ナーフ
4AD→140g相当
5AR→100g相当

にあたるので、

合計では200g分ものステータスがナーフされたことになります。

レベルアップ時のステータス上昇量はバフされたものの、取り返すまでにはある程度の時間がかかり、低レベル時の能力という意味では著しいナーフです。

ちなみにこれは今回ナーフされたシヴィアと、ナーフを受けなかったグレイブスの初期ステータスを比較したものです。
攻撃速度は無視していますが、流石に400g以上のスタッツ差があるのは辛すぎますね・・・。




このステータスナーフが決定打となって、ADCにかわってファイターを置く、という考えが生まれてしまいました。

基礎ステータスが下がりすぎて、ファイターでも序盤からADCに対してレーニングが行えるようになってしまったのです。

最初はヤスオやイレリアといったファイター中心でしたが、最近はブランドやシンドラ、スウェインといったメイジまで登場し、ボットレーンのメタは混沌としています。



「悪用」されるレリックシールドと征服者



前項でお話した通り、ADCは序盤からパワースパイクを迎えるまでの時間、大幅なナーフを受けました。

さらにフリートフットワークの回復量もナーフされたのでサステイン能力も失ったことになります。
(厳密にいえば基礎ADが減ったので、ドランブレードから得られるライフスティールも微減しました)

一方ヤスオやイレリアといったチャンピオンはレリックシールドをスタートアイテムにすることが出来ます。

近接タイプのチャンピオンなので、回復効果も100%得ることが出来ますし、タンクミニオンのゴールドがあがったので、これをサポートとシェアすることによって、それだけで対面とのゴールド差をつけることが出来るわけです。

さらには自前のシールドが、にはヒール能力があり、ボットレーンからサステインを取り除きたかったRiotの思惑に反して高いサステインでレーンを維持できてしまうのです。

征服者の強さもファイター起用に拍車をかけています。
このキーストーンは一定条件を満たすと、チャンピオンに対する全てのダメージの20%が確定ダメージに変わるという効果です。
は通常攻撃でクリティカルが発生したときに、15%。しかも1アイテムでは効果が発生しないで、2アイテム完成した時点でようやく、です。



どんなチャンピオンがBotに向いているのか



ではADCにかわってどんなチャンピオンがボットレーンに起用されるべきか、という話にうつりましょう。

様々なチャンピオンがすでにボットレーンで試されていますが、いくつかのカテゴリーに分けられると思います。


イレリアやヤスオなどの征服者を持つファイター

ADCの代わりに多くの物理ダメージを出すことが出来るチャンピオンなので、まずはこれらが候補に挙がります。

中でもイレリア、ヤスオ、レネクトンなど、自前のヒール、シールド能力を持っているチャンピオンが良く採用されています。
対面にADCなど遠距離攻撃型のチャンピオンが来てもレーンが維持しやすいという特徴があります。

同じタイプでもジャックスなどはあまり向いていなさそうです。


ブラッドミアやライズなどのDPSメイジ

同じDPS担当でも魔法ダメージを中心に出せるチャンピオン達です。
レーンが長く復帰まで時間がかかることもあって、ここでもシールドやサステインを持っているチャンピオンが優先されているように見えます。
挙げたほかにはカシオペアやケイル、スウェインなども良いでしょう。
以前ピックされていたジグスなどもこのカテゴリーに入ります。


・ナーフを免れた「ADCライク」チャンピオン

現在試されている中だとジェイスがこのカテゴリーに入ります。

この手のチャンピオンはADCとやや似ているもののステータスのナーフを免れている点や脅威系アイテムやルインドキングブレードをビルドするので今パッチの影響をほとんど受けていません。

他にもコーキやグレイブス、クインといった元ADCチャンピオンたちや、ケネンなどもピックされる可能性はあるでしょう。


・集団戦で強力なチャンピオン

集団戦性能を買ってボットレーンへとダイブをし、さらにトップ、リフトヘラルドとオブジェクトをつないでいくのが狙いのピックになります。
オーンやアニーといった強力なイニシエートスキルをもったチャンピオンがここに該当します。

以前あった台湾メタというものに少し似ていますね。




ナーフ渦を免れたADCたち



ここまでADCに対して厳しいことしか書いてきませんでしたが、インフィニティエッジをビルドしないADC、特にon-hit-effectを重視したビルドが出来るチャンピオンはまだまだピックする価値があると言われています。

グインソー・レイジブレードは性能が据え置きですし、ルインドキングブレードは200g安くなりました。

中でもカイ=サ、エズリアル、ルシアンの3チャンプはかなり評価が高いようです。


カイ=サ

本人のナーフ以外はコアビルドのルナーン・ハリケーンが300g値上がりしたのみで、ほとんど影響がありません。
の代わりに、ナッシャートゥースをビルドしてAPビルドにするプレイヤーも増えています。

どちらのビルドに進んでも変わらず終盤のキャリー能力は健在です。

エズリアル

AS、クリティカル共にビルドしないチャンピオンなので、こちらもアイテムの変更の影響を受けていません。
むしろルインドキングブレードが200g安くなったので、少しパワーが上がったともいえます。
トリニティフォース完成後は弱い時間が少なく、セラフ・エンブレイズが完成すればレイトゲームでも十分にダメージを出すことができます。


ルシアン

もっとも今回の変更で恩恵が大きかったチャンピオンでしょう。
従来通り、をビルドした後に新しくなったエッセンスリーバーへと進むのが最新のビルドです。
完成後はとてつもない追撃、カイト性能を得られるようになりました。
基礎ステータスが元々高めのチャンピオンなので、他のADCと比べてナーフがきつくなかったというのもあります。


このほかに、を買うヴァルスやが初手のカリスタあたりもピック圏内でしょう。

ミス・フォーチュンやドレイブンは基礎ステータスがナーフされたレーン環境で対面を削りにいくという意味では強力ですが、相手にADC以外が来たときはやや厳しいかもしれません。



おわりに



いかがだったでしょうか。
ADCが消えた理由とその代替ピックについての話でした。

さすがにADCの惨状をRiotが放置をするとは思えませんが、他にもmidにサポートを置いてjgを育てる戦術など、長年続いたEUスタイルが転換期を迎えているのかもしれません。
(いわゆるカーサス・ヌヌやマスターイー・タリック、グレイブス・ブラウムなどの戦術)

もしこのメタがある程度続くなら、ゲーム時間5分くらいでディレイドスワップをして、Top1stタワーとリフトスカトルを優先して狙いに行くといった戦術も出てくるんじゃないか、と個人的には予想しています。

こういった趣向は競技シーンを観戦する上では楽しい要素だと思いますが、一般プレイヤーにとっては難解でとっつきづらいという欠点があります。

LoLには、競技シーンでスワップ戦術が大流行したときに、あまりにもプロの試合と一般ユーザーが体験するソロQとがかけ離れてしまったためにタワーの耐久度を変更してレーンスワップが出来ないようにする、という調整を行った過去があります。

これからどういった方向に調整が向かっていくのか、注目です。


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