命題「チャンピオンの多様性があるならば、バランスの良いメタである」は真か偽か

November 1, 2018 by Merryday, Patch 8.19

Worlds 2018決勝戦直前特別スペシャルおまけ記事
こんにちは。Merrydayです。

Worlds 2018も残すところ決勝のみ。準決勝が終わった直後から湧き続ける大きな期待と、若干の物寂しさが入り混じって何とも形容しがたい胸の内。


さて、突然だがこんな話を耳にしたことはないだろうか。

「今年のWorldsは色んなチャンピオンが使われているから、バランスの良いメタだ」

そういえば、LoLEsports Stats(→Twitter:試合中にルーンの詳細情報を投稿してくれる便利なアカウント)に、こんなツイートがあった。



引用元:https://twitter.com/LoLEsportsStats/status/1053973170443575296


10月21日の時点で既に、WorldsとMSIにおける使用チャンピオン数が歴代最多となっている。

確かに、使われているチャンピオンが多いというのは事実のようだ。

では、本当にこのパッチ8.19はバランスの良いメタなのか。

命題「チャンピオンの多様性があるならば、バランスの良いメタである」は真か偽か。
(タイトル回収)
考察してみようではないか。


なお、特に断りがない限り、比較対象は2014年~2018年のWorldsとする。
(当然、2018年は準決勝までのデータ)



実装済みチャンピオンに対する割合




手始めに、大変シンプルで至極分かりやすい数字から見てみよう。

使用チャンピオンが増えていると聞いて、まず思いつく意見はこれだろう。

「年が経つごとに新チャンピオンが実装されているのだから、使用チャンピオンが増えるのは当たり前ではないか!」

なるほど、一理ある。

そこで、各年度ごとに「使用されたチャンピオン数÷開幕時点で実装済みのチャンピオン数」を算出した結果が以下である。


1位:2018年 0.631 (89/141)
2位:2017年 0.599 (82/137) (使用不可)
3位:2015年 0.587 (74/126)
4位:2014年 0.492 (59/120)
5位:2016年 0.427 (56/131) (使用不可)

このように、実装済みチャンピオンに対する割合でも、2018年が1位となった。
チャンピオンの多様性があるという前提は、間違いなさそうだ。



試合数に対する割合



LoLの試合で一度に使われるチャンピオンは、被りなしで10体。
つまり、試合数が多ければ多いほど、使用されるチャンピオン数は増加する可能性がある。

というわけで、「使用されたチャンピオン数÷試合数」の算出結果が以下。


1位:2015年 1.014  (74/73)
2位:2018年 0.767  (89/116)
3位:2014年 0.756  (59/78)
4位:2016年 0.727  (56/77)
5位:2017年 0.689  (82/119)

2015年が突出しているが、それ以外にほぼ差はない。
余談だが、Ban率100%という驚異的記録を残したのはWorlds 2017(Main Event)ののみ。


この結果は、命題の反例にはならないものの、証明としてもまた不十分だろう。



使用された構成で比較



満を持しての真打登場。

「バランスの良いメタ」ならば、「様々な構成が使える」のではないかと考えた私は、2017年と2018年のWorlds(Main Event)で使用された構成を大別、比較することにした。

2017年のWorldsってどんなメタだっけ?という方のために簡単に説明すると、
「ADCがを持つ完成RTAメタ」だ。
当時のは、シールドを付与されたADCがAAするだけでモリモリ回復するという
ぶっ壊れ性能。「アデセンつまらん」「アデセン削除しろ」という怒りの声がそこかしこで噴出していた。

各年度におけるMain Eventの試合数はそれぞれ80と74、合わせて154試合。言うまでもなく構成はその倍。

これを、Engage(PickOffを含む)・Kite・Poke・Counter・ProtectCarry・ObjectSiege・SplitPushの7種類に分類する。
(他人を巻き込むには忍びない作業だったので、あくまで個人的見解)

……10年分くらい「正」の字を書いた気がする。
パッとしない構成もいくつかあり、それに関しては試合内容で補完した。

それでは、まず2017年の集計結果から見て頂こう。

【2017年】
1位:ProtectCarry 25% (40回)
2位:Engage 23.8% (38回)
3位:Kite 17.5% (28回)
4位:SplitPush 14.4% (23回)
5位:ObjectSiege 10% (16回)
6位:Counter 9.4% (15回)
7位:Poke 0% (0回)

確かに、SUPはと好相性のチャンピオンが跳梁跋扈していた。
しかしながら、構成として見るとそこそこバランスが良い。
(Poke構成は難しいから仕方ないね)
少し意外な結果になったのではないだろうか。

次に、2018年の集計結果がこちら。

【2018年】
1位:Engage 46.6% (69回)
2位:Kite  12.1% (18回)
2位:SplitPush 12.1% (18回)
4位:Counter 10.8% (16回)
5位:ProtectCarry 8.8% (13回)
5位:ObjectSiege 8.8% (13回)
7位:Poke  0.7% (1回)


なんですか、これ。

予想通りの結果ではあるが、実際数字にしてみると恐ろしい。
ご覧の通り、「エンゲージ大正義メタ」といっても過言ではない。
これでも頑張ってEngageに振り分けるのを抵抗したつもりだ。
(Poke構成? 知らない子ですね……)


この結果は、命題の反例として十分信用に値する。そう捉えることもできるだろう。
但し、仮定「バランスの良いメタならば、様々な構成が使える」が正しければ、という話ではある。

バランスの良いメタとは、何なのだろうか。(哲学)
これ以上掘り下げるのは危険な香りがするので、少し視点を変えてみよう。



なぜEngage構成がこれほどまでに多いのか



真っ先に考えられるのは、トラッカーナイフとサイトストーンの削除、そしてゾンビワードの弱体化だろう。
視界確保のツールが不十分になった影響は顕著で、コントロールを得意とするLCK勢が
散った理由の一つでもある。

Engage構成の強みは、自分たちが戦いたいタイミングでファイトを起こせるということだ。
そして、それを回避するための視界量が十分ではないとなれば、チームファイトを意図して避けるのは至難の業である。


次に、JGのメタが少数戦に寄っていることが挙げられる。
現時点で、ピック率・勝率ともに高い水準でまとまっているJGは、の3体。
彼らの主な共通点は、程度に差はあれど少数戦に強く、PickOffに長けているという点だ。
序盤にテンポが取れたならそれを押し付ける、中盤以降は切り込み隊長にも、スイーパーにもなれる。
彼らを活かす上で最も妥当な選択が、Engage構成というわけだ。
のことを持ってUltで突っ込むだけの脳筋だと思っていた人は、ごめんなさいをしましょう。



もう一つ思い当たるのは、パッチ8.7で弱体化されただ。
Worlds 2017では、TOP・JG・SUP、果てはMIDでまでもが買い揃えるようなアイテムだったのだが、シールド量とクールダウンが大幅にナーフされた。

このの価値が低いがゆえに、たたでさえ強いのフランカー三姉妹がより生き生きと振舞える。
多くのエンゲージツールは、相手の陣形を乱すという点で、彼女たちを助長している。



なぜ今年のWorldsは面白いと感じる人が多いのか



去年に比べると、今年のWorldsは面白いという意見が多く見受けられ、これが「バランスの良いメタ」という部分に繋がっているように思える。
(賛否両論はあるだろうが、それは一旦心の中に閉まってほしい)

それはまさしく、Engage構成が多いからではないだろうか。

エンゲージは、集団戦開始の合図みたいなものだ。
鍛冶神の呼び声がすれば、戦姫の号令がかかれば、パラノイアで辺りが闇に包まれれば、「ああ、今から何か起こるのだな」ということが、視覚的・聴覚的に理解できる。

ロケットリーグが急速に流行りつつあるのはなぜか、思い出してほしい。
そう、見ていて分かりやすいからだ。そこにルールや技術の知識はなくとも、シンプルに楽しめる。

前述のエンゲージツールは、プレイヤーだけでなく視聴者までもを巻き込んだ、意思統一の手段として極めてエフェクティブなのである。

某動画投稿者様がこんなことを言っていたのを思い出した。
「一人で正しいことをするよりも、皆で間違ったことをしたほうが、いい結果になりやすい」

今大会、エンゲージされた側のチームが戦う・戦わないの判断を統一できず、そのままズルズルと飲み込まれてしまうシーンが散見された。
これは、Worldsに潜む魔物の仕業なのか、はたまたRiotが狙ったエンターテイメントの形なのか……。




最後に



来る11月3日、FNCとiGで行われる頂上決戦。
カギを握るのはエンゲージだけではなく、その後の判断だと思う。
準決勝で新たな手札を切った両チームだが、ここまで隠し続けたJOKERはあるのだろうか。
全世界のLoLファンよ、刮目せよ。

え? 結局、命題は真なのか偽なのかって?
それは……ウワナニヲスルヤメr