LCKメタ・ドラフト分析 KingZone DragonXの生存戦略
強豪チームが苦しみながら自分たちのスタイルを模索していく話
こんにちは。
最近はパッチノートの感想文、無料チャンピオンの紹介に加え、毎週のプロリーグの結果まとめなど定期的に更新する記事が増えて、ゲームレビューとかメタ分析の部分がおろそかになってる感じがあったので、久しぶりに頑張ろうと筆を執った次第です。
取り上げるのはWeek1で躓いたもののWeek2以降調子を上げつつある、KingZone DragonX(以下KZ
)です。
シーズン9再序盤のメタ、チームがWeek1で失敗した理由、そして2週目以降にどういったアプローチでチームを改善していったのかについて書いていこうと思います。
(選手名はすべて敬称略です)
まず両チームのドラフト戦術を見る前に、シーズン9再序盤の競技シーンのメタについて解説していこうとおもいます。
シーズン9の変更点を一言でいうなら、「サモナーズリフトに供給されるゴールド量がかなり増えた」
ということです。
タワープレートの追加、シージミニオンの増加、ドラゴンから得られるゴールド量まで増えています。
さらに、シージミニオンの出現頻度が増えたことやミニオン自体が強化されたことでバロンの価値がシーズン8よりもはるかに高くなっています。
これらのシーズン9の新要素によって、いまの競技シーンのゲームは大きく分けて3つのタームに分けられています。
長々と解説しているので結論だけ見たい人は、まとめ、のところだけ読んでください。
タワープレートが存在している時間帯です。
基本的にはレーンで優位なピック、プレイをした側がゲームの主導権を握ります。
レーンをプッシュするだけで1枚160g、無理なくプレイしても2枚で320gも余計にゴールドが得られるわけですから、レーン強いもの勝ち、プッシュしたもの勝ちのメタと言えます。
レーンがプッシュされることでジャングラーが活動出来る範囲も増えますし、いいことづくめですね。
そしてもう一つ、今のメタで特徴的なのは早い時間帯の集団戦です。
ドラゴン、ヘラルドの価値が異常に高いため、2回目のの青バフがポップする8分前後から勝ってからタワープレート獲得につなげられる12分前後までに集団戦が発生しやすいのです。
この戦いに勝利すると、タワープレート複数枚とエピックモンスターが獲得できるので、勝った側は簡単に3000gくらいの有利を築くことができます。
なので、このファイトに焦点を合わせた、つまりレベル6で十分集団戦を戦えるチャンピオンを取ることが重要になってきます。
逆にこの時間にファイトが出来ない、あるいは相手のピックよりもパワーで劣る構成の場合は、相手の仕掛けに対してドラゴンとヘラルドをトレードしたり、相手が仕掛ける逆サイドへのタワーダイブをしてオブジェクトのトレードをしなければいけません。
このオブジェクトのトレードやダイブすらできないチャンピオンは、いくら強力でもピックしづらいメタといえるでしょう。
タワープレートが消滅してからの時間帯で重要になってくるのは、①どちらが優位に立っているのか、②早い時間帯でのバロンが取れるチームはどちらなのか、の2点になります。
優位を築いているチームは自分たちがバロンを取れる時間帯になるまでサイドレーンを中心にウェーブのコントロールを取りつつ、可能ならキャッチをしかけたり、ドラゴンを取ったり、というプレイを行って徐々にリードを広げていきます。
リバーの視界をどちらが握っているかが大切なので、基本的にはミッドレーンにbotとsupを置いて、jgがリバーに出て視界を確保するタイミングでsupも一緒に動いて視界を取りに行く、というのが重要です。
20分以降はバロンナッシャーが出現します。
ここで重要になってくるのは、②バロンが早いチーム構成かどうか、です。
バロンが早い構成の場合、相手の視界を消しきればすぐにでもスタートするという選択肢が取れます。
テレポートがキャンセルできなくなったこともあって、バロンを触っている側は反転が非常に行いやすくなりました。
(で飛んできている場所にCCを置いておくだけでいいですからね)
バロンが早いチームはサイドレーンのコントロールを先にとってトップレーナーをバロン前に徒歩で寄せて、そこからバロンに触るというのが一番安全かつ確実な選択肢になります。
サイオンやガリオといったグローバルアルティメットを持つチャンピオンが良くピックされていますが、彼らはこういう状況下でサイドレーンからすぐに味方に合流できる点が評価されているわけですね。
25分くらいまでになるとどちらのチームもバロンを狩るのに十分な装備が整うので、構成による有利不利というのはあまりなくなります。
なんにせよ、ここでバロン、あるいはリバーの視界をめぐっておきる集団戦がゲームの趨勢を決めることになります。
この時間帯はよほどスノーボールしていない限り、キャリー陣のコアアイテムは2つになります。
なので2アイテムでパワースパイクを迎えないチャンピオンをピックしていると、採用できる作戦の幅がぐっと狭まってしまいます。
botレーンで良くピックされているマークスマン、ルシアン、エズリアルはまさに2アイテムでパワースパイクになるチャンピオンたちで、このバロンファイトで勝つためのピックと言えるでしょう。
25分以降はバロン獲得が即大幅有利につながる時間帯です。
25分以降は毎ウェーブシージミニオンがポップするため、シーズン8でいう35分以降並みのタワーシージ能力が得られるわけですから。
ただ毎ウェーブシージミニオンがポップするということは、両チームのキャリーに大量のゴールドが供給されるということを意味します。
20分即バロン、あるいは20~25分でのバロンファイトにフォーカスを合わせている構成の場合、相手チームにスケーリング性能では劣る部分があるので、きっちりと試合を終わらせる動きが取れないと、ビルド面で追いつかれてしまう可能性も高くなりました。
シャットダウンゴールドも以前より多くなっているので、勝っている側としてはミスが許されないメタともいえるでしょう。
さて、現在のメタとゲームの流れをざっくり解説し終えたので、今度はそれぞれのロールにどのような役割が求められているか、考えてみましょう。
ゲーム時間が早いメタでは一般的にMidとJgの重要度があがります。
ミッドレーンはミニオンが一番早く到達するレーンなので、必然的にレベル、ゴールド面でもっとも先行できるレーンですし、しかもエピックモンスター2種、ドラゴン、ヘラルド、どちらへもアクセスが容易な位置にいます。
Midの勝敗を決める大きな要素がJgの介入です。なのでこのMid、Jgの組み合わせが相手のピックに対して著しく不利だと、それだけでゲームの主導権を25分くらい取り返せなくなる、そんなメタになっています。
次にボットレーンですが、こちらも実は重要です。
シーズン9になって重要度の増したドラゴンに近く、Midの優位をめぐっておきる少数戦にsupが素早く寄れるかどうかという点でも、レーンの優位が重要になってきます。
ただ、Botがキャリーできるメタかというとそうではないのです。
先述しましたが、ほとんどのマークスマンがレベル6過ぎの集団戦や、20分のバロンファイトでパワーを発揮できないからですね。
なのでボットレーンはレーン戦は勝ってほしいけど、キャリーはしづらい、という複雑な位置に立たされています。
最後にトップレーンですが、ここは陸の孤島と化しています。
キャリー系のマッチアップになった場合、(アカリやジェイスなどですね)ガンクをしてレーナーを育てる価値はありますが、アーゴット、サイオン、エイトロックスといったチャンピオンの場合、ガンクする価値はガクッと下がります。
ドラゴンの価値がとても高いメタなので、トップサイドで姿を見せるのはリスクリターンが合っていないのです。
ドラゴンがポップする5分よりも前の低レベルガンクや、狩られたあとの時間帯はガンクの可能性がありますが、そういった時間帯は当然Topもガンクを警戒するので、結果としてトップにガンクが刺さるという機会はかなり減りました。
ここまで飛ばしてきた人のためにシーズン9序盤のメタをまとめると、
① 早い時間帯に集団戦が起きやすく、その時間帯に強いチャンピオンが高tierになっている
② MidとJgがゲームの主導権を握るのに大切で、ボットレーンはレーンでの優位が欲しい
③ Topはあまりガンクされない
といった感じです。
それではようやく両チームのドラフトを見ていきましょう。
KZは今シーズンスターターが全員入れ替わる、いわゆるチーム爆破が起きました。
TopのRascal、JgのCuzzは元からのチームメンバーでしたが、それぞれKhan、Peanutの控えからの昇格の形、Midは怪我明けのPawN、Botは世界一のADCともいわれるDeft、Supも評価の高いTusiNになりました。
このロースターを見た時、競技シーンに詳しい方なら皆さんこう思うでしょう、「Deftにオールインするしかない」と。
PawNは怪我もありましたが現AFsのUcalに追い抜かれた形でチームを去った選手で、2019シーズンの前哨戦であるKeSPACup2018でも、正直言っていまいちなパフォーマンスでした。
Rascalも実績のない選手ですし、Khanに代わって試合に出ても、パッとしないプレイが目立ちました。
一方ボットデュオはかなり強力です。どちらも去年のWorldsに出場した選手ですからね。
大方のファンの予想通り、Week1のKZはDeftで勝つドラフトを展開しました。
実際のピックを見てみましょう。
動画はこちら
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Deftにいま最もキャリー力のあるマークスマンカイ=サを渡し、2ndバンフェイズではザヤ、ヤスオ、どちらもViperのピックを潰すようにドラフトを組み立てています。
パフォーマンスの低いPawNにはミスが起きにくい、オフタンクであるアーゴットを、ダメージディーラーが得意なRascalにはその中で最もリスクの低いリサンドラをピックさせています。
CuzzとTusiNにはピールが出来るCCタンクをピックさせ、完全にDeftを守る体制です。
しかし、この構成はうまい行きませんでした。
問題点はいくつかあります。
1つ目はMidとJgの組み合わせです。
アカリ、シン・ジャオというGRFの非常にダメージ、キャッチ能力に優れるピックに対し、ピール、ユーティリティを重視しすぎたKZのアーゴット、セジュアニでは対抗することが出来ませんでした。
もちろん対面がいまや世界最強といってもいいChovyのアカリだったので仕方ない部分もありますが、16分時点でMidのCS差が50以上と、アーゴットやや有利と言われるマッチアップにもかかわらずPawNはいいようにやられてしまいました。
彼のパフォーマンスの低さも目立ってしまった試合内容でした。
2つ目はDeftとViperのピックの違いです。
これは18分ごろにリバーで起きた集団戦のダメージグラフです。
もちろんLehendsの素晴らしい仕掛けからGRF優位に始まった集団戦ではありましたが、お互いのbotは1コアずつ完成という状態でこのダメージ差です。
もしイーブンの状況でファイトが起きても、ストームレイザーだけをもったカイ=サにこれだけのダメージを出すことは不可能でしょう。
この時間の集団戦はバロンの視界確保のために重要ですが、(実際このファイトで勝利したGRFはミッドの1stタワーを獲得しました)カイ=サにオールインしたKZの構成では、GRFの早い時間帯の集団戦にフォーカスしたチームコンプにまるで歯が立たなかったわけです。
Week1でPawNが先発した3ゲームは全てこのようにPawNにユーティリティ、CuzzにCCタンク、Deftにカイ=サやルシアンといったtierの高いマークスマン、というピックをして結果、全敗。
最悪の滑り出しになってしまったKZでしたが、Week2ではガラリとピックを変えてきました。
KZの変化はWeek2の1試合目から現れます。
ドラフトは以下の通りです。
動画はこちら
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1stバンフェイズで、KZは赤側なのにもかかわらずルシアンをオープンにしました。
「Deftで勝つ」という戦略を採るとすれば、あまりにもリスキーなドラフトと言えるでしょう。
いまのはそれだけ抜けて強いマークスマンですから。
しかしこの日のKZの戦略はWeek1とは全く異なるものでした。
1stピック、ルシアンに対してDeftはアッシュを選択、射程の長さとEやRのユーティリティ性能で対抗しようというピックです。
はキャリー力という意味ではやと比べるとかなり落ちますし、それをDeftに使わせるとなるとしっかりとしたダメージディーラーがもう1枚必要になってきます。
その役割を担ったのが、Week1でユーティリティピックに終始していたPawN。ここでゾーイというダメージが出せるチャンピオンを今シーズン初めてピックします。
はスキルショットの精度が命のチャンピオンで、調子の上がらないPawNに使わせるのは負担が大きく思えました。
しかし得意チャンピオンを持った彼は、2014年世界を制したころの輝きを取り戻します。
ヤスオという対面にカウンターを取られながらも、CSはイーブンでレーン戦をこなし、対チャンピオンダメージでは36000、チーム2位の数値をたたき出します。
Midにキャリーできるチャンピオンをピックしたことに合わせてCuzzもオラフという攻撃的なピックを出せるようになりました。
結果、この試合ではヤスオグラガスというKTの強力なコンボピックに対しても対抗できるだけのパワーをMid、Jgに持たせることに成功しています。
これもWeek1から改善した点と言えるでしょう。
PawNはWeek2でゾーイの他にもルブランやアカリといったキャリータイプのチャンプを出し、ダメージはチーム内1位または2位とディーラーとして十分なパフォーマンスを発揮しました。
PawN復活の好影響はTopのRascalにも及びました。
PawNがユーティリティピックに終始していたWeek1ではRascalがサブディーラーを務めるピックが多く、実際ピックしたのもリサンドラ、アカリ、ジェイスなどでした。
これらのチャンピオンはレーニングでリスクを冒してでも勝ちに行く必要があるわけですが、これが経験の浅い彼には重圧だったのか、ミスにつながるシーンも多く見られました。
しかにWeek2以降PawNがダメージを出せるピックをしてくれるようになったので、Rascalはアーゴットのような、無理に勝ちにいかなくてよいピックが回ってくるようになったのです。
またメタ解説のところでも書きましたが、のようなチャンピオンをピックした場合、敵味方Jgがトップにくる確率がぐっと減るのも彼にとってはプレイしやすさの向上にもつながったことでしょう。
サブディーラーというプレッシャーから解き放たれたRascalは試合ごとにパフォーマンスを上げていきました。
本当にユーティリティピックが必要だったのは、不調のPawNではなく若いRascalだった、というわけです。
こうしてPawN優先のドラフトを行うようになってKZは見事Week2で2連勝とカムバックしました。
ドラフトの改善点に気付き実行できたコーチ陣の優秀さももちろんですが、Deftというプレイヤーのピック幅にも驚かされた1週間でした。
Week2、Deftはアッシュ、ヴァルス、ジグス、ジンクスというTier2以下のチャンピオンたちを使って、チームを勝利に導きました。
中でもヴァルスをピックしたAFs戦では脅威ビルドでDPM1093というちょっと理解不能な数値をたたき出しています。
一見PawNのパフォーマンス改善がKZ浮上のきっかけに見えますが、その影にはDeftのプールの広さ、どのチャンプオンを持っても変わらないキャリー力があった、というわけです。
いかがだったでしょうか。
本来は、ボットレーンをどう扱うか、という問題点に対して別アプローチで成功したAfreecaFreecsとの比較、といった記事内容にしようと思っていたのですが、メタ解説などを盛り込んでいたら長くなりすぎたのでKZに絞って書いてみました。
SBの躍進やAFsのマークスマンなし構成などの解説は来週LCKがお休みなのでチャンスがあれば書きたいですね。
面白かったらシェア等お願いします。
次の記事が早まる可能性があります。
最近はパッチノートの感想文、無料チャンピオンの紹介に加え、毎週のプロリーグの結果まとめなど定期的に更新する記事が増えて、ゲームレビューとかメタ分析の部分がおろそかになってる感じがあったので、久しぶりに頑張ろうと筆を執った次第です。
取り上げるのはWeek1で躓いたもののWeek2以降調子を上げつつある、KingZone DragonX(以下KZ
)です。
シーズン9再序盤のメタ、チームがWeek1で失敗した理由、そして2週目以降にどういったアプローチでチームを改善していったのかについて書いていこうと思います。
(選手名はすべて敬称略です)
シーズン9序盤のメタ解説
まず両チームのドラフト戦術を見る前に、シーズン9再序盤の競技シーンのメタについて解説していこうとおもいます。
シーズン9の変更点を一言でいうなら、「サモナーズリフトに供給されるゴールド量がかなり増えた」
ということです。
タワープレートの追加、シージミニオンの増加、ドラゴンから得られるゴールド量まで増えています。
さらに、シージミニオンの出現頻度が増えたことやミニオン自体が強化されたことでバロンの価値がシーズン8よりもはるかに高くなっています。
これらのシーズン9の新要素によって、いまの競技シーンのゲームは大きく分けて3つのタームに分けられています。
長々と解説しているので結論だけ見たい人は、まとめ、のところだけ読んでください。
①ゲーム開始から14分まで
タワープレートが存在している時間帯です。
基本的にはレーンで優位なピック、プレイをした側がゲームの主導権を握ります。
レーンをプッシュするだけで1枚160g、無理なくプレイしても2枚で320gも余計にゴールドが得られるわけですから、レーン強いもの勝ち、プッシュしたもの勝ちのメタと言えます。
レーンがプッシュされることでジャングラーが活動出来る範囲も増えますし、いいことづくめですね。
そしてもう一つ、今のメタで特徴的なのは早い時間帯の集団戦です。
ドラゴン、ヘラルドの価値が異常に高いため、2回目のの青バフがポップする8分前後から勝ってからタワープレート獲得につなげられる12分前後までに集団戦が発生しやすいのです。
この戦いに勝利すると、タワープレート複数枚とエピックモンスターが獲得できるので、勝った側は簡単に3000gくらいの有利を築くことができます。
なので、このファイトに焦点を合わせた、つまりレベル6で十分集団戦を戦えるチャンピオンを取ることが重要になってきます。
逆にこの時間にファイトが出来ない、あるいは相手のピックよりもパワーで劣る構成の場合は、相手の仕掛けに対してドラゴンとヘラルドをトレードしたり、相手が仕掛ける逆サイドへのタワーダイブをしてオブジェクトのトレードをしなければいけません。
このオブジェクトのトレードやダイブすらできないチャンピオンは、いくら強力でもピックしづらいメタといえるでしょう。
②ゲーム時間14分~25分
タワープレートが消滅してからの時間帯で重要になってくるのは、①どちらが優位に立っているのか、②早い時間帯でのバロンが取れるチームはどちらなのか、の2点になります。
優位を築いているチームは自分たちがバロンを取れる時間帯になるまでサイドレーンを中心にウェーブのコントロールを取りつつ、可能ならキャッチをしかけたり、ドラゴンを取ったり、というプレイを行って徐々にリードを広げていきます。
リバーの視界をどちらが握っているかが大切なので、基本的にはミッドレーンにbotとsupを置いて、jgがリバーに出て視界を確保するタイミングでsupも一緒に動いて視界を取りに行く、というのが重要です。
20分以降はバロンナッシャーが出現します。
ここで重要になってくるのは、②バロンが早いチーム構成かどうか、です。
バロンが早い構成の場合、相手の視界を消しきればすぐにでもスタートするという選択肢が取れます。
テレポートがキャンセルできなくなったこともあって、バロンを触っている側は反転が非常に行いやすくなりました。
(で飛んできている場所にCCを置いておくだけでいいですからね)
バロンが早いチームはサイドレーンのコントロールを先にとってトップレーナーをバロン前に徒歩で寄せて、そこからバロンに触るというのが一番安全かつ確実な選択肢になります。
サイオンやガリオといったグローバルアルティメットを持つチャンピオンが良くピックされていますが、彼らはこういう状況下でサイドレーンからすぐに味方に合流できる点が評価されているわけですね。
25分くらいまでになるとどちらのチームもバロンを狩るのに十分な装備が整うので、構成による有利不利というのはあまりなくなります。
なんにせよ、ここでバロン、あるいはリバーの視界をめぐっておきる集団戦がゲームの趨勢を決めることになります。
この時間帯はよほどスノーボールしていない限り、キャリー陣のコアアイテムは2つになります。
なので2アイテムでパワースパイクを迎えないチャンピオンをピックしていると、採用できる作戦の幅がぐっと狭まってしまいます。
botレーンで良くピックされているマークスマン、ルシアン、エズリアルはまさに2アイテムでパワースパイクになるチャンピオンたちで、このバロンファイトで勝つためのピックと言えるでしょう。
25分~ゲームエンド
25分以降はバロン獲得が即大幅有利につながる時間帯です。
25分以降は毎ウェーブシージミニオンがポップするため、シーズン8でいう35分以降並みのタワーシージ能力が得られるわけですから。
ただ毎ウェーブシージミニオンがポップするということは、両チームのキャリーに大量のゴールドが供給されるということを意味します。
20分即バロン、あるいは20~25分でのバロンファイトにフォーカスを合わせている構成の場合、相手チームにスケーリング性能では劣る部分があるので、きっちりと試合を終わらせる動きが取れないと、ビルド面で追いつかれてしまう可能性も高くなりました。
シャットダウンゴールドも以前より多くなっているので、勝っている側としてはミスが許されないメタともいえるでしょう。
現在のメタと各ロールの関係性
さて、現在のメタとゲームの流れをざっくり解説し終えたので、今度はそれぞれのロールにどのような役割が求められているか、考えてみましょう。
ゲーム時間が早いメタでは一般的にMidとJgの重要度があがります。
ミッドレーンはミニオンが一番早く到達するレーンなので、必然的にレベル、ゴールド面でもっとも先行できるレーンですし、しかもエピックモンスター2種、ドラゴン、ヘラルド、どちらへもアクセスが容易な位置にいます。
Midの勝敗を決める大きな要素がJgの介入です。なのでこのMid、Jgの組み合わせが相手のピックに対して著しく不利だと、それだけでゲームの主導権を25分くらい取り返せなくなる、そんなメタになっています。
次にボットレーンですが、こちらも実は重要です。
シーズン9になって重要度の増したドラゴンに近く、Midの優位をめぐっておきる少数戦にsupが素早く寄れるかどうかという点でも、レーンの優位が重要になってきます。
ただ、Botがキャリーできるメタかというとそうではないのです。
先述しましたが、ほとんどのマークスマンがレベル6過ぎの集団戦や、20分のバロンファイトでパワーを発揮できないからですね。
なのでボットレーンはレーン戦は勝ってほしいけど、キャリーはしづらい、という複雑な位置に立たされています。
最後にトップレーンですが、ここは陸の孤島と化しています。
キャリー系のマッチアップになった場合、(アカリやジェイスなどですね)ガンクをしてレーナーを育てる価値はありますが、アーゴット、サイオン、エイトロックスといったチャンピオンの場合、ガンクする価値はガクッと下がります。
ドラゴンの価値がとても高いメタなので、トップサイドで姿を見せるのはリスクリターンが合っていないのです。
ドラゴンがポップする5分よりも前の低レベルガンクや、狩られたあとの時間帯はガンクの可能性がありますが、そういった時間帯は当然Topもガンクを警戒するので、結果としてトップにガンクが刺さるという機会はかなり減りました。
まとめ
ここまで飛ばしてきた人のためにシーズン9序盤のメタをまとめると、
① 早い時間帯に集団戦が起きやすく、その時間帯に強いチャンピオンが高tierになっている
② MidとJgがゲームの主導権を握るのに大切で、ボットレーンはレーンでの優位が欲しい
③ Topはあまりガンクされない
といった感じです。
それではようやく両チームのドラフトを見ていきましょう。
Deftにオールインできないメタ
KZは今シーズンスターターが全員入れ替わる、いわゆるチーム爆破が起きました。
TopのRascal、JgのCuzzは元からのチームメンバーでしたが、それぞれKhan、Peanutの控えからの昇格の形、Midは怪我明けのPawN、Botは世界一のADCともいわれるDeft、Supも評価の高いTusiNになりました。
このロースターを見た時、競技シーンに詳しい方なら皆さんこう思うでしょう、「Deftにオールインするしかない」と。
PawNは怪我もありましたが現AFsのUcalに追い抜かれた形でチームを去った選手で、2019シーズンの前哨戦であるKeSPACup2018でも、正直言っていまいちなパフォーマンスでした。
Rascalも実績のない選手ですし、Khanに代わって試合に出ても、パッとしないプレイが目立ちました。
一方ボットデュオはかなり強力です。どちらも去年のWorldsに出場した選手ですからね。
大方のファンの予想通り、Week1のKZはDeftで勝つドラフトを展開しました。
実際のピックを見てみましょう。
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ロール順
Deftにいま最もキャリー力のあるマークスマンカイ=サを渡し、2ndバンフェイズではザヤ、ヤスオ、どちらもViperのピックを潰すようにドラフトを組み立てています。
パフォーマンスの低いPawNにはミスが起きにくい、オフタンクであるアーゴットを、ダメージディーラーが得意なRascalにはその中で最もリスクの低いリサンドラをピックさせています。
CuzzとTusiNにはピールが出来るCCタンクをピックさせ、完全にDeftを守る体制です。
しかし、この構成はうまい行きませんでした。
問題点はいくつかあります。
1つ目はMidとJgの組み合わせです。
アカリ、シン・ジャオというGRFの非常にダメージ、キャッチ能力に優れるピックに対し、ピール、ユーティリティを重視しすぎたKZのアーゴット、セジュアニでは対抗することが出来ませんでした。
もちろん対面がいまや世界最強といってもいいChovyのアカリだったので仕方ない部分もありますが、16分時点でMidのCS差が50以上と、アーゴットやや有利と言われるマッチアップにもかかわらずPawNはいいようにやられてしまいました。
彼のパフォーマンスの低さも目立ってしまった試合内容でした。
2つ目はDeftとViperのピックの違いです。
これは18分ごろにリバーで起きた集団戦のダメージグラフです。
もちろんLehendsの素晴らしい仕掛けからGRF優位に始まった集団戦ではありましたが、お互いのbotは1コアずつ完成という状態でこのダメージ差です。
もしイーブンの状況でファイトが起きても、ストームレイザーだけをもったカイ=サにこれだけのダメージを出すことは不可能でしょう。
この時間の集団戦はバロンの視界確保のために重要ですが、(実際このファイトで勝利したGRFはミッドの1stタワーを獲得しました)カイ=サにオールインしたKZの構成では、GRFの早い時間帯の集団戦にフォーカスしたチームコンプにまるで歯が立たなかったわけです。
Week1でPawNが先発した3ゲームは全てこのようにPawNにユーティリティ、CuzzにCCタンク、Deftにカイ=サやルシアンといったtierの高いマークスマン、というピックをして結果、全敗。
最悪の滑り出しになってしまったKZでしたが、Week2ではガラリとピックを変えてきました。
PawNに得意ピックを、DeftにTier2を
KZの変化はWeek2の1試合目から現れます。
ドラフトは以下の通りです。
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ロール順
1stバンフェイズで、KZは赤側なのにもかかわらずルシアンをオープンにしました。
「Deftで勝つ」という戦略を採るとすれば、あまりにもリスキーなドラフトと言えるでしょう。
いまのはそれだけ抜けて強いマークスマンですから。
しかしこの日のKZの戦略はWeek1とは全く異なるものでした。
1stピック、ルシアンに対してDeftはアッシュを選択、射程の長さとEやRのユーティリティ性能で対抗しようというピックです。
はキャリー力という意味ではやと比べるとかなり落ちますし、それをDeftに使わせるとなるとしっかりとしたダメージディーラーがもう1枚必要になってきます。
その役割を担ったのが、Week1でユーティリティピックに終始していたPawN。ここでゾーイというダメージが出せるチャンピオンを今シーズン初めてピックします。
はスキルショットの精度が命のチャンピオンで、調子の上がらないPawNに使わせるのは負担が大きく思えました。
しかし得意チャンピオンを持った彼は、2014年世界を制したころの輝きを取り戻します。
ヤスオという対面にカウンターを取られながらも、CSはイーブンでレーン戦をこなし、対チャンピオンダメージでは36000、チーム2位の数値をたたき出します。
Midにキャリーできるチャンピオンをピックしたことに合わせてCuzzもオラフという攻撃的なピックを出せるようになりました。
結果、この試合ではヤスオグラガスというKTの強力なコンボピックに対しても対抗できるだけのパワーをMid、Jgに持たせることに成功しています。
これもWeek1から改善した点と言えるでしょう。
PawNはWeek2でゾーイの他にもルブランやアカリといったキャリータイプのチャンプを出し、ダメージはチーム内1位または2位とディーラーとして十分なパフォーマンスを発揮しました。
PawN復活の好影響はTopのRascalにも及びました。
PawNがユーティリティピックに終始していたWeek1ではRascalがサブディーラーを務めるピックが多く、実際ピックしたのもリサンドラ、アカリ、ジェイスなどでした。
これらのチャンピオンはレーニングでリスクを冒してでも勝ちに行く必要があるわけですが、これが経験の浅い彼には重圧だったのか、ミスにつながるシーンも多く見られました。
しかにWeek2以降PawNがダメージを出せるピックをしてくれるようになったので、Rascalはアーゴットのような、無理に勝ちにいかなくてよいピックが回ってくるようになったのです。
またメタ解説のところでも書きましたが、のようなチャンピオンをピックした場合、敵味方Jgがトップにくる確率がぐっと減るのも彼にとってはプレイしやすさの向上にもつながったことでしょう。
サブディーラーというプレッシャーから解き放たれたRascalは試合ごとにパフォーマンスを上げていきました。
本当にユーティリティピックが必要だったのは、不調のPawNではなく若いRascalだった、というわけです。
こうしてPawN優先のドラフトを行うようになってKZは見事Week2で2連勝とカムバックしました。
ドラフトの改善点に気付き実行できたコーチ陣の優秀さももちろんですが、Deftというプレイヤーのピック幅にも驚かされた1週間でした。
Week2、Deftはアッシュ、ヴァルス、ジグス、ジンクスというTier2以下のチャンピオンたちを使って、チームを勝利に導きました。
中でもヴァルスをピックしたAFs戦では脅威ビルドでDPM1093というちょっと理解不能な数値をたたき出しています。
一見PawNのパフォーマンス改善がKZ浮上のきっかけに見えますが、その影にはDeftのプールの広さ、どのチャンプオンを持っても変わらないキャリー力があった、というわけです。
おわりに
いかがだったでしょうか。
本来は、ボットレーンをどう扱うか、という問題点に対して別アプローチで成功したAfreecaFreecsとの比較、といった記事内容にしようと思っていたのですが、メタ解説などを盛り込んでいたら長くなりすぎたのでKZに絞って書いてみました。
SBの躍進やAFsのマークスマンなし構成などの解説は来週LCKがお休みなのでチャンスがあれば書きたいですね。
面白かったらシェア等お願いします。
次の記事が早まる可能性があります。
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