NA LCS 準決勝 TSM vs FLYを軽く分析する

April 17, 2017 by Anonymous, Patch 7.6

NA LCSも大詰め。決勝のスポットをめぐって戦ったTSMとFLYQUESTを分析する。
4/17 未明に行われたNA LCS 準決勝、FLYQUEST VS TSMをVODを見ながら作ったメモをもとに記事にしてみた。
結果を見ずに時系列順に思ったことを書き綴っているので、そのあたりを考慮して読んでいただければ幸いだ。

もちろん多分にネタバレ要素を含むので、気を付けて。




Game 1



FLYはルブラン、カミールはTSM両ソロレーナーに対するターゲットBan。ルブラン、カミールはそれぞれ、ライズ・レネクトンを合わせるドラフトが世界的に流行しているが、それらのチャンピオンは使うつもりがないということか。

とにかくレーンでドミネート(圧倒してレーンから対面を追い出すこと)させない考えが見て取れる。

一方無難なBanを行ったTSM。
レンガ―のみを消すことでFP(ファーストピック、最初のピックのことです)グレイブスへと誘導したい狙いがあったか。

FLYは誘いに乗らずFPアッシュ。
いま最も評価が高いADCであり、ウェーブクリア能力、ダメージアウトプット、CC、視界確保能力とチームゲーム必要な要素がすべてそろったチャンピオンだ。

相手が取らないならとTSMはグレイブスを取る。
ルルがBanされているということでレーンで安定して強いカルマ。
ボットレーンでビハインドを背負いたくないという意図だろうか。

FLYの2ndローテーションは、ソロレーンを2枚出す強気のドラフト。
HaiとBallsの得意チャンピオンの確保を急いだ。

両ソロレーナーが取られたということでTSMは返しで、どちらかのソロレーンを取る必要になった。
ここでTSMはシンドラを選択。
ただしタロン相手に完全に有利なピックとはいえない。オリアナやアーリといったチャンピオンのほうがタロンに対しては有利を取れそうだが、
TSMとしては集団戦よりもピックアップを重視したチャンピオン選択になった。

これはHaiがスプリットプッシュをしだした時に大きな集団戦を起こす能力よりも、ピックアップ能力を高めたほうが試合を動かしやすいという判断だろう。

2ndBanでFLYはトップにフォーカスしたbanをした。フィズ・そしてムンドはHauntzerの得意ピックであり、Ballsへの負担を極力減らそうというFLYの意図が読み取れる。

一方エリス、ザイラというTSMのBanはかなりセーフティな印象。

ザイラはTSMがすでにPickしているカルマで十分有利を取れるチャンピオンだが、ディスエンゲージ能力を嫌ってのBanか。
ソロレーンにフォーカスを置いたFLYのPickに対して序盤のgank性能の高いエリスは確かに良いBanではあるが、リー・シンもオープンだしどこまで効果的であるかは疑問だ。
しかもMoonはこれらのチャンピオンをレギュラーシーズンではほとんどプレイしていない。

とはいえFLYの構成にはリー・シンよりもエリスのほうがマッチしているのは確かだろう。

FLYはラストローテでタロンのスプリット能力を活かすためのディスエンゲージ要素を2枚追加した。
これはかなり思い切ったPickでタロンがうまく転がらなかった場合、戦う能力が著しくそがれてしまう。
ザイラの代わりにブラウムとなったわけだが、これはTSMの好Banだったといえるだろう。

これによってTSMはボットレーンで確実に有利を取れることとなった。

グレイブスのジャングルの圧力をグラガスでしのぎ切れるからも少し不安である。

タンクサポートが見えたということでレーンで強気に攻められるルシアンを最後のピースとして選択したTSM。
ピックアップやシングルバースト(1人をフォーカスして倒しきってから集団戦を始める構成)にマッチしたADCだ。

試合としてはどれだけHaiを活かせるか、また活かさないように抑え込むか、が焦点となるだろう。
BjergsenやSvenskerenはリスクをかけてでもミッド周辺を押し込んで、先に先に仕掛けていく展開を作りたい

一方トップにもランブルというスノーボール出来るトップレーナーをBallsに渡すことに成功したFLY。
Haiを育てるのではなく育てたランブルをつかってジャングル内などで仕掛けていく選択も出来るだろう。

ボットレーンはピックではTSM側が主導権を握った格好だ。
そのリードをどれくらい広げていくことができるか。注目したい。

TSMとしてはサイドタワーを先に折ることが出来ればミッドレーナーのロームの圧力を削りとることが出来るだろう。

両チームピックまとめ



TSM
ピックアップ構成

FLY
4-1のスプリット構成

3:00過ぎから積極的にグレイブスがグラガスに圧力をかける。ラプターキャンプをスティールすることに成功。
ジャングル内での小さな勝利を背景にmidもタロンに対してプレッシャーを高めていく。

さらにBallsがオーバープッシュしたところにSvenskerenのGankが刺さりフラッシュダウン。
やはりこのパッチでもグレイブスはジャングルの王者である。

6:20の時点でボットのタレットの体力は残り4割。ADCのCS差は20.プラン通りに進めていたTSMだが
ブルーバフへのインベードを視界を取らずに仕掛けた結果、ランブルのダメージの高さやMoonの仕掛けのよさもあってダブルキルを奪われてしまう。

これによってトップレーンの主導権はFLY側に転がりこんできた。
ならばとボットレーンへのダイブを慣行するTSMだったが、これもMoonが素晴らしい読みで先回りしている。
4v5の戦いながら2-2トレードに持ち込んだ。

2つのプレイでそれほど大きな戦果を挙げられなかったTSMだがそれでも積極的な仕掛けは続く。
再三のボットレーンへの仕掛けでbotのタワーを獲得したTSMだがその代償として2キルを取られhaiにキルが入ってしまう。

Haiを育ててサイドレーンに出すことがFLYにとってのwin condision(勝ちパターン・この場合は構成の強みが活きる展開のこと)であり、TSMとしては懸念材料となった。
しかし返しでボットタワーを折ったあとのFLYの軽率なプッシュをとがめて、TSMは2キルを獲得。
そのままマウンテンドレイクにまでつなげることに成功する。

ここまででキル数でこそFLYはリードしているが全体としてはTSMがうまくやっている印象だ。
TSM側から見た問題としてはやはりHaiが育ちつつあること。

これを抑え込むために早め早めにオブジェクトに圧力をかけてFLYに対応を迫ることが重要となってくる。

まずはmidに集合してタレットを獲得。一方でbotでMoonをWildTurtleがソロキルしたこともあってFLYはこれに対応することすらできない

20:50からのTSMのタロンに対する対応が素晴らしい。
topでソロプッシュをして存在感を増す前に少数戦をしかけてリコールに追い込む。
が、カウンターでアッシュとグラガスのアルティメットコンボ。
お手本のようなエンゲージで2キルを回収していくFLY

しかしここからのオブジェクトへのつなぎがうまく行かない。
ミッドのタワーを折りきれず、ドラゴンもTSMに確保されてしまう。2体目のマウンテンドレイク。
オブジェクト前での戦いを起こしたいTSMにとって願ってもないバフだ。

その後小さなやりとりが起きるものの大きなオブジェクトにはつながらず、両チームのすべてのアウタータレットが折れた26分、試合が大きく動く。
敵陣ジャングルで孤立したBjergsenに対してFLYがエンゲージ。
ルシアンはトップサイドでマップ上にうつっており、Haiのタロンも少し遠いが機動力が高さですぐに合流できる。
ピックアップに失敗してチームファイトに移行しても人数差で勝てるという公算だ。

AltecのRとBallsのRをBjergsenのシンドラにつぎ込むが、これが両方とも効果的に機能しない。
が、シンドラは完全にゾーンアウトさせられ、FLYは5v3の形を作り出すことに成功する。横合いから入ってきたHauntzerノーチラスにフォーカスを合わせて倒しに行くが、
かなり固い。爆雷発射の4マンスタンとBioflostカルマのEリデンプションによる回復で生還する。

一方Haiは後方で合流しようとしていたSvenskerenに1v1を仕掛ける。ジャングラーを倒して生還することが出来ればバロンにもつながるビックプレーとなる。
しかしここで3つの誤算が生じた。

一つは戦闘をせずにゾーンアウトされたシンドラが回り込んで集団戦に合流できたこと。
彼女はまだ魔力の奔流を使っておらず、これによってブラウム・グラガス・アッシュ、そして体力の低いランブルがゾーニングされてしまった。

さらに仕掛けた相手がグレイブスだったこと。
グレイブスはマークスマン・ジャングラーとしては防御力が高く(のパッシブの影響)、さらにヘルスの上がるブラッククリーバーを完成させていた。

そして最後の一つは、これは本当に不運なことだが、リフトスカトルが瀕死のグレイブスのほうに向かって歩いてきたことだ。
とっさの判断でSvenskerenはリフトスカトルにスマイト。
これによって体力を回復したグレイブスは生き残り、逆にタロンは倒されてしまった。

そこからはアルティメットを残したシンドラのピックアップによりブラウムをキル。
TSMは無事バロンにつなげることに成功した。

FLYはシンドラをゾーニングするためだけに主力のアルティメットを2つも切ってしまったことが結果として集団戦への敗北につながってしまったのである。

このバロンまでの一連の集団戦でTSMは大量のゴールドを獲得。カルマがソラリのロケットを完成させたことによって勝負は決した。

タワーシージ中の危険なランブルのイコライザーもカルマのマントラEとソラリによる2つのAOEシールド、さらにリデンプションの回復によって無効化できてしまうのだ。

そのままバロンバフを活かしきったTSMが初戦を取りきった。

ここまで他チームが警戒しつづけてきたFLYのHaiが使うタロンにたいして完全に対処しきったTSM。
これに対してFLYは打つ手があるのか。第2ゲームのBan/Pickに移っていく。


game2



やはり危険なソロレーナーをBanしつつグレイブスを消していったFLY
序盤のジャングリングで差をつけられないようにということだろう。
となるとリーやエリスのような序盤から強いジャングラーというよりは
もう少しパワースパイクの遅い、さきほどのグラガスやカ=ジックスのようなPickしたいという気持ちが見て取れる。

一方TSMもランブルをBANしてきた。Ballsの得意チャンピオンであり先ほどの試合でも中々のパフォーマンスだった。

FLYはまたもアッシュをFP。現パッチではどんな構成にも合う安定したFP候補である。

TSMはルルとリー・シン。
再び序盤からどんどん行けるジャングラーをピックしていく。
ただし、グレイブスと違ってリー・シンはgankを仕掛けていくタイプなのでSvenskerenの序盤の動きにも注目したい。

返しでFLYはカルマとオリアナを選択。ザイラをPickすればレーンで勝ちやすくなるが、それよりもカイトに向いたカルマということで、集団戦にフォーカスしたピックをしてきたといえる。

オリアナも同様に集団戦指向のチャンピオンだが、オリアナを先出しすると、Bjergsenの得意チャンピオンであるシンドラが自然とカウンターピックになる格好。
ドラフトも実際そのように進んでTSMは3rdピックでシンドラを選択する。

しかしこれはある意味でFLYの狙い通りのピックだった。
2ndBanフェイズでエズリアルとルシアンというWildturtleへ対するターゲットBanに成功する。
TMSはうまく誘導されてしまったといえるだろう。
もちろんbotを優先して3rdピックにルシアンを取ってきたら、2ndBanではミッドを2枚つぶせばいいわけである。
(例えばなど)

TSMは2ndBanでjgを2枚つぶしてきた。

この一連のBanで4枚のジャングルがBanされることになったが、これはMoonのピックしてきたチャンピオンの上位5体中4体を消したドラフトになっている。
(残っている彼のプール内チャンプはイブリンがあるが、メタからも外れているし少しリスキーなピックだ)
1試合目はMoonのカバーが素晴らしく苦しめられたTSMは、彼に狙いを定めたBanを行ったことになる。

さて残ったADCはメタ的にはケイトリンかヴァルスだが、TSMのスタイルやシンドラとの相性も考えてパワースパイクの早いヴァルスを選択。

それに対してBallsはケネンをブラインドピック。
対タンクを中心にレーンで相手を苛め抜くのが得意なチャンピオンだ。

そして得意チャンプを根こそぎ消されたMoonはアイバーンをピック。カイトやピールに長けたサポートタイプのジャングラーだ。
これによりFLYはケネンを使った4-1スプリットとチームファイトを自分たちから選べるチーム構成になった。

TSMは最後のピースとしてレネクトンをピック。ケネンをスノーボールさせないためのピックといえるだろう。
ムンドも見せていたし、彼も対APとして最近メタに上がってきたチャンピオンなだけに見たかったところだが。

TSMは先ほどと似たピックアップ構成になった。
シンドラとレネクトンのコンビネーションはお互いのロングレンジスタンをチェインできる関係でS3のころからセットでピックされてきた実績がある。
ミッドレーンの優位は確実にTSMサイドにあるので、そこを起点にプレッシャーを強めていく似たような展開にしたいが、相手はアイバーンという特殊なジャングラーなので
Moonのジャングルルートにも注目していきたい。

トップのマッチアップはジャングラーの介入次第といったところ。
ニンジャタビが完成するとレネクトンはかなりレーニングで強気にいけるようになるだろう。
いずれにせよレーンをプッシュするのはケネン側になりがちなのでリー・シンのガンクには注意したい。

ボットレーンはイーブンなマッチアップだが、ルルのキーストーンが雷帝の号令を選択したことによって、主導権はややTSM側といった感じか。

両チームピックまとめ



TSM
ミッドゲームにパワースパイクが集まったピックアップ構成

FLY
集団戦とスプリットプッシュ、どちらも選択できる柔軟な構成


ゲーム序盤、FLYはかなりリー・シンの位置を警戒する動きを見せる。
ラプターへのワード、早めのアッシュのEでの視界確保でしっかりとリーの位置を把握していく。
しかしそれを上回っていったのはSvenskeren。

ブラストコーンを絡めたgankルートでケネンとオリアナのフラッシュを次々と落とすことに成功する。
moonのカバーも良く、キルまではつながらないが、TSMのソロレーナーたちにとっては非常に助かる動きだ。

一方MoonもオーバープッシュしたTSMのWildturtleをとがめてファーストブラッド。
ダメージの低いジャングラーであるアイバーンのガンクを少し軽視してしまったか。少しもったいない死に方だった。

これでボットレーンの優位をつかんだFLY。AltecはWildtutleに対して20CSのリードを奪うが、ここにまたしてもSvenskerenが介入する。
絶好のタイミングでのレーンgankがきまり、ダブルキルを獲得。
残念ながらキルはルルに入ってしまったが、やり返すことに成功した。

その後もトップへのgankを決め、リー・シンを1stローテーションでピックした意味をまざまざと見せつけていくTSM。

一方ダブルキルで少し取り返したもののプッシュを続けたFLYはbotのファーストタワーを獲得し、midへとローテーション。
少し無理をしてmidのタワーへアプローチしたところをヴァルスとリー・シンの相手を挟みこむようなエンゲージから2キルを獲得。
自軍タワーを守りつつ相手のタワーを削ることに成功する。

FLYは徹底してmidの1stに対してプレッシャーをかけ続ける。しかしジャングル内の視界が取りきれないままのシージで中々うまく行かない。
TSMはそれをいなしながらリー・シンが今度はトップサイドの1v1に介入。これに反応したkennenとアイバーンがウルトを切ってまで捕まえにいくがうまくいかない。
リー・シンはアルティメットとブラストコーンをつかって窮地を脱出。
ここにリソースをかけてしまったFLYはTSMのmidプッシュを跳ね返すことが出来ない。
オリアナのショックウェーブはキレイに決まるものの続くスキルはなく、そのままmidの1stタワーを獲得するのはTSM。

とにかくleeの動きがすさまじい。botにフォーカスしてrenekとタワーを折りきった後は徒歩でリフトを縦断。
トップのタワートレードを図ったFLYに対してレネクトンのTPエンゲージ。あっというまにシンドラとリーシンが合流。トップレーンに5人が集まりTSMは4キルをゲット。

大きくリードを広げたTSMはさらに試合のテンポアップを図る。botduoがいるサイドにしっかりとワーディングをしてシンドラとレネクトンの間はリー・シンがカバーする形をつくる。
隙を見せればリー・シンがピックをし、対応してFLYが合流すれば別のオブジェクトを破壊する。

25分すぎ、ヴァルスが遠いにもかかわらず4人で強引にシージをし、そこから流れるように4キルを取られバロンまで失ってしまうTSMだが、バロンバフの時間を何とかしのぎ31分50秒。
またもSvenskerenの完璧なイニシエートから、ピールの得意な構成をもろともせずにadcであるアッシュをフォーカスし、キルすると、
そのままbotでソロプッシュをしていたBallsがリコールの判断を誤っているのを咎めてインヒビタータワーへとダイブ。

レネクトン・シンドラのロングレンジスタンコンボ(EとWのロングレンジスタンとQとEのコンボの組み合わせ)から2キルを追加してTSMはゲームエンドまでつなげた。

この試合、Pick/Banの段階からにキャリーさせようという意思が見え、実際にその期待に応えて見せたSvenskerenのパフォーマンスのすばらしさばかりが目立つ試合展開だった。

FLYとしてはbotレーンにしぼったP/BをしてWildturtleから得意チャンプを取り上げ、アイバーンがgankを決めてという形をつくれたものの、アッシュが存在感を発揮できるようになるまでの時間帯に、TSMの迅速なローテーションで崩されきってしまったというのが敗因だろう。

FLYは中盤、mid1stタワーへのシージを再三行っていたが、それを跳ね返し続けたTSMの粘り強さも特筆すべき点があった。
FLYとしてはこの試合を受けてSvenskerenを潰すか、Wildturtleを潰すか、あとがない第三ゲームで選択を迫られることとなってしまった。


game3



いかにHaiがリバーススイープの名手とはいえ(2-0から2-3での逆転勝利の事)、ここまでのTSMの戦いっぷりはかなり盤石でどこから崩していいのかわからないという感想を個人的には抱きながらB/Pが始まった。

ここでドラフトを変えてきたのはFLY。グレイブスに替えてシンドラをBan。
これには2つの狙いがあったと思われる。
1つ目はもちろんbjergsenのシンドラを恐れていて、これをBanすることでより安全にオリアナを先出しできるということ。

もう1点はあえてグレイブスをオープンにすることで、Svenskerenにグレイブスをつかませること。
リー・シンを使われて試合を動かされるよりは、ファームタイプのグレイブスを渡しつつ先ほどBanされたグラガスやカジックスのようなジャングラーを取って戦おうという意味合いだ。

TSMは特に動きを見せずに従来通りのB/P。相手の出方を伺う王者のBanといった様相。

3戦連続FPはアッシュ。
このまま相手のjgがグレイブスとなると一戦目とおなじような展開になりそうだが、アッシュはEで相手ジャングラーの位置をサーチ出来る分、こういったファームヘビーなジャングラーに対して有効なピックなのだ。

そしてもちろんTSMはグレイブスとルルをピック。
グレイブスはいま最も優先度の高いジャングラーであり、Moonの得意ピックでもあるため相手に渡す理由はないだろう。

返すローテでFLYはカ=ジックスとオリアナを取る。
オリアナはgame2に引き続き先出しとなったが、シンドラをBanした効果でこれといったカウンターはいない。

はパワースパイクが遅いチャンピオンなのでロームが得意なミッドレーナー、タリヤやアーリあたりが相手のピックとしては予想されるところ。

この段階でのジャングラーピックは第2試合を受けてのものだろう。やはりMoonにとってアイバーンはベストなチャンピオンではなかったようだ。

ここでミッドを取らないと選択肢を絞られてしまうTSMとしてはタリヤを取らざるをえない。
ただ彼女も非常に強力なローマーであり、Bjergsenが得意とするチャンピオンの一体。そこまでの不満はないピックといえるだろう。

2ndBANフェイズで面白かったのはTSM。

LemonNationに思ったようにプレイさせないという意図を強く感じるカルマBanを行ったのだ。
一般的にはカルマよりもザイラのほうが、ルル側としては戦いづらいとされている。
しかしザイラが取れるにもかかわらず2試合目でカルマを取ってきたLemonNationのカルマに対する自信、そしてgankがあったとはいえ先にタワーを失ったことを受けての決断だ。

ケネンに対するBanに関して現地のキャスターは驚いていたようだが、これはここまでのBanの流れを見ていれば割と納得だった。
カミール、ランブル、シェン、ケネンと4チャンプものBanがされているので、TSMはノーチラスをピックすることでトップレーンでの勝利を確実なものにできるのだ。

もちろんFLYもこのことに気付いてBANの手が止まる。しかし従来のプラン通りエズリアル、ルシアンのBanを貫くことにした。

これは結果論だが、ルシアンからBanしていれば、エズリアルをBanせずノーチラスをBanということもできたかもしれない。
Wildturtleにを渡すことにはなるが、ほどのレーンの強さはもちろんないのでいくらかマシだと思えるし、
残るトップレーナーはメタ的にはマオカイ、ポッピー、レネクトン。
TSMに後出しを渡すことにはなるが、FLYはを押さえておけば、ノーチラス対マオカイよりはマシなマッチアップを取れていたと思う。

案の定、4thPickでTSMはノーチラスを選択。これに対抗できるピックはマオカイかシンジドくらいしかない。
Ballsはここまで一度もシンジドをピックしておらず、当然マオカイを取るほかない。

ザイラ、ヴァルスと続くピックは自然な流れといった感じで、双方の構成が出そろった。

FLYの構成は集団戦を強く意識したピックになっている。マオカイやカ=ジックスがバックラインに圧力をかけ、相手が入ってきたらザイラのウルトでゾーニングする。
陣形が崩れたりバックラインに飛び込んだチャンピオンがフォーカスされれば、そこにアッシュやオリアナのアルティメットを叩き込むといった構成だ。

TSMは中盤にパワースパイクが集中しているチーム構成で、パワースパイクの遅いFLYとは対照的だ。
タリアのプッシュ力とグレイブスのファーム力を生かしてミッド周辺の視界を確保し、サイドレーンへのローム(Rなどで)を狙っていきたい構成といえるだろう。

TSM
ミッドゲームにパワースパイクを置いたダイブやソロレーナーのロームが得意な構成

FLY
バックラインに飛び込むチャンピオンに合わせて戦うチームファイト構成

さてゲームイン後はお互いが注文通りの展開で進めていく。
トップではノーチラスがリードを取りどんどんとレーンをプッシュしていく。ミッドレーンではタリヤがプッシュをし、グレイブスのファームを助ける。
ボットレーンではアッシュザイラ側がアドバンテージを持ち、ダメージ勝ちをしていった。
ボットでの2v2やミッドガンク成功で流れはFLY側に傾くかと思われた15分過ぎ、ゲームは大きな転換点を迎える。

ピック段階で予想されたTSMのボットレーンへの仕掛けに対し、ワードで視界を確保できていたFLYは戦うことを選択。
これが両チームの命運を分けることとなった。

マオカイ、ノーチラスともにTPで合流した集団戦は、両者ともにタンクとしての働きは十分だったものの、CC量の差が決定的だった。
ノーチラスの爆雷発射でカジックス、アッシュ、ザイラの3人がノックアップ。そこからのグレイブスのコラテラルダメージでFLYのは戦闘不能なほどのダメージを受けてしまった
一方、マオカイのノックアップはノーチラスとヴァルスをとらえるにとどまり、なんとかザイラがアルティメットをつなげるものの、ダメージを出せるチャンピオンが残っていなかった。

さらにミッドレーナー同士の1v1でタリヤがオリアナを完全に抑え込み、ウィーバーウォールで閉じ込めてからの2キル+ドラゴン獲得。
チーム構成的に中盤にパワースパイクがよっているTSMに対して、その強い時間帯に戦うことを選択してしまったFLYの判断ミスだったといえよう。

この劣勢と取り戻すべくトップレーンで4v3を作り、アッシュのクリスタルアローを起点にルルをピックアップして倒しきったFLYだったが、ここもTSMの寄りが早い。
Wildturtleの素早いからのアルティメットで反転、アルティメットでオリアナを倒しきると、タリヤ、グレイブスが次々に合流。
一連の戦いで3-1交換としてからすぐさまミッドにローテーション。
浮いた位置にいたマオカイを討ち取ってミッドのファーストタワーまでつなげて見せた。

この後もFLYの仕掛けに素早く反応し、次々とリードを広げていくTSM。
FLYとしてはオリアナやマオカイのパワースパイクを待つために、ここは仕掛け続けるべきではなく、しっかりと試合時間を引き延ばす動きを出来ていれば、という試合だった。

3-0でTSMが勝利。ファイナル進出を確定させた。


FLYは正直シーズン前はプレイオフどころかリーグに残るのも怪しいのではないかと予想していたので、セミファイナルまで進めたのは大健闘だったと思っている。
シーズン前半、他チームがチームとしての完成度が今一つの時期に勝利を荒稼ぎできたのは、流石天才コーラーhaiを擁するチームだな、と感心した。

この試合で見えた課題としてはBallsとMoonのチャンピオンプールの問題である。
もちろんHaundzerのカミールは脅威だが、世界的にはカミールにレネクトンを当てる対策が定着してきており、Ballsがレネクトンに自信を持てなかったところもドラフト全般に影響を与えていたのは間違いないだろう。
Moonに関してはリー・シンやエリスといったgankerをピックすることは遂になかった。
サマーシーズンではこの辺りをどう改善できるか楽しみにしたい。

TSMは無事勝利を収めた。

このシリーズの一番の功労者は間違いなくSvenskerenだろう。特に1,2試合目の試合の作り方は素晴らしかった。
bjergsen、hauntzerも安定したパフォーマンスを見せてくれた。

このチームの課題はやはりボットレーンだ。Wildturtleは再三ターゲットBanをされたとはえ、1試合目のルシアンと2、3試合目のヴァルスとで明らかにパフォーマンスの違いが見て取れた。
決勝で当たるC9はmidのJensenが非常に強く、これに対抗するためにもボットのP/B優先度は下げざるを得ない。

C9のSneakyがアッシュをPickしてきたときに、今日のようなパフォーマンスしか出せないようだと、TSMは大きなトラブルを抱えてしまうだろう。


というわけでNA LCSのセミファイナルの振り返りをBan/Pickを中心に振り返ってみた。
もう見た人もまだ見てない人も、この記事を読んだ後に見ていただくともっと楽しめるかと思う。