LoLドラフトの1場面を切り取る Worlds2017 Day6 RNG-SSG 編

October 18, 2017 by lol-cla管理人, Patch 7.18

グループステージの首位争いになったこの試合のドラフトを対談形式で振り返ります

LoLの醍醐味の1つであるドラフト。



『LoLドラフトの一場面を切り取る』は、そんなドラフトの1シーンを切り取り、ゲストの方と対談形式で様々な角度から検証、評価してみよう、というそんな企画です。
(そのまんまのタイトルですね)
ドラフトの面白さや深さ、見たり考えたりする楽しさを少しでも感じていただければと思います。

第1回はWorlds2017 Groupステージ Day6 Royal Never Giveup 対 Samsung Galaxyの1シーンを取り上げます。
お互いに4勝1敗同士で迎えたグループステージ最終戦、1位抜けを賭けた試合のドラフトを読み解いていきます。
試合の動画はこちら

切り取った1場面はこちらのシーン。SSGの4thピックです。


ゲストはコミュニティ大会の解説やチーム活動の経験もあるMerryday(@Merryday_lmn)さん、
聞き手はLoLCla管理人でLCKCSの解説者でもあるあかさん(@pokemon_red)でお送りします。
(以下敬称は略しています。ややこしくて申し訳ないんですが、「あかさん」がHNなので本文でもそうなっています)



Worlds2017のメタについて



あかさん


突然のお願いだったのに快く引き受けてくださりありがとうございます。早速ですが本題に移る前に前提になるWorldsのメタについて少しお伺いします。
Patch7.17でナーフを受けたのにも関わらず、アーデントセンサーサポートがメタの中心ですね

Merryday


そうですね。ゲーム時間で11~13分くらいまでにサポートがアーデントセンサーをビルドするというメタになっています。
アーデントセンサーを持っている側と持っていない側がダメージトレードをした場合、どうやっても持っている側が有利になってしまうんですよね。
アーデントセンサーがない側としては、長いトレードになると不利になってしまうので相手をバーストアウトしてしまう他ないのですが、いまのジャングルはセジュアニやジャーバンIVといった集団戦に重きを置いたチャンピオンが中心で、リー・シンやエリスといったダメージの高いチャンピオンがあまりピックされていません。
そういった環境も相まって、お互いにアーデントセンサーサポートを持ち合って、ADCは状況に応じてレリックシールドを持ってまでビルドを急ぐといったメタになっています。

あかさん


ジャングラーに関してはお話に上がったセジュアニとジャーバンIVが抜けている印象です。それぞれどういった点が強力なのでしょうか。

Merryday


セジュアニに関してはファーム速度、中盤までのダメージ、Q+フラッシュ+Rのエンゲージなどすべてが高性能です。
タンクアップデートで新しくなったEで序盤のガンクもそれほど弱くないですし、スカトルを確保するスピードが速いのもチーム戦では地味に大きいですね。
(注:リフトスカトルはCCを受けると防御力が低下する。Eとスマイトを使うことでセジュアニは素早くスカトルを確保することが出来る)

ジャーバンIVに関してはコアアイテムであるシンダーハルク、騎士の誓いがナーフされ、Wのゴールデンイージスも弱くなったので、トップで頻繁にピックされていたころと比べるとパワーを感じませんが、シェンやガリオ、オリアナといったチャンピオンとのシナジーが
強力で、依然としてトップでも使えると、ドラフト的に便利なチャンピオンになっています。

あかさん


なるほど。メタの話は興味深いのでずっと聞いていたいのですが、本題と少しずれてしまうので、あとソロレーナーでメタの中心だと感じているチャンピオンなどがあれば挙げていただきたいのですが。

Merryday


ジャーバンIVの話でもあがったシェンとガリオですね。
シェンに関してはレイトゲームキャリーを守る、いわゆるプロテクトADC構成に非常にマッチしたチャンピオンだと思います。
またトップレーンに来るチャンピオン、特にマオカイやチョ=ガスといったタンクに対してレーンで後れを取らないといった面でも評価できますね。

あかさん


シェンに関しては私も相手にピックさせるメリットを感じないんですよね。
いまのドラフトは最初の3ピックでジャングル、ADC、サポートを取って後半2ピックでトップとミッドを取ることが多いので、シェンは2ndバンフェイズで消されるシーンを本当によく見かけます。
ところが今回の局面ではシェンがオープンなんですよね。だから取り上げてみたんですが。

Merryday


ガリオに関しては単純にチャンピオンパワーが高いですね。トップでもミッドでも使えるフレキシビリティもありますし、プッシュ能力とマップカバー能力が高すぎます。

あかさん


中盤までのCC、スキルのベースダメージの高さでミッドレーンにタンクをピックするデメリットというのがほとんど感じられないんですよね。
Gigabyte Marinesのスワップ戦術でもガリオが要になっていました。
(詳しくはこちらの記事をどうぞ)

Merryday


はい。それもあってガリオのバン率は上がってきています。これからノックアウトステージではほとんどバンされてしまうかもしれませんね。




SSGの4thピックの場面を切り取る



あかさん


では、メタの話はこの辺りにして本題に移っていきましょう。



SSGの4thピックのシーンですね。SSGが残したのはトップとミッド、RNGはガリオがどちらにいくかわからないですが、ソロレーナーとジャングルが残っています。
オープンになっているメタチャンピオンは以下の通りです。

トップ:

ミッド:

ジャングル:

Merryday


ここで実際のゲームではSSGはシンドラを取ったんですが、これはあまり良くありませんでした。
私の考えでは、無難に行くならコーキ。少し攻めたピックならジェイスかガングプランクが良かったのではないでしょうか。


実際のピックはこちら

あかさん


ガングプランク!確かに面白いですね。個別に理由をお聞きします。まずコーキが第一候補ですか。

Merryday


はい。コーキは中盤にパワースパイクが来るミッドレーナーなのでガリオと渡り合うことが十分に可能です。さらに相手のサポートがジャンナな点。
ジャンナというチャンピオンは集団戦をしかけても1回アルティメットスキルのモンスーンでリセットすることが出来るんですよね。なのでポークが出来るチャンピオンをピックしたほうが戦いやすいんです。

あかさん


ジャンナは回復能力が高いわけではないですから、バロンやタワー付近のにらみ合いの状況でポーク力のあるコーキは活きそうですね。後半はDPSも出せるので、ガリオに対しても十分戦えそうですし。

Merryday


そうですね。他にもDPS系だとカシオペアがいますが、ガリオのロームを止めるほどのパワーはないですし、ライズやタリヤといったロームも出来るDPSメイジはすでに2ndバンフェイズで消えていますから。
コーキはパッケージがあるタイミングならガリオのロームにも対応できますし、一番良いピックだったのかなと思います。
ジェイス、ガングプランクに関してはガリオをトップ、ミッドどちらに回しても対応できるので相手の出方を見ることが出来るピックですね。

あかさん


ガングプランクはマオカイ、チョ=ガス、シェン相手に出して行けるチャンピオンなので実はメタにマッチしてると思うんですよね。Worldsでもピックされないかなーと密かに期待していたんですが。
私はこの場面でマルザハールもいいんじゃないかなって思いました。

Merryday


ガリオに対してのマルザハールもすごく良いピックですよね。Worldsではまだ数えるほどしかピックされてないのが意外です。もっと見てみたいですね。
(注:マルザハールはロームやジャングル内の小競り合いを得意とするガリオに対してピックアップ能力で対抗できる)

あかさん


実際のピックはシンドラだったわけですが、これはなぜ良くないとお考えですか?

Merryday


シンドラの強みは高いバーストの圧力によってレーンコントロールを握れる点なんですが、ここでガリオというのが大きな問題になってきます。

ガリオ自身、アンチメイジタンクなので落とされませんし、仮にシンドラがロームしたりジャングル内で少数戦を行っても、狙われた味方に英雄降臨でバフをかけて守ることもできます。
なので、シンドラの強さが活かせる展開になりづらいんですよね。
実際のゲームでもトリスターナやジャンナには届かない、ガリオにはアルティメットを打っても落ちない、ランブルにはゾーニャの砂時計で防がれるとかなり苦労していました。

あかさん


私も残っているチャンピオンの中で一番シンドラがダメな選択だったんじゃないかって思います。
なぜここでシンドラだったのか自分なりに考えたんですが、もしかしたらSSGはRNGがエズリアルとマオカイかシェンあたりを取ってくる想定だったのかなって。
2tank2adc構成ならどちらかのマークスマンにR打ってバーストできる、みたいな。

Merryday


あー、それはあるかもしれませんね。ただここでシンドラをSSGが取ったということでRNGはランブルをトップに選択しました。
SSGのキャリーはシンドラとヴァルスという機動力に乏しいチャンピオンたちですからランブルのイコライザーがかなり刺さります。
さらにランブル・ガリオというトップ・ミッドのラインが非常に強力な組み合わせです。
共にもプッシュ・レーニング性能が高いチャンピオン、かつダイブを得意としていますし、アビサルマスクでランブルの火力を底上げ出来ます。

あかさん


RNGが最後のピースにリー・シンを選んだのはどんな理由だと思われますか。

Merryday


ランブル・ガリオを取れたので、RNGとしてはレベル6以降のタワーダイブがチームの狙いになってきます。
なのでジャングラーに求められるのはマップコントロール能力なんですよね。そういう意味ではSSGのレク=サイへのバンは非常に効果的でした。
残っている中ではカ=ジックス、エズリアル、リー・シンあたりが候補なんですが、リー・シンにした理由はCCの有無じゃないかなと思います。
アルティメットの龍の怒りはディスエンゲージ、エンゲージ共に使えますからね。

あかさん


CCがある中だとグラガスがオープンですが、セジュアニ相手にグラガスだとジャングルのコントロールを取るのは難しいですよね。
そして最後にSSGはカミールを選択しました。やや攻めたピックですが、どう評価されますか?

Merryday


うーん、あまりいいピックではなかったのかな、と思います。SSGの構成は一見悪くないんです。
ヴァルス・ルル、シンドラのレーンコントロール能力の高さやキャッチ能力を活かしてテンポを取り、カミールが育つのを待つというチーム構成ですね。

ただ相手がガリオ・ランブルということで前提条件となる序・中盤でのテンポが取れないんです。
それにカミールをピックしても集団戦で活躍できるビジョンが湧かないんですよね。ジャンナ、リー・シン、トリスターナと飛び込んでくるチャンピオンに対するカウンターがRNG側には揃っているので。
もしスプリットプッシャーをピックするにしてもフィオラのようなもっと1v1、スプリットプッシュに特化したチャンピオンか、ナーのような集団戦で正面から戦えるチャンピオンのほうがよかったでしょう。
ファイターだと序盤のレーニングでリー・シンからのプレッシャーがきついと考えるのであれば、マオカイのような無難なタンクで構成を整えるというのも悪くなかったと思います。
カミールはやや尖ったピックでしたが、悪いほうに尖ってしまったのかなというのが私の意見ですね。

あかさん


まとめるとSSGとしてはコーキ、ナーというピックのほうが、シンドラ、カミールという実際のピックよりは良かったのでは、ということですね。
確かにコーキのポーク性能はナーというチャンピオンとシナジーがありますし、実際のピックよりもぐっとシナジーを感じますね。
(注:ナーは怒りゲージの管理があるため、自分たちが戦いたくない時間帯をポークでごまかせるコーキとナーの組み合わせは理にかなっている)




両チームのドラフト評価と価値観の違い




ここでMerrydayさんに実際のピックをそれぞれ評価してもらいました。

Merryday


総合するとRNGのピックは90~95点くらい。非常に良いドラフトだったといえるでしょう。
それに対しSSGは・・・50点くらいですかね。特にシンドラが良くなかったように感じます。本題からはちょっと外れるんですがRNGの1stピックのトリスターナと、3rdピックのガリオがかなり良いピックでした。

あかさん


ガリオがオープンだったこともあって、RNGはジャングラーよりもガリオを優先したんですよね。1stバンフェイズでADCが4枚もバンされるという変わったドラフトだったことも影響していますね。

Merryday


残ったメタのADCはトリスターナ、ヴァルス、ケイトリンなんですが、
ケイトリンは個人的にはザヤ、トゥイッチに対して後出しするチャンピオンなので、ちょっとここでは取りづらいです。
RNGはトリスターナを取りました。トリスターナとヴァルスは2コアの時点でのパワーでトリスが上回っているので、ガリオの強い時間帯のうちにゲームを終わらせるというプランにも合致しています。
返しのSSGのピックなのですが、まずルルはほぼ確定です。
(注:ルルは雷帝の号令を持つことでジャンナに対してレーンで優位を作れる。トリスターナとヴァルスは中盤のパワースパイクでややトリスターナが上回っており、ボットレーンで相手に先行を許すことはSSGからは容認できなかった)


あかさん


残る1つでガリオを取るかセジュアニを取るかだったわけですが、SSGはジャングラーであるセジュアニを優先しました。
次のローテーションの3rdピックでADCであるヴァルスを取ったので、SSGとしてはジャングル、サポート、ADCを確保する定跡に従った形になりましたね。
一方でRNGは3rdピックで定跡を崩し、ミッド・トップのフレックスピックであるガリオを取りました。

Merryday


このドラフトを見るとRNGはセジュアニとジャーバンIV以外のメタジャングラーはほぼ横並びの評価をしていることが読み取れますね。
SSGはニダリーとレク=サイをバンしましたが、リー・シンやカ=ジックスでも十分に役割を果たせると思っていたようです。

あかさん


トップメタ2体以外のジャングラーに対しての評価が低かったことが3rdピックのガリオを生んだわけですね。
逆にSSGとしてはレク=サイ、ニダリーといった3番手以下のジャングラーをRNGより高く評価していると。
しかし、こうしてみるとシンドラのピックが不味かったことはさておき、1~3番目のピックまででRNGが思惑通りに進めているようにも感じますね。
SSGとしては1stバンフェイズが悪かったのでしょうか。

Merryday


そうですね。最後にコグ=マウをバンしたのが少し良くなかったのかもしれません。かわりにガリオをバンするとか。
ADCが4枚消えたのを見て即座にトリスターナを確保したのがRNGのファインプレーだったと思います。
その後の3rdでガリオを取った時点で6割方RNGの勝ち、SSGがシンドラ取った時点でRNGのほぼ勝ちという印象のドラフトでしたね。

あかさん


LoLはゲームが始まる前から戦いが始まっているとは言いますが、この試合は本当に両チームのドラフトが明暗を分けた一戦でした。
今日は長時間お話していただき、ありがとうございました。

Merryday


ありがとうございました。



最後にもう一度。
突然にお願いだったのに快く記事作成に協力してくださったMerrydayさんのツイッター(@Merryday_lmn)です。
おかげで面白い記事になったかと思います。
本当にありがとうございました。

好評だったら第2弾もあると思うので、よかったらシェアしていただけるとありがたいです。