【Ban/Pickについて】和葉@のLoLを見るのがちょっと面白くなる話#3

October 28, 2017 by 和葉@, Patch 7.18

実際のBan/Pickとその時のコミュニケーションと時間の使い方について
皆さんこんにちは。和葉@です。
前回の記事が思った以上に多くの方に見ていただけてとても嬉しかったです。導入として試合までに用意する流れが伝わっていれば幸いです。
今回は実際にBan/Pickの場所にいる時にどんな事を考えて、どんな風にコミュニケーションを取って、どういう時間を使っていけばいいのかを書きます。
最初に言いますが、あくまで僕個人の考えなので他のチームも同じ考えしてるとかそういう事はありません


ACS Finalから見るそれぞれのチームに求められた動き



ACS Final

これ、実は両チームにちゃんと確認取ってやってないのでこの記事が数日後に違うものに変わっていたら察してください。
この前行われたACS Finalの1戦目を紐解いていきます。Bo3やBo5の面白さは初戦とそれ以降で試合の組み立て方が大きく異なる事ですが、今回はそうならなかったのでこの1戦から言える事を伝えます。



Game1ですが、まずお互いにものすごいターゲットバンの応酬でした。
このPatchは7.18でWCSでも使われているパッチです。当然、ADCが非常に強力ですがお互いに止めたADCはコグ=マウの1体だけ。さらにはアーデントセンサーと相性の良いSupportのBanもラカンの1体のみです。
こうなった過程として、東京アニメ・声優専門学校側の3つのBanが全て前回の予選で戦ったvs東大戦のチャンピオンになっているという事です。
さらには、東京大学側は予選の時とほぼBanが変わらず東アニが一番得意としているオリアナと東アニ側のSupportが得意とするエンゲージの要のラカン、アリスターの2体を止めています。
このファーストピックまでの中で、それぞれの陣営が思う事は以下のとおりです。


東アニ側


① 相手はメタに合ったチャンピオンをBanするのではなく、明確に東アニにされたくない事を潰すつもりでいる。(ラカンまでのBanを見て)
② (アリスターのBanを見て)相手は完全にエンゲージされる事と集団戦が強い構成を嫌っている。自分たちが取り上げるべき一番の最善は集団戦が得意な構成の要であるチャンピオンだ。
③ 自分たちでジャーヴァン4世、ガリオをBanしないのであれば相手が使えるならば絶対に取ってくる。それならばガリオさえ取れていれば相手が集団戦で勝つのは大変になる。

と僕は判断します。これは、以前紹介した赤側が有利になりやすい状態の一つで「OPを多く開けて相手よりも多く取り上げよう」という狙いの一つです。
特に赤側であれば、ラストピックの優位をいかしてカウンターを取りやすい。それであれば、OPを多く開けた方が自分たちが強い構成にしやすいからです。
それが2nd banで判明した(相手が最初からガリオを開ける可能性を考えている)時点で東アニ側が柔軟に発想を変える事が必要になっていました。
結果として、ヴァルスというピックは実は当初から予定していたものだったのですが一番のPickとは言えないものでしたね。これは、コグ=マウをPickしていても同じ事が言えました。
なにせ、相手にジャーヴァン4世とガリオを渡すことになるからです。


東大側


① まず、フィドルスティックスがBanされて一番簡単に勝てるパターンAが無くなったので、Midに次の候補を選んでもらう。
② ブラウムのBanで相手がアーデントセンサーに対する理解がそこまで高くないという認識を持った上でOPが多く開くことが確定する。
③ コグ=マウのBanまで見て相手はジャーヴァン4世を取るつもりの無いPickをする(赤側がジャーヴァン4世、コグ=マウと取れる事を一番嫌っている)と想定できるから、自分たちがジャーヴァン4世か強いジャングラー、カウンターできるレーンが確定する。
④ ヴァルスのファーストピックで相手がボットレーンを序盤から作りたい事がわかる。それなのに序中盤からプレッシャーの出しやすいジャーヴァン4世とガリオの組み合わせを明け渡してきたからには、ガリオがどのレーンに行っても勝てない組み合わせを作ってくるという想定をする。だから、自分たちはガリオのフレックスを最後まで継続しながらボットレーンだけは絶対に勝てるようにしなくてはいけなくなった。

これが、僕が東大側で考える事です。一番重要なのは、アリスターをBanするまでの間に相手がガリオを取るパターン、ジャーヴァン4世を取るパターン、それ以外の強力なチャンピオンを取るパターンの際に自分たちがどのレーンは勝てるレーンにして、カウンターされるレーンにはどの時間帯まで耐えてもらうのかを話せるかです。
30秒でそんな事話せない!と思った方は前回の記事を見てください。「ジャーヴァン4世が取られるパターン」と「ガリオを取られるパターン」と「それ以外を取られるパターン」は事前に話せる内容なので、確認するだけです。

つまり、この時行う話し合いは「実際に起きたBanを見て用意しようと思っていたものが使えなくなった時に何をするのが理想的なのかを話し合うだけ」です。
それなら30秒で行えますね?青側は30秒ですが赤側は最初に2体取るので実質60秒です。それだけあれば、事前に準備さえしていれば難しい事はありません。



(正直やりたかっただけです)


Ban/Pickの分かれ目となった大きな点



この試合のBan/Pickの全てが決まった瞬間だったラストピック前の東アニ側が構成を揃えたシーンです。
ここまで、東大はずっと序盤から仕掛ける構成から一転して序盤から仕掛ける構成をこの試合で組み立てました。Botはレーニングにおいて最強クラスのケイトリン&ザイラ。ジャーヴァン4世&ガリオというサイドレーンへのダイブがとても簡単な構成。この4体が揃っているだけでLv6以降のファイトは凶悪です。
それに対して、東アニ側に求められていた動きは集団戦におけるパフォーマンスでした。それは、ジャーヴァン4世とガリオに対抗する意味でもそうでしたが、自分たちが1st pick phaseで取った3体のチャンピオンからも言えました。
Lv6から強力なCCを持つヴァルスにFlashからのサイレンスでADCやSupportを潰せるチョ=ガス。そこにアーデントセンサーをあわせる事のできるルルがいます。
ここまで揃った中で2nd pick phaseで東アニ側がやらなければいけない事は集団戦をより強化しながら、自分たちが勝てる時間帯を作り出すことです。
早々にボットレーンの組み合わせを作った事でボットレーンはカウンターを取られてしまいました。さらにはガリオがトップ、ミッドどちらにもいける事でどちらもガリオが来て勝てる状態を作らなければいけませんでした。
そして東アニ側が選んだのはジェイスとレク=サイでした。
ここで一番いけなかった事はどちらも物理ダメージのチャンピオンを選択した事でした。
ADCのヴァルスは魔法ダメージを出す事はできますが、基本的には物理ダメージのチャンピオンです。チョ=ガスをPickした事でMidに物理ダメージを起きやすくはなりましたが、それならばJGは魔法ダメージでなければダメージが偏ります。
相手はすでにジャーヴァン4世とガリオという2体のタンクを用意しています。当然、自分たちはダメージのバランスを考えて構成を選択しないとキャリーのダメージが通らなくなってしまいます。
なので、この際に東アニ側が考えなければいけない選択肢は以下のものでした。

① チョ=ガスvsガリオはチョ=ガスが有利なレーン。それであれば、Midは絶対にチョ=ガスに勝てるチャンピオンを選択する。
② Midは物理ダメージを選択するならばJGは魔法ダメージ。魔法ダメージならば物理ダメージ。それで物理ダメージ×2、魔法ダメージ×2のダメージバランスが作れる。
③ 自分たちは集団戦が強い構成を作ろうとしている。それならば、CCとDisengageの要素は揃えなければいけない。
となります。つまり、ここでの選択の最適はMidがジェイスならばJGはザックかマオカイ、JGでレク=サイを取りたいのであればMidはタリヤかカシオペアになります。
ここでその選択が取れなかった事が試合中に大きく響くBan/Pickになりました。

対して、東大側としては非常に楽に試合を作り出す事が可能になりました。
相手のDisengageの手段は乏しく、こちらのEngage能力が上回っている。自分たちのADCは通常攻撃の射程が非常に長いケイトリンですから、自身のブリンクも合わせて簡単に引き撃ちができます。
ザイラがR-茨のゆりかごを発動できればより確実でしょう。
こうして、Ban/Pickがこの時点まで進んだ時に東アニ側が工夫をしなければいけない状態になりました。普通に考えれば東アニ側は終盤まで試合を運ばせてはいけない時限式の構成を選んだという事になります。
しかし、勝つ手段は残されています。寧ろ、その一点を突破するだけで実はこの試合は簡単に東アニ側に有利に運び試合の主導権は東アニ側が握る事になっていました。
次回はその話をしようと思います。


さいごに


今回は実際の試合を用いて、Ban/Pickの瞬間瞬間にどう考えているのがいいのかを書きました。
僕の考えでは、これを全員が行えるのがプロチームです。これができるようにならないと、Ban/Pickはスムーズに行えず結果として選手も何をすればいいのかわからない、ちぐはぐなPickが完成します。
BanとPickは10banになってから全てが30秒になり一見相当短くなったように思われがちです。実際10ban実装当初は多くのプロチームがBan/Pickミスをしました。
しかし、それは新しく変わったシステムに慣れていなかったチームとそれまでBan/Pickを全員で考える身体ができていなかったチームに起きてしまった事だと考えています。
この情報量は、一人が追いきれるものではなく追ってしまうと自然と早口になったり必要なコミュニケーションを取る時間が与えられません。
皆さんももし今後試合に出る事があったらどうか皆で考える癖を持ってみてください。最初は自分が出せるチャンピオンの候補を出して、相手のBanを見ながらPickを予想して提案する事で構いません。
徐々に今までのBan/Pickよりも楽しい時間が訪れるようになります。
今回もここまで記事を読んでくださりありがとうございました。次回も是非読んでいただけたら幸いです。
それでは。