LCKレビュー SKTはなぜ敗れたのか~KTの仕掛けたスウェインの罠~
かつての絶対王者がプレーオフ第2ラウンドで消えた。その原因を探る。
こんにちは。
MSIに向けて各地のプレーオフも佳境に差し掛かっています。
そんな中、世界最高峰のリーグと称される韓国LCKでは、昨年のMSI王者・SKTelecom T1(以下SKT)
がプレーオフ第2ラウンドで、KT Rolster(以下KT)に敗れ、2018 Spring の順位は4位に確定、MSIの出場権も逃しました。
確かに今年のSKTはシーズン中も苦しみました。
しかしプレーオフに入ってからがSKTの本領、実際去年の世界王者KSV(元SSG)をプレーオフ第1ラウンドで破っています。
勢いをつけて挑んだ第2ラウンド、待っていた宿敵KTは「SKT殺し」のため、とっておきの秘策を用意していました。
なんと、いまパッチ8.6のメタの中でぶっちぎりOPとされているスウェインを全試合オープンにしたのです。
今回はそのテレコムウォーズ(SKTとKTはどちらも携帯電話会社がオーナーなので、この両チームの一戦をこう呼びます)のドラフトと戦略について書いていこうと思います。
今回も長めになると思うので、おやつ片手にお楽しみください。
(ルルの帽子のなかにはお菓子がつまってるらしいです。知ってました?黒柳徹子さんみたいですね)
さて、実際の試合に入る前にいくつか、前提となる話をしておこうと思います。
1つ目はSKTの弱点についてです。
普段LCKをご覧になってる方ならもうお分かりでしょう。
今季のSKTはTopとJgに課題がありました。
それぞれ2人の選手を併用して、調子が良かったりメタにマッチしたチャンピオンプールを持った選手だったりを選んでスターティングメンバーに起用するというスタイルを採っていたのです。
ざっくりと説明すると、TopのUntara選手はナーやトランドルといったオフタンク系が得意、もう一人のTopであるThal選手はガングプランクやブラッドミアといったダメージディーラー系が得意なプレイヤーです。
Jgの2人はプールはやや似ているもののプレイスタイルが違います。
blank選手は視界のコントロールに長ける一方で、Blossom選手は積極的に仕掛けていくタイプのプレイヤーです。
パッチ8.6では征服者の登場もあってトップでファイター系のチャンピオンがピックしやすいメタになりました。
そのためSKTはTopではThal選手を起用、彼の1v1をサポートするためにJgはblank選手をスターティングメンバーにチョイスしました。
実際プレーオフ第1ラウンドでもこのTop/Jgの2人を起用し、カシオペア/トランドルといった面白い組み合わせを披露してKSVを撃破してきたわけですから、SKTのこの選択は間違っていなかったと思います。
ただ、ここでファイター/ディーラーメインのThal選手を起用したことでKTの戦術に嵌められることになるとは、僕はもちろん、SKTのkkoma監督すら気づけていなかったでしょう。
まずこの項で言っておきたいのは、単体のチャンピオンパワーだけでいえば、スウェインはパッチ8.6においてぶっちぎりの最強チャンピオンであるということです。
高い集団戦能力、キャッチ性能、視界管理能力がそれぞれOPで、どれだけレーンで負けていても集団戦で巻き返せるだけのポテンシャルを持っています。
さらにはTopでもMidでも運用できる柔軟性があり、これがより彼を対処しづらいチャンピオンたらしめています。
詳しくはこの記事で解説しているので合わせて読んでいただけると分かりやすいかと思います。(ダイレクトマーケティング)
ただその記事でも触れていますか、彼にもいくつかの弱点があります。
① イニシエート能力がないこと
② レベル9・11のパワースパイクまでは存在感がそこまで大きくないこと
①に関してはスキルの射程が全体的に短いこともあって、スウェイン自身からイニシエートを行って集団戦をしてしまうとフォーカスを受けて倒されてしまいます。
なので味方に出来れば最低でも1枚、できれば2枚のイニシエート手段がほしいチャンピオンになっています。
②はメインスキルであるQの死の手のレベルが5になり、スキルのクールダウンが2.5秒になるタイミングであるレベル9、固有能力の恐襲(引き寄せスキル)のクールダウンが6秒になるタイミングであるレベル11のことを指しています。
レベル9になるまではややウェーブクリアが弱く、レベル11になるまでは集団戦でOPと呼ばれるほどのパフォーマンスを発揮することが出来ません。
さて前提となる2つのお話を踏まえた上で、KTはどうやってスウェインを渡してこのシリーズを勝ち抜いたのでしょうか。
スウェイン対策にKTが用意した戦術は主に2つです。
1、Topスウェイン相手にはレーンでプレッシャーをかけられるチャンピオンをピックしてレーン戦でアルティメットのトレードを行う
2、Midスウェイン相手にはレーンでプッシュ出来るチャンピオンをピックして、相手のジャングラーを潰す
1が見られたのが1試合目、2が見られたのが2,3試合目なのでそれぞれのドラフトとゲームプランについてみていきましょう。
試合の動画はこちら
まず注目すべきは赤サイドのKTの1stBANです。
トランドル、ザック、セジュアニとすべてジャングルにBAN枠を割いています。
実はKTはこのシリーズ、すべての試合でこの3チャンピオンを1stBANフェイズで消しています。
この時点で1st tierのジャングラーはオラフとスカーナー、あとはカ=ジックス、ニダリーくらいしか残っていません。
ここでKTは1stローテーションでオラフを取り上げます。
blank選手のプレースタイル的に、、は選びにくく、との相性を考えるとエンゲージ出来るチャンピオンがほしいところです。
ここでblank選手は得意チャンピオンであるジャーバンIVをピック。
このあとgame3まで、3試合ともこのチャンピオンをプレイすることになります。
は今シーズン初めのころは1st tierのジャングラーだったのですが、ナーフによるファーム速度の低下、タンク性能がアイテム依存のチャンピオンだったが故、シンダーハルクのナーフが直撃したチャンピオンでもあります。(ジャックスも同時期に消えましたね。トラッカーナイフの削除もきつかったのですが)
そんなややメタから外れたチャンピオンではありますが、ピックせざるを得なかったといった感じでしょう。
SKTはタリヤ神として知られるUcal選手のにをぶつけるのを恐れてか、Top、Midという構成にしました。
Thal選手がメイジトップをピックして先週成功を収めていたことも少なからず影響していたでしょう。
しかしこの選択が裏目に出ます。
KTはアリスターを取り上げ、SKTに以外のエンゲージ手段を渡さなかったのです。
これでKTが気を付けるのはの決戦場とのテレポートだけを気を付けていればいいわけです。
KTの選択したオラフ・タリヤという構成はゲーム序中盤の圧力がとてつもなく高く、ミッドレーン周辺からサイドレーンへと2人で流れて、次々とサイドレーンのオブジェクトを狙っていくというピックになっています。
SKTのスウェイン・アジールは集団戦のポテンシャルこそ高いですが、KTとしては戦う機会を与えなければ問題ないわけです。
実際KTのTopであるSmeb選手はナーをピックして、に1v1を仕掛け続けます。
キルにこそつながりませんが、Thal選手のか、どちらかをかならずクールダウンにしておき、相手に集団戦を起こさせないように努めたわけです。
この作戦は成功し、ゲーム20分までに4000gほどのリードを築いたKTでしたが、mid周辺で無理なデワードを行ったDeft選手がキャッチされる形で集団戦がスタート。
このタイミングでの集団戦を想定していなかったKTはThal選手のバックラインへのを許してしまい、魔帝戴冠を発動したがKTのチャンピオンを次々と撃破、そのまま3キルを獲得し、バロン獲得までつなげます。
そこからはSKTが集団戦の圧力だけでオブジェクトを次々と獲得していき、逆転勝ちを収めました。
結果としてKTはこの試合を落としましたが、をつかませてエンゲージ要素を絞り、対面が張り付いてTPを阻止するという作戦はハマっており、SKTはこの後のトップ運用を諦めることになります。
エンゲージ要素との関係性は非常に重要で、もしBang選手がジンやアッシュ、カリスタといったエンゲージ能力もちのADCを用意していたら、このシリーズの結果は変わっていたかもしれません。
動画はこちら
game1の反省を踏まえて、SKTはカルマやガングプランクといったエンゲージを補助できるチャンピオンを構成に加えてきました。
結果エンゲージ性能は上がりましたが、1tankの集団戦構成、しかもそのタンクは現在それほど強くないと、強いところと弱いところがより強調されたピックになりました。
この弱点を突くために、KTは周到に練られた序盤戦術を展開します。
相手の赤バフにワードを置いてスタート位置を確認すると青バフスタートしているに対してレイトインベード。
このインベード自体は小さなウルフを1匹スティールするだけにとどまりますが、とではそもそものファーム速度に違いがあります。
リーシュなしのが苦労する中、はインベードで時間を浪費したのにも関わらず、それを上回るスピードで自軍キャンプをクリアしていきます。
さらにはトップのウェーブを押し付けたカミールが再びジャングルにインベードし、リコールを強要。徹底的にblank選手を追い詰めます。
そして仕上げはゲーム時間4分、レベル3になったオラフがSKTの赤バフ前でジャーバンを捕まえファーストブラッド。完全にプラン通りのFBになりました。
このジャングル内での戦いにWolf選手を介入させないように、KTはレベル1の段階でMataがイグナイトを使用し、強引にヘルスの優位を取りにいく下準備まで行う周到っぷりでした。
これによりScore選手は、赤バフとラプターのスティールにも成功。
終始blank選手に対し、2レベルのアドバンテージを握って試合を進めることが出来ました。
1tank構成であるSKTは集団戦を行うにはがイニシエートするしかないわけですが、レベル差、ファーム差をつけられたblank選手はKTのメンバーからフォーカスを受けるとあっという間にデッド、もしくは戦闘不能状態まで体力を削られてしまいます。
戦線を保つことができないSKTは自軍ベース内で1回いい集団戦の形が作れたものの、その1シーンを除いて終始なにも出来ずに敗戦。
最後の集団戦前のblank選手のスコアは1/7/5でチーム全体の70%のデスが彼のものでした。
動画はこちら
青側のKTがを開けてくることを予測して、ザヤ・ラカンコンビをオープンにして対抗してきたSKT。
しかしKTは意地でもを渡すといわんばかりにファーストピックにザヤを選択。
これが非常にうまい手で、SKTは返しにラカンとスウェインを絶対に取るように誘導しているわけです。
KTは返しで当然ジャングラーを押さえてくるわけですから、SKTの3rdピックもジャングラーで確定です。
ここでピックしないと2ndBANフェイズでさらにジャングラーがBANされてしまいます。
つまりKTはをファーストピックしただけで、相手のファーストローテーションのチャンピオンをすべて確定させてしまったわけです。
さてラストピックでレネクトンを選択したSKT。
先ほどが潰されてしまったことを踏まえて、オフタンクであるレネクトンをピックすることで、リスクを回避しようという狙いです。
さらに征服者の登場により、中盤以降も高いプレッシャーを保てるようになったでとの1v1からでも試合を動かせるように、というプランBを用意した意味もあります。
このようにトップレーンや自分たちの構成だけを見ればは悪いピックではないのですが、結論から言えば、これは悪いピックだったといえるでしょう。
まず、Midのマッチアップがgame1で避けたUcal対Fakerであること。
これによりミッドレーン周辺のコントロールを取るのは、まず間違いなくKTサイドになります。
Jgのマッチアップも対。
ファーム速度で圧倒的にが優位に立てるマッチアップです。
この2つの条件が重なると、どうなるかといえば、Ucal選手やScore選手がサイドレーンに自由に介入できるようになるわけです。
は1v1、あるいは2v2でに対して優位を作っていきたいわけですが、トップレーンへの介入しやすさは圧倒的にKTのほうが上回っています。
実際にこのゲームではが縦横無尽にロームを繰り返し、SKTのサイドレーンを破壊して回りました。
の圧力を背景にもに対して圧力をかけ続け、game2と同じように常にファーム差、レベル差をつくっていました。
ここで冒頭に話していたThal選手のチャンピオンプールが問題になってきます。
4thピックまでのSKTのラインナップを見てみると、、、、と集団戦に秀でたチャンピオンがずらりと並んでいます。
一方KTはサイドレーンへのプレッシャーでゲームを動かしてくることは明白です。
ならばTopにはサイオンやチョ=ガス、あるいはナーといった集団戦で活躍できるタンクをピックしたほうがよかったのではないでしょうか。
ここでレネクトンをピックせざるを得なかったThal選手のチャンピオンプールがこの試合では最後まで響いてしまったのかな、という印象です。
動画はこちら
正直に言ってこの試合のB/Pに関しては特に話すことはありません。
SKTはをオープンにするというKTの戦術に完全に屈して、ファーストピックという選択をしました。
これはSKTは今シーズン続けてきた、Faker・Bang両選手のコンフォートピックを押さえて、残りの3人はバランスを整えることに終始するといったドラフトに切り替えましたことを意味します。
実際、Thal選手はポッピー、blank選手はカ=ジックスと(おそらく)やりたくないチャンピオンをチームのために取り、
Wolf選手は相手のザヤラカンを消すために、ラカンを取る形になりました。
KTはカミール、グラガスというエンゲージ手段にそれをサポートできるシェン、エンゲージ構成にマッチした自ピール能力が高いザヤと、を活かすための完璧なチームコンプになっています。
B/Pから見えるこの試合の見どころは前半の8分間です。
Mata選手の使うシェンにアルティメットスキルである瞬身護法が入る8分前後までに、blank選手がScore選手やUcal選手に対してどれだけプレッシャーをかけてリードを作れるか、といった点ですね。
実際blank選手はレベル3でカウンタージャングルを試みますが、Score選手がグラガス、これも現在tierの低いジャングラーですが、を使って巧みにプレッシャーを回避するシーンが見られました。
その後も1v1を仕掛けられる場面でも悉くこれを交わし、しっかりと集団戦でのポテンシャルを出し切ったKTが順当に勝利、シリーズを3-1としてプレーオフ第3ラウンドへとコマをすすめることとなりました。
SKTにとっては本当に苦しいSpringSplitであり、それを象徴するかのようなシリーズになっていました。
Top、Jgの4選手はそれぞれが一長一短ですが、今年3強と呼ばれている、KT、AFs、KZの3チームの選手たちと比べると、正直見劣りしてしまうところはあります。
チームとしての練度をあげることでこれをカバーするのか、はたまた新しい選手の獲得を目指すのか、
SummerSplitのほうがWorldsへ進むためのサーキットポイントが多めに設定されているとはいえ、Worlds2018への出場にも黄色信号が灯った状態と言えるでしょう。
一方KTは意欲的なドラフトで不調のSKTを一蹴しました。
ただ正直言って、いまのSKTだからこそ狙った戦術であって、これを続く、準決勝、決勝で採用するか、というとどうでしょうね。難しいところです。
1,2試合目はかなり危険なミスが見られ、ここを修正できないと次にあたるAfreeca Freecs、決勝で待つ現・世界最強候補のKingzone DragonXに勝つのは難しいでしょう。
SKTに厳しいことを言ってしまったようですが、僕がLoLの競技シーンを見始めたときからのチャンピオンですし、それだけ思い入れが強いということでご容赦ください。
また面白いドラフトがあったら記事にしようと思います。
面白かったらシェア等していただけるとありがたいです。
MSIに向けて各地のプレーオフも佳境に差し掛かっています。
そんな中、世界最高峰のリーグと称される韓国LCKでは、昨年のMSI王者・SKTelecom T1(以下SKT)
がプレーオフ第2ラウンドで、KT Rolster(以下KT)に敗れ、2018 Spring の順位は4位に確定、MSIの出場権も逃しました。
確かに今年のSKTはシーズン中も苦しみました。
しかしプレーオフに入ってからがSKTの本領、実際去年の世界王者KSV(元SSG)をプレーオフ第1ラウンドで破っています。
勢いをつけて挑んだ第2ラウンド、待っていた宿敵KTは「SKT殺し」のため、とっておきの秘策を用意していました。
なんと、いまパッチ8.6のメタの中でぶっちぎりOPとされているスウェインを全試合オープンにしたのです。
今回はそのテレコムウォーズ(SKTとKTはどちらも携帯電話会社がオーナーなので、この両チームの一戦をこう呼びます)のドラフトと戦略について書いていこうと思います。
今回も長めになると思うので、おやつ片手にお楽しみください。
(ルルの帽子のなかにはお菓子がつまってるらしいです。知ってました?黒柳徹子さんみたいですね)
今シーズンのSKTの弱点
さて、実際の試合に入る前にいくつか、前提となる話をしておこうと思います。
1つ目はSKTの弱点についてです。
普段LCKをご覧になってる方ならもうお分かりでしょう。
今季のSKTはTopとJgに課題がありました。
それぞれ2人の選手を併用して、調子が良かったりメタにマッチしたチャンピオンプールを持った選手だったりを選んでスターティングメンバーに起用するというスタイルを採っていたのです。
ざっくりと説明すると、TopのUntara選手はナーやトランドルといったオフタンク系が得意、もう一人のTopであるThal選手はガングプランクやブラッドミアといったダメージディーラー系が得意なプレイヤーです。
Jgの2人はプールはやや似ているもののプレイスタイルが違います。
blank選手は視界のコントロールに長ける一方で、Blossom選手は積極的に仕掛けていくタイプのプレイヤーです。
パッチ8.6では征服者の登場もあってトップでファイター系のチャンピオンがピックしやすいメタになりました。
そのためSKTはTopではThal選手を起用、彼の1v1をサポートするためにJgはblank選手をスターティングメンバーにチョイスしました。
実際プレーオフ第1ラウンドでもこのTop/Jgの2人を起用し、カシオペア/トランドルといった面白い組み合わせを披露してKSVを撃破してきたわけですから、SKTのこの選択は間違っていなかったと思います。
ただ、ここでファイター/ディーラーメインのThal選手を起用したことでKTの戦術に嵌められることになるとは、僕はもちろん、SKTのkkoma監督すら気づけていなかったでしょう。
OPチャンプ・スウェインの弱点
まずこの項で言っておきたいのは、単体のチャンピオンパワーだけでいえば、スウェインはパッチ8.6においてぶっちぎりの最強チャンピオンであるということです。
高い集団戦能力、キャッチ性能、視界管理能力がそれぞれOPで、どれだけレーンで負けていても集団戦で巻き返せるだけのポテンシャルを持っています。
さらにはTopでもMidでも運用できる柔軟性があり、これがより彼を対処しづらいチャンピオンたらしめています。
詳しくはこの記事で解説しているので合わせて読んでいただけると分かりやすいかと思います。(ダイレクトマーケティング)
ただその記事でも触れていますか、彼にもいくつかの弱点があります。
① イニシエート能力がないこと
② レベル9・11のパワースパイクまでは存在感がそこまで大きくないこと
①に関してはスキルの射程が全体的に短いこともあって、スウェイン自身からイニシエートを行って集団戦をしてしまうとフォーカスを受けて倒されてしまいます。
なので味方に出来れば最低でも1枚、できれば2枚のイニシエート手段がほしいチャンピオンになっています。
②はメインスキルであるQの死の手のレベルが5になり、スキルのクールダウンが2.5秒になるタイミングであるレベル9、固有能力の恐襲(引き寄せスキル)のクールダウンが6秒になるタイミングであるレベル11のことを指しています。
レベル9になるまではややウェーブクリアが弱く、レベル11になるまでは集団戦でOPと呼ばれるほどのパフォーマンスを発揮することが出来ません。
無法のスウェインオープン、KTのドラフト戦術とは
さて前提となる2つのお話を踏まえた上で、KTはどうやってスウェインを渡してこのシリーズを勝ち抜いたのでしょうか。
スウェイン対策にKTが用意した戦術は主に2つです。
1、Topスウェイン相手にはレーンでプレッシャーをかけられるチャンピオンをピックしてレーン戦でアルティメットのトレードを行う
2、Midスウェイン相手にはレーンでプッシュ出来るチャンピオンをピックして、相手のジャングラーを潰す
1が見られたのが1試合目、2が見られたのが2,3試合目なのでそれぞれのドラフトとゲームプランについてみていきましょう。
game1
試合の動画はこちら
まず注目すべきは赤サイドのKTの1stBANです。
トランドル、ザック、セジュアニとすべてジャングルにBAN枠を割いています。
実はKTはこのシリーズ、すべての試合でこの3チャンピオンを1stBANフェイズで消しています。
この時点で1st tierのジャングラーはオラフとスカーナー、あとはカ=ジックス、ニダリーくらいしか残っていません。
ここでKTは1stローテーションでオラフを取り上げます。
blank選手のプレースタイル的に、、は選びにくく、との相性を考えるとエンゲージ出来るチャンピオンがほしいところです。
ここでblank選手は得意チャンピオンであるジャーバンIVをピック。
このあとgame3まで、3試合ともこのチャンピオンをプレイすることになります。
は今シーズン初めのころは1st tierのジャングラーだったのですが、ナーフによるファーム速度の低下、タンク性能がアイテム依存のチャンピオンだったが故、シンダーハルクのナーフが直撃したチャンピオンでもあります。(ジャックスも同時期に消えましたね。トラッカーナイフの削除もきつかったのですが)
そんなややメタから外れたチャンピオンではありますが、ピックせざるを得なかったといった感じでしょう。
SKTはタリヤ神として知られるUcal選手のにをぶつけるのを恐れてか、Top、Midという構成にしました。
Thal選手がメイジトップをピックして先週成功を収めていたことも少なからず影響していたでしょう。
しかしこの選択が裏目に出ます。
KTはアリスターを取り上げ、SKTに以外のエンゲージ手段を渡さなかったのです。
これでKTが気を付けるのはの決戦場とのテレポートだけを気を付けていればいいわけです。
KTの選択したオラフ・タリヤという構成はゲーム序中盤の圧力がとてつもなく高く、ミッドレーン周辺からサイドレーンへと2人で流れて、次々とサイドレーンのオブジェクトを狙っていくというピックになっています。
SKTのスウェイン・アジールは集団戦のポテンシャルこそ高いですが、KTとしては戦う機会を与えなければ問題ないわけです。
実際KTのTopであるSmeb選手はナーをピックして、に1v1を仕掛け続けます。
キルにこそつながりませんが、Thal選手のか、どちらかをかならずクールダウンにしておき、相手に集団戦を起こさせないように努めたわけです。
この作戦は成功し、ゲーム20分までに4000gほどのリードを築いたKTでしたが、mid周辺で無理なデワードを行ったDeft選手がキャッチされる形で集団戦がスタート。
このタイミングでの集団戦を想定していなかったKTはThal選手のバックラインへのを許してしまい、魔帝戴冠を発動したがKTのチャンピオンを次々と撃破、そのまま3キルを獲得し、バロン獲得までつなげます。
そこからはSKTが集団戦の圧力だけでオブジェクトを次々と獲得していき、逆転勝ちを収めました。
結果としてKTはこの試合を落としましたが、をつかませてエンゲージ要素を絞り、対面が張り付いてTPを阻止するという作戦はハマっており、SKTはこの後のトップ運用を諦めることになります。
エンゲージ要素との関係性は非常に重要で、もしBang選手がジンやアッシュ、カリスタといったエンゲージ能力もちのADCを用意していたら、このシリーズの結果は変わっていたかもしれません。
game2
動画はこちら
game1の反省を踏まえて、SKTはカルマやガングプランクといったエンゲージを補助できるチャンピオンを構成に加えてきました。
結果エンゲージ性能は上がりましたが、1tankの集団戦構成、しかもそのタンクは現在それほど強くないと、強いところと弱いところがより強調されたピックになりました。
この弱点を突くために、KTは周到に練られた序盤戦術を展開します。
相手の赤バフにワードを置いてスタート位置を確認すると青バフスタートしているに対してレイトインベード。
このインベード自体は小さなウルフを1匹スティールするだけにとどまりますが、とではそもそものファーム速度に違いがあります。
リーシュなしのが苦労する中、はインベードで時間を浪費したのにも関わらず、それを上回るスピードで自軍キャンプをクリアしていきます。
さらにはトップのウェーブを押し付けたカミールが再びジャングルにインベードし、リコールを強要。徹底的にblank選手を追い詰めます。
そして仕上げはゲーム時間4分、レベル3になったオラフがSKTの赤バフ前でジャーバンを捕まえファーストブラッド。完全にプラン通りのFBになりました。
このジャングル内での戦いにWolf選手を介入させないように、KTはレベル1の段階でMataがイグナイトを使用し、強引にヘルスの優位を取りにいく下準備まで行う周到っぷりでした。
これによりScore選手は、赤バフとラプターのスティールにも成功。
終始blank選手に対し、2レベルのアドバンテージを握って試合を進めることが出来ました。
1tank構成であるSKTは集団戦を行うにはがイニシエートするしかないわけですが、レベル差、ファーム差をつけられたblank選手はKTのメンバーからフォーカスを受けるとあっという間にデッド、もしくは戦闘不能状態まで体力を削られてしまいます。
戦線を保つことができないSKTは自軍ベース内で1回いい集団戦の形が作れたものの、その1シーンを除いて終始なにも出来ずに敗戦。
最後の集団戦前のblank選手のスコアは1/7/5でチーム全体の70%のデスが彼のものでした。
game3
動画はこちら
青側のKTがを開けてくることを予測して、ザヤ・ラカンコンビをオープンにして対抗してきたSKT。
しかしKTは意地でもを渡すといわんばかりにファーストピックにザヤを選択。
これが非常にうまい手で、SKTは返しにラカンとスウェインを絶対に取るように誘導しているわけです。
KTは返しで当然ジャングラーを押さえてくるわけですから、SKTの3rdピックもジャングラーで確定です。
ここでピックしないと2ndBANフェイズでさらにジャングラーがBANされてしまいます。
つまりKTはをファーストピックしただけで、相手のファーストローテーションのチャンピオンをすべて確定させてしまったわけです。
さてラストピックでレネクトンを選択したSKT。
先ほどが潰されてしまったことを踏まえて、オフタンクであるレネクトンをピックすることで、リスクを回避しようという狙いです。
さらに征服者の登場により、中盤以降も高いプレッシャーを保てるようになったでとの1v1からでも試合を動かせるように、というプランBを用意した意味もあります。
このようにトップレーンや自分たちの構成だけを見ればは悪いピックではないのですが、結論から言えば、これは悪いピックだったといえるでしょう。
まず、Midのマッチアップがgame1で避けたUcal対Fakerであること。
これによりミッドレーン周辺のコントロールを取るのは、まず間違いなくKTサイドになります。
Jgのマッチアップも対。
ファーム速度で圧倒的にが優位に立てるマッチアップです。
この2つの条件が重なると、どうなるかといえば、Ucal選手やScore選手がサイドレーンに自由に介入できるようになるわけです。
は1v1、あるいは2v2でに対して優位を作っていきたいわけですが、トップレーンへの介入しやすさは圧倒的にKTのほうが上回っています。
実際にこのゲームではが縦横無尽にロームを繰り返し、SKTのサイドレーンを破壊して回りました。
の圧力を背景にもに対して圧力をかけ続け、game2と同じように常にファーム差、レベル差をつくっていました。
ここで冒頭に話していたThal選手のチャンピオンプールが問題になってきます。
4thピックまでのSKTのラインナップを見てみると、、、、と集団戦に秀でたチャンピオンがずらりと並んでいます。
一方KTはサイドレーンへのプレッシャーでゲームを動かしてくることは明白です。
ならばTopにはサイオンやチョ=ガス、あるいはナーといった集団戦で活躍できるタンクをピックしたほうがよかったのではないでしょうか。
ここでレネクトンをピックせざるを得なかったThal選手のチャンピオンプールがこの試合では最後まで響いてしまったのかな、という印象です。
game4
動画はこちら
正直に言ってこの試合のB/Pに関しては特に話すことはありません。
SKTはをオープンにするというKTの戦術に完全に屈して、ファーストピックという選択をしました。
これはSKTは今シーズン続けてきた、Faker・Bang両選手のコンフォートピックを押さえて、残りの3人はバランスを整えることに終始するといったドラフトに切り替えましたことを意味します。
実際、Thal選手はポッピー、blank選手はカ=ジックスと(おそらく)やりたくないチャンピオンをチームのために取り、
Wolf選手は相手のザヤラカンを消すために、ラカンを取る形になりました。
KTはカミール、グラガスというエンゲージ手段にそれをサポートできるシェン、エンゲージ構成にマッチした自ピール能力が高いザヤと、を活かすための完璧なチームコンプになっています。
B/Pから見えるこの試合の見どころは前半の8分間です。
Mata選手の使うシェンにアルティメットスキルである瞬身護法が入る8分前後までに、blank選手がScore選手やUcal選手に対してどれだけプレッシャーをかけてリードを作れるか、といった点ですね。
実際blank選手はレベル3でカウンタージャングルを試みますが、Score選手がグラガス、これも現在tierの低いジャングラーですが、を使って巧みにプレッシャーを回避するシーンが見られました。
その後も1v1を仕掛けられる場面でも悉くこれを交わし、しっかりと集団戦でのポテンシャルを出し切ったKTが順当に勝利、シリーズを3-1としてプレーオフ第3ラウンドへとコマをすすめることとなりました。
おわりに
SKTにとっては本当に苦しいSpringSplitであり、それを象徴するかのようなシリーズになっていました。
Top、Jgの4選手はそれぞれが一長一短ですが、今年3強と呼ばれている、KT、AFs、KZの3チームの選手たちと比べると、正直見劣りしてしまうところはあります。
チームとしての練度をあげることでこれをカバーするのか、はたまた新しい選手の獲得を目指すのか、
SummerSplitのほうがWorldsへ進むためのサーキットポイントが多めに設定されているとはいえ、Worlds2018への出場にも黄色信号が灯った状態と言えるでしょう。
一方KTは意欲的なドラフトで不調のSKTを一蹴しました。
ただ正直言って、いまのSKTだからこそ狙った戦術であって、これを続く、準決勝、決勝で採用するか、というとどうでしょうね。難しいところです。
1,2試合目はかなり危険なミスが見られ、ここを修正できないと次にあたるAfreeca Freecs、決勝で待つ現・世界最強候補のKingzone DragonXに勝つのは難しいでしょう。
SKTに厳しいことを言ってしまったようですが、僕がLoLの競技シーンを見始めたときからのチャンピオンですし、それだけ思い入れが強いということでご容赦ください。
また面白いドラフトがあったら記事にしようと思います。
面白かったらシェア等していただけるとありがたいです。
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