【LPL 2019】OMGの修正力をドラフトから紐解く
長いシーズンを戦い抜くうえで重要な修正力。OMGが初戦の敗北から得たものとは
こんにちは。Merrydayです。
各地域のSpring Splitが開幕し、身体が足りないという方も多いのではないでしょうか。
以前から「フルダイブVRを使えば、眼精疲労は減るんじゃないか。実現はよ」などと考えているのですが、実際のところはどうなんでしょうね。
さて、今回は中国1部リーグ「LPL」からOh My God(以下、OMG)の修正力について、チーム構成を中心に解説しようと思います。
修正力と一口に言っても色々あります。今回は、初戦の敗北を受けてOMGがどのような戦略を立てて次の試合に臨んだのか、という観点から見ていきます。
まず、前提として初戦の結果を見ていきましょう。
OMGが相対したのは、昨年の世界王者Invictus Gaming(以下、iG)でした。
前述した通り、OMGはこのマッチを0-2で落とします。
<お互いのチーム構成>
【Game1】
OMG:
iG:
【Game2】
OMG:
iG:
OMGの構成には、次のような一貫性があります。
①ジャングル・ミッドのラインで序盤を支える
②ボットにはスケールの優れたキャリーとピールサポートを置く
③トップはキャリータイプのファイターを選択
彼らがこの試合に向けて準備した、最も勝率の高い方向性だったということでしょう。
実際、OMGの試合内容はそこまで悪くありませんでした。
Game1では、ガンクでミッドの主導権を握り、そこからサイドへと展開する動き。Game2では、Lv1で相手のボットを瀕死に追い込み、トップが2度のソロキルを決めるという立ち上がり。
2試合とも、25分まではほとんどゴールドの差がなかったのです。
しかし、結果は敗北。勝敗を大きく分けたのは、バロンの判断と25分以降の集団戦でした。
ここで、OMG各選手のDPM(1分あたりの敵チャンピオンへのダメージ)を見てみましょう。(※参考:Games of Ledends)
Ale選手:714 / 928(Game1 / Game2)
l3est16選手:465 / 386
icon選手:726 / 259
Chelly選手:625 / 498
Five選手:136 / 257
トップのAle選手が凄まじい数字を叩き出しています。Week1が終わった段階で、彼の平均DPMは全プレイヤー中1位でした。
また、ミッドのicon選手が、Game1ではAle選手以上のDPMを記録しています。Game2で使用したは、元々そんなにDPMが伸びるチャンピオンではありませんし、対という不利なマッチアップでした。
ボットのChelly選手は、可もなく不可もなくといったところです。
iG戦の5日後、OMGはホームの成都でBLGを迎え撃ちます。
OMGはこの試合に向けて、どのような戦略を立てたのでしょうか。
まずは各ゲームのドラフトから見ていきましょう。
<Game1>【動画】
まず、OMGはをピックしました。この時点でOMGは、ボット・サポートでの運用をほぼ決めていたように見えます。これについては後ほど詳しく説明します。
しかし、BLGサイドから見た場合はどうでしょうか。可能性として頭の中にあったとしても、はジャングルと考えるのが普通ですし、はフレックスピックです。
次に、BLGのを見て、OMGはを選択します。がピックされたことによって、がボットの可能性はありません。よって、トップとミッドにかが来るということが分かり、ここでを出してもリスクは高くないという判断に見えます。
最終的に両チームの構成はこうなりました。
OMG:
BLG:
<Game2>【動画】
BLGがをBANしたため、がオープンとなりファーストピック。それに対してと返したOMG。
BLGはが来ることを予測してカウンターの、そしてOMGが取らなかったを押さえました。
すると、OMGはまたしてもをピックします。
ここから推測されるのは、「トップとミッドのフレックスピックであるに対しては、とにかくを当てる」というのがOMGの出した結論だったということです。
ミッドのicon選手も前シーズンを使用していますし、スワップも視野に入れていたかもしれません。
そして、BLGは当然のようにをBANします。という超強力なレーニング性能を有したボットレーンの勝利を、揺るぎないものにするためです。しかし、これさえもOMGの思惑通りでした。これについても後述します。
両チームの構成です。
OMG:
BLG:
ここで、分かりやすいようにOMGの構成を並べてみます。
<各ゲームにおけるOMGのチーム構成>
Game1:
Game2:
今回も、OMGの構成には共通項があります。
①トップとミッドにキャリータイプのチャンピオンを使わせる
②キャッチやディスエンゲージ能力に優れたチャンピオンを複数用意する
③ボットレーンにユーティリティの役割を持たせる
特筆すべきは③ですが、順番に見ていきましょう。
①:iG戦の結果を受け、Ale選手には引き続きキャリータイプのファイターを、icon選手には得意なメイジを渡し、チームスタイルを「ソロレーンキャリー軸」に組み立て直しました。を取らせてを当てるというのも、この戦略をより確実にするため仕掛けたものでしょう。
②:Ale選手のスプリットプッシュを活かす方針が取れるように、残りの4名でキャッチやディスエンゲージの要素を用意する必要がありました。
③:①②を踏まえたうえで、構成のバランスを保つための手段としてOMGが辿り着いた答えです。詳しく説明していきます。
「ユーティリティ」とは、直訳すると「役に立つもの」という意味です。
球技で「ユーティリティプレイヤー」というと、「複数のポジションをこなせる器用なプレイヤー」という意味になります。
LoLにおける「ユーティリティ」は、「様々な状況に対応しやすい」くらいで捉えています。
それではまず、Game1のについてです。
というチャンピオンは、一般的には「キャリー」のイメージが強いと思われますが、Qのノックアップ・Wの防御・Rのサスペンションと高いユーティリティ性能を備えたチャンピオンです。
スタートアイテムは共にを選択することで、レーンを維持します。この2体に対してダイブを仕掛けるのは危険が伴うので、レーンを引き気味にプレイすれば大崩れすることはありません。の凍傷スタックも非常に素早く貯めることができ、相性は抜群です。
アイテムもを完成させた後、を積み、は4コアでようやく購入しています。あくまでも求められているのは、ダメージよりもユーティリティ性です。そのため、この試合におけるのチームダメージシェアは、僅か10.9%です。最近のプロシーンではこのビルドパスが多いですね。
次に、Game2のについてです。
先ほど、「BLGのBANは、OMGの思惑通りだ」と書きました。OMGはボットレーンにユーティリティ性を求めているわけですから、である必要はありません。むしろBAN枠を一つ割かせたと言えます。
Game1と同じくも選択肢にありますが、今回はをピックしました。キーストーンはです。さらに、サモナースペルもが、がを所持し、絶対にの餌にはならないという意志が伝わってきます。
とのAoECCコンボによって、序盤から終盤まで少数戦・集団戦の起点を作り、彼らは与えられた役割を確実に遂行しました。
キャリーの役目を任されたAle選手とicon選手も、その期待に応えます。
OMGはiG戦での敗北を糧に、見事2-0で勝利を収めました。
いかがだったでしょうか。
LPLは前衛的なピックが多いリージョンではありますが、特に大きく舵を切ったOMGの戦略は鮮やかなものでした。
今後も面白いトピックがあれば、取り上げていこうと思います。
noteで「Weekly LPL」というコラムも書いているので、興味がある方はこちらも読んでみてください。【Weekly LPL #1】電撃? いやいやフリートでしょ
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
よかったらシェアなどしていただけると幸いです。
(※画像はLoL Esports VODs and Highlightsより引用)
各地域のSpring Splitが開幕し、身体が足りないという方も多いのではないでしょうか。
以前から「フルダイブVRを使えば、眼精疲労は減るんじゃないか。実現はよ」などと考えているのですが、実際のところはどうなんでしょうね。
さて、今回は中国1部リーグ「LPL」からOh My God(以下、OMG)の修正力について、チーム構成を中心に解説しようと思います。
修正力と一口に言っても色々あります。今回は、初戦の敗北を受けてOMGがどのような戦略を立てて次の試合に臨んだのか、という観点から見ていきます。
OMGが初戦から得たデータ
まず、前提として初戦の結果を見ていきましょう。
OMGが相対したのは、昨年の世界王者Invictus Gaming(以下、iG)でした。
前述した通り、OMGはこのマッチを0-2で落とします。
<お互いのチーム構成>
【Game1】
OMG:
iG:
【Game2】
OMG:
iG:
OMGの構成には、次のような一貫性があります。
①ジャングル・ミッドのラインで序盤を支える
②ボットにはスケールの優れたキャリーとピールサポートを置く
③トップはキャリータイプのファイターを選択
彼らがこの試合に向けて準備した、最も勝率の高い方向性だったということでしょう。
実際、OMGの試合内容はそこまで悪くありませんでした。
Game1では、ガンクでミッドの主導権を握り、そこからサイドへと展開する動き。Game2では、Lv1で相手のボットを瀕死に追い込み、トップが2度のソロキルを決めるという立ち上がり。
2試合とも、25分まではほとんどゴールドの差がなかったのです。
しかし、結果は敗北。勝敗を大きく分けたのは、バロンの判断と25分以降の集団戦でした。
ここで、OMG各選手のDPM(1分あたりの敵チャンピオンへのダメージ)を見てみましょう。(※参考:Games of Ledends)
Ale選手:714 / 928(Game1 / Game2)
l3est16選手:465 / 386
icon選手:726 / 259
Chelly選手:625 / 498
Five選手:136 / 257
トップのAle選手が凄まじい数字を叩き出しています。Week1が終わった段階で、彼の平均DPMは全プレイヤー中1位でした。
また、ミッドのicon選手が、Game1ではAle選手以上のDPMを記録しています。Game2で使用したは、元々そんなにDPMが伸びるチャンピオンではありませんし、対という不利なマッチアップでした。
ボットのChelly選手は、可もなく不可もなくといったところです。
BLG戦におけるOMGの新戦略
iG戦の5日後、OMGはホームの成都でBLGを迎え撃ちます。
OMGはこの試合に向けて、どのような戦略を立てたのでしょうか。
まずは各ゲームのドラフトから見ていきましょう。
<Game1>【動画】
まず、OMGはをピックしました。この時点でOMGは、ボット・サポートでの運用をほぼ決めていたように見えます。これについては後ほど詳しく説明します。
しかし、BLGサイドから見た場合はどうでしょうか。可能性として頭の中にあったとしても、はジャングルと考えるのが普通ですし、はフレックスピックです。
次に、BLGのを見て、OMGはを選択します。がピックされたことによって、がボットの可能性はありません。よって、トップとミッドにかが来るということが分かり、ここでを出してもリスクは高くないという判断に見えます。
最終的に両チームの構成はこうなりました。
OMG:
BLG:
<Game2>【動画】
BLGがをBANしたため、がオープンとなりファーストピック。それに対してと返したOMG。
BLGはが来ることを予測してカウンターの、そしてOMGが取らなかったを押さえました。
すると、OMGはまたしてもをピックします。
ここから推測されるのは、「トップとミッドのフレックスピックであるに対しては、とにかくを当てる」というのがOMGの出した結論だったということです。
ミッドのicon選手も前シーズンを使用していますし、スワップも視野に入れていたかもしれません。
そして、BLGは当然のようにをBANします。という超強力なレーニング性能を有したボットレーンの勝利を、揺るぎないものにするためです。しかし、これさえもOMGの思惑通りでした。これについても後述します。
両チームの構成です。
OMG:
BLG:
ここで、分かりやすいようにOMGの構成を並べてみます。
<各ゲームにおけるOMGのチーム構成>
Game1:
Game2:
今回も、OMGの構成には共通項があります。
①トップとミッドにキャリータイプのチャンピオンを使わせる
②キャッチやディスエンゲージ能力に優れたチャンピオンを複数用意する
③ボットレーンにユーティリティの役割を持たせる
特筆すべきは③ですが、順番に見ていきましょう。
①:iG戦の結果を受け、Ale選手には引き続きキャリータイプのファイターを、icon選手には得意なメイジを渡し、チームスタイルを「ソロレーンキャリー軸」に組み立て直しました。を取らせてを当てるというのも、この戦略をより確実にするため仕掛けたものでしょう。
②:Ale選手のスプリットプッシュを活かす方針が取れるように、残りの4名でキャッチやディスエンゲージの要素を用意する必要がありました。
③:①②を踏まえたうえで、構成のバランスを保つための手段としてOMGが辿り着いた答えです。詳しく説明していきます。
「ユーティリティ」とは、直訳すると「役に立つもの」という意味です。
球技で「ユーティリティプレイヤー」というと、「複数のポジションをこなせる器用なプレイヤー」という意味になります。
LoLにおける「ユーティリティ」は、「様々な状況に対応しやすい」くらいで捉えています。
それではまず、Game1のについてです。
というチャンピオンは、一般的には「キャリー」のイメージが強いと思われますが、Qのノックアップ・Wの防御・Rのサスペンションと高いユーティリティ性能を備えたチャンピオンです。
スタートアイテムは共にを選択することで、レーンを維持します。この2体に対してダイブを仕掛けるのは危険が伴うので、レーンを引き気味にプレイすれば大崩れすることはありません。の凍傷スタックも非常に素早く貯めることができ、相性は抜群です。
アイテムもを完成させた後、を積み、は4コアでようやく購入しています。あくまでも求められているのは、ダメージよりもユーティリティ性です。そのため、この試合におけるのチームダメージシェアは、僅か10.9%です。最近のプロシーンではこのビルドパスが多いですね。
次に、Game2のについてです。
先ほど、「BLGのBANは、OMGの思惑通りだ」と書きました。OMGはボットレーンにユーティリティ性を求めているわけですから、である必要はありません。むしろBAN枠を一つ割かせたと言えます。
Game1と同じくも選択肢にありますが、今回はをピックしました。キーストーンはです。さらに、サモナースペルもが、がを所持し、絶対にの餌にはならないという意志が伝わってきます。
とのAoECCコンボによって、序盤から終盤まで少数戦・集団戦の起点を作り、彼らは与えられた役割を確実に遂行しました。
キャリーの役目を任されたAle選手とicon選手も、その期待に応えます。
OMGはiG戦での敗北を糧に、見事2-0で勝利を収めました。
最後に
いかがだったでしょうか。
LPLは前衛的なピックが多いリージョンではありますが、特に大きく舵を切ったOMGの戦略は鮮やかなものでした。
今後も面白いトピックがあれば、取り上げていこうと思います。
noteで「Weekly LPL」というコラムも書いているので、興味がある方はこちらも読んでみてください。【Weekly LPL #1】電撃? いやいやフリートでしょ
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
よかったらシェアなどしていただけると幸いです。
(※画像はLoL Esports VODs and Highlightsより引用)
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