メタリポート9.5 スケーリングの時代がやってきた

March 20, 2019 by lol-cla管理人, Patch 9.5

Patch9.5になって競技シーンのメタがどう変わってきたか解説
こんにちは。

世界的に競技シーンでパッチ9.5が使われるようになって1週間が経過しました。
そこで今回は9.5において、もちろん9.4からの流れを引き継いでのことですが、メタが移り変わってきている点について、どんなチャンピオンが評価を上げているのか、その背景などを含めて解説していこうとおもいます。

筆者は主にLCK、LECを中心に観戦しているので、LPLやLCSのメタには疎いです。
その点はご了承ください。




スノーボール時代の落日


シーズン9の変化を象徴する要素として、タワープレートの追加と砲台ミニオンの増加が挙げられます。

詳しくはこちらの記事で書いたので未読の方は是非読んでみてください。
LCKメタ・ドラフト分析 KingZone DragonXの生存戦略

簡単にいえばゲーム序盤に得られるゴールドが大幅に増えたので、ゲーム中盤0~2コアでパワースパイクを迎えるチャンピオンがスノーボールしやすく、レイトゲームのスケーリングを待つ構成は成立しにくいというメタでした。

それを支えていたのはトップでもミッドでもピックされていたエイトロックス、サイオン、アーゴットの3チャンピオンでした。

彼らは強力なスキルセットを持ち、安定したレーニング性能を持っていたため、中盤の集団戦で活躍が確約されていたのです。

これらの安定した力にスノーボール出来るチャンピオン、アカリやイレリアといったチャンピオンを組み合わせて中盤の集団戦をドミネートする、というのがシーズン9序盤のメタでした。

さて、スノーボールをする、と一言に言いますが、そのために必要な要素は、中盤にパワースパイクを迎えるチャンピオンがいるだけではだめです。

自分たちが有利な時間帯にその有利をさらに広げるために集団戦を起こす必要があるわけです。

つまりはエンゲージが出来るチャンピオンがスノーボール構成には不可欠というわけですね。
ここには既に名前の出たサイオンやアーゴット、さらにはラカンといったところがよくピックされました。

あるいはカミール+ガリオといった組み合わせで強制的に集団戦を起こすといったツールも良く用いられましたね。

パッチノートを毎回読んでいらっしゃる方ならご存知でしょうが、ここまでに名前の出た1,2月を彩ったチャンピオンたちは、悉くナーフを喰らって沈んでいきました。

もちろんエイトロックス、イレリア、アカリ、カミールなどは再びピックされるようになってはいますが、以前のように万能で強力なピックではなく、限定的な状況でピックされるだけに留まっています。

ガリオについては後で詳しく解説するので少々お待ちを。

さて、これらのナーフの中で特に影響が大きかったのがトップレーンの安定ピックが消えたこととエンゲージチャンピオンが弱くなったことでした。

そこで台頭してきたのがスプリットプッシュが出来るジェイス、ヨリック、フィオラといったファイター、そしてゾーイ、エズリアル、コーキといったポークチャンピオンたちです。

スプリット構成を支えるファイターはピックすること自体にリスクをかかえており、の安定ピック三銃士を差し置いてピックするチームは少なかったわけですが、彼らが消えたことで勢力を増してきました。

征服者の変更なんかも追い風でしたね。

ポーク構成はエンゲージが強い環境では自分たちの強い形に持ち込む前に集団戦を仕掛けられて潰されてしまうという特徴をもっていますが、これも前述の通りエンゲージ要素がナーフされたことで弱点を克服した格好になっています。

こうした別勢力の登場によって、スノーボール構成1強の時代は終わりを告げたのです。




ボットレーンを巡る環境の変化


ボットレーンは相変わらずルシアンがトップティアの一角を占めています。
しかし、彼らの天下かというとそういうわけでもないのです。

彼のもっとも強力なライバルはカリスタでしょう。というかもうLCKでは彼女の評価がルシアンを完全に追い越しています。

パッチ9.5で行われた21ゲームのうち、実に20ゲームでバンされ、唯一ピックされた試合では勝利と完全に1強の様相を呈しています。

Q貫魂の一投のバフやW執念の霊魂の自動効果の変更などがあったことも大きいですし、エンゲージが足りないメタで宿命の呼び声というエンゲージ、ディスエンゲージを兼ね揃えたアルティメットを持っており、さらにヘイルブレードを持つことで積極的にレーン戦で勝ちに行ける性能というのが評価されているのでしょう。

ライバルだったルシアンはWアーデントブレイズのナーフがあり、いまだにレーンは強いものの、勝ちきるためにはサポートの助けがいるようになりました。

このルシアンのナーフを受けて台頭してきたのがヴェインです。

サポートでヴェインサイドが有利なマッチアップを作れれば、対ルシアンでもレーンでボコボコにやられてしまうという展開にはなりづらく、レーン戦終了後、サポートとジャングルが離れてミッドレーンでADC同士が1v1になったときに、そのタイマン性能を活かしてルシアンにプレッシャーをかけることが出来るのです。

エンゲージ要因としてピックされる機会が増えてきたジャーバンIVとのシナジーもあり、本パッチで注目のピックになっています。

これはLCK week8 Griffin vs Gen.Gのピックです。(Patchは9.5)





ボットレーンでは、ガリオサポートを取ったGRFに対してGENはブラウムというカウンターを当てています。

試合展開的にトップサイドをGRFが重視したこともありましたが、14分のタワープレート消滅時でADC間CS差はほぼなし、タワープレートも側が2枚獲得に対して側も1枚獲得とほぼ微差で最初の14分を乗り切ることに成功しています。

エンゲージ系のチャンピオンが相次いでナーフされたこともあってパッチ9.4くらいから全体的に試合時間が長くなる傾向にあります。

そんな背景もあってヴェインに限らず、所謂レイトゲームキャリー系のチャンピオンたちが育つまで試合を長引かせることが出来るわけです。

中でも一番の注目はトリスターナでしょう。

彼女はEのヨードルグレネードの効果でレイトゲームキャリーの中では序盤からプッシュ性能が高いのが特徴で、ウェーブクリアが乏しいエズリアルなどにウェーブコントロールを得やすいのがピックする上での大きな利点です。

同じようにピックされるレイトゲームキャリーのカイ=サに対しては、アルティメットのキラーヴォイドによるブリンクインを、トリスターナのバスターショットで弾き返すことが出来ますし、ヴェインに対しては育った時の射程面で圧倒的に有利です。

ジンクスとはキャリー力という面ではいい勝負ですが、トリスターナは優秀なブリンクスキル、ロケットジャンプを持っているのでピックしやすさという面で大きく秀でています。

まとめるとサモナーズリフト全体からエンゲージチャンピオンの数やパワーが減ったり、ルシアンのレーン戦性能が少し弱体化した結果、マークスマンのメタはややレイトゲーム寄りになってきているということです。



ファーストピック候補にあがる2体のチャンピオン


パッチ9.5で私が思う、2大ファーストピック候補チャンピオンがいます。
それはリサンドラとブラウムです。

リサンドラに関しては、いま一番強いミッドチャンピオンといっても過言ではないでしょう。

ダメージやマナ面でややナーフを受けましたが、ビルドにルーデンエコーを組み込むなどの工夫でナーフ分を克服しています。

サイラスがグローバルバンになっていることもあって、ミッドレーンでエンゲージ、ユーティリティ性能を兼ね揃えたチャンピオンがこのチャンピオンしかいないというのもありますが、
ルシアンやカリスタ、ヴェインといった流行のADCに対してもアルティメットのフローズングレイブによるゾーニングが強烈です。

逆に味方にリサンドラがいる場合は、そういったチャンピオンたちのポジショニングを助けることが出来ます。

流行のミッドレーナーを見ても、ルブランやゾーイに対して有利がつきます。
唯一対イレリアだけは簡単なマッチアップではないので、そこだけ気を付ければ安心して先出しすることが可能です。

正直プロシーンのバンピックを眺めていても、リサンドラを取っていればかならずそちらのチームが構成勝ちしているように見えるほど、いまのメタに刺さっているチャンピオンです。

ファーストピック候補のもう1人はブラウムです。

ブラウムは強力なディスエンゲージ、ゾーニング能力を兼ね揃えたサポートで、かつタンクサポートの中ではかなりレーン戦が強いチャンピオンでもあります。

Qの冬の凍瘡、固有能力の漢の拳はレーニング、ガンク合わせ、ジャングル内の少数戦で強力で、序盤・中盤・終盤、隙の無いスキル構成と言えるでしょう。

さらにブラウムはエンゲージツールとセットでよくピックされているガリオサポートに対してのカウンターでもあります。

ガリオサポートはQの戦の旋風や固有能力の巨像の一撃で安全にADCのプッシュを手伝いながら、アルティメットの英雄降臨でノクターンやジャーバンIVのエンゲージをサポートするといった使い方で、現状かなりティアの高いサポートです。

しかしブラウムはEの不破の盾によってを消すことが出来、もアルティメットの氷河の裂溝で止めることが可能です。

またガリオのメインのCCがWのデュランドの守りによるTaunt効果なのもいけません。
あらかじめ漢の拳のスタックがついている状態でを複数人に当てた場合、自動で通常攻撃がガリオに叩き込まれ、すぐにスタンしてしまうのです。

ガリオの天敵でありながら、ガリオと相性のいいエンゲージチャンピオンの仕掛けを防ぐことに長け、さらにポーク構成の軸になるゾーイに対しても強いブラウムは、まさにメタの寵児といってもいいでしょう。

ちなみにを巡ってちょっと珍しい現象が起きています。

これはLCK Week7 KT Rolster vs AfreecaFreecsのバンピックです。(patchは9.4)

ピック順

ロール順


1stローテーションでAFsがアッシュとガリオを取ったのに対し、KTはガリオサポートを警戒してブラウムをピックしています。

それを受けて、AFsはガリオをミッドに逃がして、4thピックでアリスターを新たにサポートとしてピックしています。

ミッドをトップに逃がすとか、ジャングルに逃がすというのはまま見かけますが、サポートをミッドに逃がすというのは中々見ないですね。

もちろんKTはミッドに逃がすオプションを読み切ってすぐに対応しています。
ブラウムを取らずにガリオをサポートに置かれたときと、ブラウムを取ってミッドに逃がされた時の状況を天秤にかけて、ミッドのほうが対処しやすいという判断だったのでしょう。

こういった応酬を想像するのもプロシーンの楽しみ方のひとつですね。



そのほかのトレンドについて


さてここまでの話をまとめましょう。

①エンゲージツールが減ってゲーム時間が長くなり、レイトゲームキャリーたちが徐々に増えてきた。

②そんなメタでミッドから早い時間帯でゲームを動かすポテンシャルを持っているリサンドラや、ディスエンゲージ能力と流行のチャンピオンへのカウンター性能でブラウムが評価されている。

①に関しては、ボットレーン以外にスケーリングのいいチャンピオンを置くという考え方もあります。

実際のピックでいえばこんな感じです。

LCK week8 KingzoneDragonX vs Gen.G のピックです。(patchは9.5)



KZの構成はトップにガングプランク、ジャングルにカーサスというスケーリングチャンピオンを置いて、ミッド、ボット、サポートには序盤から強いチャンピオンを置くという構成ですね。

他にもアジールやブラッドミアを使う構成も見かけますね。
スプリットプッシュ色を強めたフィオラやジャックスを入れた構成も同じ考え方の亜種といっていいでしょう。

②に関して補足をするならば、いまリサンドラ以外に中盤からゲームを決めに行けるツールとして注目されているのが、グラガス、ヤスオのコンボピックですね。

グラガスはディスエンゲージ能力に長けたジャングラーでメタ的にはマッチしていますし、ヤスオもゾーイやジェイスに対してWの封殺の壁がカウンターとして機能するため、メタ上位のチャンピオンです。

そしてこの2人を組み合わせた時のアルティメットコンボは、まさに理不尽と言えるほどのエンゲージツールと化します。

現パッチのヤスオは征服者の変更でダメージ量がかなり減りましたし、キャリーというよりはユーティリティ寄りの立ち回りが要求されますが、もし対戦チームのミッドがヤスオ使いならバン枠を割く価値は十分にありそうです。




おわりに


いかがだったでしょうか。

他にもニーコやライズのことなど、書きたいことは山ほどあったのですが、いくつかのテーマに絞っていまのメタの分析、解説をしてみました。

本当はGriffinがGen.Gに負けた理由を分析する記事にする予定だったのですが、メタの背景やなんやらをまとめているうちにAFsにまで負けてしまってちょっと記事の方向性を変えてみました。

実際にGRF vs GENのドラフトを見てみると





GRF側がこの記事で取り上げたブラウムとリサンドラを軽視しているのが良く分かりますね。
(まあこれをもとに記事かいたみたいなところもありますが)

試合内容に関してはPeanut選手のパフォーマンスが良かったのもありましたし、GRFはプレーオフが確定しているので、あまり新しいピックや作戦を見せたくないという意図もありそうです。

各リージョン、上位チームはプレーオフに向けて各チームが自分たちの研究成果を隠したり、小出しにしたりする時期です。
どんな事を狙っているのか想像しながら試合を眺めてみるのも楽しいと思います。

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プレーオフに向けてブログ更新への気合いが乗ります。