プロシーンのニッチピック通信簿vol.5 アーゴット on LCK Final
突如としてシーンに登場した処刑人、アーゴットの強さにせまる
こんにちは。
仕事のパワースパイクが強力すぎてブログの更新が滞ってまして本当に申し訳ございません。
チーム構成編は現在半分ほど書きあがったのですが、残りの部分を書き上げる前にいま最もホットなチャンピオンについての記事を書こうと思い、筆を取った次第です。
そう、LCKFinalでシーンに颯爽と登場し(実は中国LPLや韓国2部のChallengersKoreaでもピックされていましたが)、まさかのPick/Ban率100%を記録した、アーゴットです。
なぜ直接的なバフを受けたわけでもない彼がまたシーンに戻ってきたのか、そしてなぜ解放の魔導書をキーストーンに選択するのか、
競技シーンのメタの変遷やも恐れた彼のチャンピオン性能の面から検証していこうと思います。
前半はアーゴットの話というよりもパッチ8.15のメタの変遷など、彼に直接関係ない話が続きますが、がピックされるようになる背景を知るためにも、是非読んでいただければなと思います。
(一応目次で飛ばすこともできるようにしてあります)
あと、本記事はトップレーンで起用することを念頭に解説しています。
GriffinのChovyはミッドでアーゴットを運用していましたが、おそらく世界的にはトップがメインになると思います。
さて、今回も長くなると思います。
素晴らしかったLCKファイナルのBo5をまだ見ていない方はそちらを先にご覧になってください。
動画はこちら(LCK Final KT vs GRF game1)
もう見終えた方は、その余韻を楽しみつつ、読んでいただければなと思います。
ちなみにこのシリーズは第5回目となっています。
以前の投稿はこちら。ちょっと昔のメタですが、読み物としては楽しめるかな、と思います。
第1回 ヴェル=コズ編(Link)
第2回 スウェイン編(Link)
第3回 ジンクス編(Link)
第4回 リサンドラ編(Link)
パッチ8.14でテレポートがナーフを受け、クールダウンが300秒から360秒へと変更されました。
8.14直後こそそれほどトップレーンのメタに影響を及ぼしていなかったのですが、インフィニティエッジなどクリティカル系のアイテムにバフが入った8.15以降徐々にプロシーンがそれに「順応」してきた印象を受けています。
テレポートのクールダウンが6分ということは、トップレーンが一度不利を背負ったときのリカバリーが効きにくくなったことを意味します。
具体例で示すと、1回味方トップがガンクを受けて、敵ジャングルと味方トップのフラッシュが両方無くなったとします。
倒された味方トップはデスタイマーが終わるとでレーンに復帰するわけですが、
次、敵ジャングラーのがアップするときには、まだはクールダウン中なんですね。
(のクールダウンは300秒)
ここで再びガンクを受けてデッドしてしまうと、でレーンに復帰することが出来ないわけです。
このとのCD差、1分のタイムラグは競技シーンにおいては重く、ガングプランクをはじめとしたアイテム依存度の高いキャリー系トップレーナーをピックすると、ジャングラーにキャンプされてゲームから追い出されてしまう(大量のミニオンをロストして経験値差がつき、1v1が出来ない状況に追い込まれる)事態を招きかねません。
のピックに各チームが慎重になり始めると、このチャンピオンに頭を抑えられていたタンク勢、チョ=ガスやオーンが息を吹き返してきました。
そしてそれらに対して有利を取れるチャンピオンとして、ナーが採用され、8.15では彼がトップレーンの先出し安定のチャンピオンとして扱われ始めました。
このに対する対抗策の1つとしてピックされたのがクインです。
は相棒の効果でレーン復帰やローミング速度を確保できるため、テレポートを持つ必要がなく、かわりにイグナイトを持つことで、対面を破壊し、スプリットプッシュ勝ちを狙うことが出来るチャンピオンです。
ちょっと風が吹けば桶屋が儲かる状態なので、ここまでの流れを整理しましょう。
① TPのナーフでなどのキャリー系が減った。
② などを苦手としていたなどのCCタンクが増えた。
③ などに有利を取れるの価値が上がり、それに勝てるなどが登場した。
もちろんドクター・ムンドやケネン、ジェイスなど様々なチャンピオンが複雑に絡み合ってはいるんですが、簡略化するとこんな感じです。
のナーフ1つでガラっとトップレーンの環境は変わったわけです。
このあたりの解説はパッチ8.14がリリースされた直後に、メタ予測と題してリクルート(@rikuruto_9)さんと対談記事を載せているので、よろしかったらどうぞ。
解説者たちのポストファンネリング時代のメタ予測【Patch8.14】
今読むと当たってるところも外れてるところもあるんですが、ビクターやジンクスなどLCKファイナルで登場したチャンピオンについても言及してあったりします。
LoLの競技シーンでは、1体のチャンピオンが異常に強くなったことで別のレーンに影響が出ることがあります。
パッチ8.15でのヴァルスは、それだけの存在感を持っています。
の問題点はリーサルテンポを持ったDPS型、秘儀の彗星を持ったポーク型に両対応が可能で、そのどちらにビルドを進めてもTier1の性能を発揮できる点です。
たとえばアッシュを取った場合は、ミッドゲームのエンゲージやキャッチに寄せていくことになりますし、カイ=サなら終盤の爆発的なDPSを活かすために試合時間を延ばす構成を目指すことになるわけですが、
は味方の構成に注文を付けないので自由なドラフトが可能なのです。
そのため、8.15前半ではがファーストピック候補になっていたわけですが、他のBan常連チャンピオン、タリヤやエイトロックスが研究され、ある程度オープンにしても対策可能ということが分かってくると、今度はが頻繁にBanされるようになりました。
こうなるとADCのピックで最優先されるのはカイ=サになります。
ラカンやタム・ケンチ、モルガナなどサポートチャンピオンが多くBanされるメタの中で、比較的Ban漏れしやすいアリスターとの相性が抜群で、この2体をセットでピックするチームが増えていきました。
1体のチャンピオンが目立ち始めるとカウンターが用意されるのがLoLの競技シーンです。
のカウンターとして白羽の矢が立ったのはトリスターナでした。
トリスターナは低レベル時からに対して単体ダメージ、射程面で有利に立て、お得意のキラーヴォイドによるダイブに対してもバスターショットで1回ディスエンゲージできるのでカウンターとして機能する、というわけです。
8.15でクリティカル系のアイテムの値段が下がったのも彼女にとっては大きな追い風でした。ストームレイザーで最低限のダメージを確保しつつ、の計3アイテム完成までの時間を稼ぐことが十分可能になりました。
と、いうわけで、8.15後半ではがBanされて対というマッチアップになるドラフトが頻繁にみられるようになりました。
彼女たちは所謂レイトゲームキャリー、ゲーム後半に大ダメージを出すタイプのADC、ですから必然的に彼女たちのダメージアウトプットを補助するチャンピオンが必要になってきます。
その結果、トップレーンは中盤を支えつつ、最後はキャリーの壁になれるCCタンクが多く採用されるようになりました。
具体的にはオーンとチョ=ガスです。
ナーは純粋なタンクではありませんが、レーンでタンク相手に有利を作れる点や後半はイニシエートやピールが出来ることもあって、依然として採用されています。
逆にクインはタンクやに対して有利なピックとして開発されたものの、マークスマンタイプのトップレーナーは存在そのものが高リスクですし、スプリットプッシュ性能とプロテクトキャリー的なメタのアンバランスさもあってパッチ後半では姿を消していきました。
さて、ここまで延々と8.15のメタについて話してきましたがここからは本題、アーゴットがなぜメタに刺さるのか、というところに触れていこうと思います。
ここから読む人のために前2項の話をまとめると
・テレポートが弱くなった。
・カイ=サとトリスターナ、レイトゲームキャリーがADCの中でトップティアになった。
・結果、トップレーンはオーンなどのタンクか、ナーのようなオフタンクが中心になった。
といった感じです。
ではなぜアーゴットがメタに刺さっているのか、見ていきましょう。
アーゴットは8.15のメタトップレーナーほぼすべてにレーンで有利を取ることができます。
元々このチャンピオンはレーン戦が強力なので当たり前といえば当たり前ですが、レーンで勝てるというのは競技シーンにおいても重要なファクターのひとつです。
ジャングラーの活動できる範囲が増えますし、トップレーンでアドバンテージを取ることが出来れば、リフトヘラルド獲得も容易になります。
トップレーンが1v1で勝ってくれることはタワー1本以上の価値があるのです。
この役割に関してはクインやランブルなどと同じです。
ブラッククリーバーが完成した段階で、アーゴットのダメージ量は飛躍的に上昇します。
特にWのパージとの相性は抜群で、は彼のためにあるかのようなアイテムと言ってもいいくらいです。
ADCのメタがレイトゲーム寄りになっているので、アーゴットをピックしておけば、ゲーム中盤にはやの代わりのDPS要因として活躍できます。
アーゴット自身が大量のダメージを生み出せるため、サイドレーンでタンクと1v1中に味方ジャングラーを介入させてキルを取る、といったプレイも容易です。
早い時間帯のバロンも行いやすく、味方のADCのパワースパイクを待つもよし、作った有利を広げる動きも行える万能なチャンピオンになっています。
メタがレイトゲームキャリー寄りになると、ザックやカミールといったバックラインに圧力をかけられるチャンピオンの価値が上がります。
トリスターナのようなADCは、さっさと倒してしまわないと結局集団戦をキャリーされてしまうことが多いですからね。
こういったダイバーと呼ばれるチャンピオンに対してアーゴットがカウンターとして機能します。
アーゴットの弱点はアルティメットのデスグラインダーを除くと、近距離にしかダメージを与えることが出来ない点ですが、ダイバーたちは勝手にアーゴットのところに飛び込んできてくれるわけですから、まさに「飛んで火にいる夏の虫」というやつです。
Qのコラプトシェルでスローを入れながら、パージを発動して相手をズタズタにするもよし、Eのディスデインでダイバーをキャリーから遠ざけるもよし、と受け手が広いです。
複数体のチャンピオンがダイブしてきても、1人をフォーカスして体力を削ってしまえば、の処刑発動で相手のダイバーたちを文字通り恐怖のどん底へと叩き落としてやれるわけです。
また純粋なダイバーではないですが、メタ上位に位置するオラフに対して強いのも見逃せません。
はラグナロクでCCを無効化して突っ込んでくる恐怖の存在ですが、はCCに頼らずダメージを出すことが出来るチャンピオンですし、の得意とする低ヘルスからの殴り合い性能に対してもの処刑がカウンターになっています。
このダイバーやへのアンチ性能はドラフト面でも非常に強力で、アーゴットは、先出ししてもレーンでのカウンターを取られるリスクがかなり低く、さらに相手のダイバーのピックを抑止することもできるという、ワイルドカードになっているのです。
逆に自分たちはダイブ性能の高いチャンピオンを一方的に抑えられるわけですから、イニシエート力がそれほど高くないアーゴットの性能をドラフト面の強さで補っている、ともいえるでしょう。
アーゴットの登場、それ自体も驚きだったのですが、そのキーストーンに驚かれた方も多いはずです。
解放の魔導書は、一時トップレーンの必須キーストーンだった時代もありますが、リメイクされ、以降はサポートがローム性能や戦闘能力を上乗せするために時々採用する程度になっていました。
それを何故いまアーゴットが採用しているのか、これも周りのメタに影響されてのものなのです。
タイムワープトニックは天啓パスの3列目にあるルーンで、効果はポーション類の効果時間を20%増やし、その間移動速度が5%上昇するというものです。
現在このルーンの評価が非常に高く、を入れて、コラプトポーションをスタートアイテムにするというビルドがトップ、ミッドを中心に(時にはADCが選択する場合もあるほどに)大流行しています。
の自動効果もあって、この2つを持っていないとレーンでのダメージトレードに勝つことが難しくなってしまうほどです。
このスタートは、ドランシールドやドランブレードよりも、スタックに限りがあるものの、はるかに高いサステインを得ることができるので、
アーゴットが以前採用していた秘儀の彗星によるポーク・ハラス的なダメージの上乗せはあまり機能しなくなってしまったのです。
そこでいっそキーストーンを解放の魔導書にしてしまって、チームへの貢献、レーン復帰のためのテレポートを持ちつつ、イグナイトやイグゾーストといった戦闘用サモナースペルを使ってキルチャンスをつくったほうが良い、という発想が出てきたわけです。
はサモナースペルの交換ができるという特殊なキーストーンですが、一度交換したサモナースペルを使用すると、別の種類のサモナースペルを3回使ってからでないと再び同じものを選択できないという、デメリット効果が付いています。
しかし、これがことアーゴットにおいてはあまりデメリットにならないのです。
彼はマークスマンであり、ファイターであり、タンクであるという、彼の足の本数並みに多くの顔を持つチャンピオンです。
マークスマンにマッチするヒールやバリア、ファイターにマッチするゴーストやイグナイト、イグゾーストも自分のDPSを増やすためや相手のバーストを削るために使えるなど、マッチしないサモナースペルがほとんどないのです。
自身のバロンの速さを活かすためにスマイトを持って20分バロンを狙うこともできます。
このようにのデメリット部分がほとんど意味をなさないのです。
キルチャンスをつかむために、あえて直接ダメージの出ないキーストーンを選ぶ、プロが考えるニューメタにはいつも舌を巻きますね。
ここからはプロプレイヤーの採用しているビルドやルーンについて紹介していこうと思います。
が、
正直いってルーン以外はそれほど一般プレイヤーたちのビルドと変わらないと思います。
メインパス:天啓
解放の魔導書:必須です。というか、これの解説記事なので当たり前ですね。
魔法の靴:移動速度+10が近づかないとダメージを出せないアーゴットにとっては大きいです。
ただ相手からのダイブの圧力が厳しそうな場合は、パーフェクトタイミングでもよいでしょう。最終的にはガーゴイルストーンプレートやガーディアンエンジェルにすることが出来ます。
ミニオン吸収装置:ウェーブクリアが早くなり、その分ジャングルの小競り合いに参加したりと、強い時間帯に自由な時間が増えるルーンです。
ハラスが強い相手にはビスケットデリバリーを持って行ってもよいでしょう。
タイムワープトニック:必須です。理由は前項参照のこと。
サブパス:不滅
ボーンアーマー:必須です。トップレーンのダメージトレードでは依然強力です。
羽化:この枠はプレイヤーや対面のチャンピオンによって変わってきます。
羽化はガンク合わせが強いチャンピオンが対面のとき、息継ぎはミッドでピックしたときなどハラスの頻度が多そうな時、
超成長は対タンクでスケーリングを重視した選択肢となっています。
スキルオーダーはR>Q>W>E。
レベル1ではを取りますが以降は上げが一般的です。
スタートアイテムはコラプトポーション。
これに関しては散々解説したので、もういいですね。
1stコアはブラッククリーバーで固定です。
チャンピオン性能との相性が抜群でこれ以外考えられません。
2nd以降はチーム構成やプレイスタイルによって変わってきます。
アダプティブヘルムやフローズンハートといった防具はダメージこそ伸びないものの、中盤のパワースパイクを大きく底上げしてくれます。
ライチャスグローリーはチームにエンゲージ性能が足りていないときのアイテム。このアイテムも非常にアーゴットと相性がいいので採用率は高めです。
さて恒例の通信簿タイムです。
LCKファイナルという大舞台で大立ち回りをやってのけたアーゴットは今後もピックされ続けるのでしょうか?
評価は4段階で行いたいと思います。評価は以下の通りです。
4点:エウレカ! これはきっと世界を席巻するNewメタになりますね。
3点:素晴らしいピック! このチャンピオンをピックするフォロアーが各地で出てくるでしょう。
2点:悪くないね! 弱点はあるけど部分的には成立しています。
1点:残念! 意欲的なピックだったけどあまり成功しなさそうです。
さて今回のアーゴットの評価は・・・
まあ、最後に書くのもなんなんですが、もう実はもう世界中でBan筆頭候補の仲間入りをしています。
EU LCSの決勝でも4試合中3試合でBanされていました。
全然ニッチピックじゃありませんね。
なんといってもメタに上がっているどんな構成にもマッチして、レーンが強く、相手の構成を縛れるというのはドラフト面において強力すぎます。
ただ、もちろん対策も練られつつあります。
LPLではブラッドミアをぶつけてレーンを引き分けに終わらせるという作戦で、この恐怖の処刑人を退けることに成功しています。
試合の動画はこちら(TOP vs SNG LPL PO Round1 game2)
十分なサステインとウェーブクリアをもったチャンピオンをぶつけるのが対策と言えそうです。
イレリアはサステインもあり、先陣の刃のCC、武装解除によって、アーゴットのDPSを大きく削ることが出来るのでカウンターとして考えられているようです。
またアーゴットはガンクにあまり強くないので、トップにキャンプするという作戦も考えられます。
これもLPLで成功例がありますね。
メタの循環のところで解説してきたように、プロのコーチやアナリスト、プレイヤーたちはこういったOPチャンピオンに対して必ず回答を見つけてくるので、
今後アーゴット自身が、プロからの受けるであろう「試練」を乗り切ることが出来るのか、注目していこうとおもいます。
いかがだったでしょうか。
今回はあまり個別の具体的な構成やピックというよりも、メタの変遷に重きを置いてみました。
メタが回ると意外なチャンピオンが浮上してくるのがLoLの常ですが、ChallengersKoreaの解説中にアーゴットが先出しロックインされたときは本当に驚きました。
Worldsへ向けてあと数パッチ、各国の代表が出そろってくるタイミングですが、LJLのファイナルやLCKのリージョナルファイナルなどで、が、もしかしたら全く別のチャンピオンが出てくるかもしれない、と思うと、いまから楽しみでなりません。
面白かったらシェア等よろしくお願いします。
変なチャンピオンが出てきたときにまた記事にしようというモチベにつながります。
仕事のパワースパイクが強力すぎてブログの更新が滞ってまして本当に申し訳ございません。
チーム構成編は現在半分ほど書きあがったのですが、残りの部分を書き上げる前にいま最もホットなチャンピオンについての記事を書こうと思い、筆を取った次第です。
そう、LCKFinalでシーンに颯爽と登場し(実は中国LPLや韓国2部のChallengersKoreaでもピックされていましたが)、まさかのPick/Ban率100%を記録した、アーゴットです。
なぜ直接的なバフを受けたわけでもない彼がまたシーンに戻ってきたのか、そしてなぜ解放の魔導書をキーストーンに選択するのか、
競技シーンのメタの変遷やも恐れた彼のチャンピオン性能の面から検証していこうと思います。
前半はアーゴットの話というよりもパッチ8.15のメタの変遷など、彼に直接関係ない話が続きますが、がピックされるようになる背景を知るためにも、是非読んでいただければなと思います。
(一応目次で飛ばすこともできるようにしてあります)
あと、本記事はトップレーンで起用することを念頭に解説しています。
GriffinのChovyはミッドでアーゴットを運用していましたが、おそらく世界的にはトップがメインになると思います。
さて、今回も長くなると思います。
素晴らしかったLCKファイナルのBo5をまだ見ていない方はそちらを先にご覧になってください。
動画はこちら(LCK Final KT vs GRF game1)
もう見終えた方は、その余韻を楽しみつつ、読んでいただければなと思います。
ちなみにこのシリーズは第5回目となっています。
以前の投稿はこちら。ちょっと昔のメタですが、読み物としては楽しめるかな、と思います。
第1回 ヴェル=コズ編(Link)
第2回 スウェイン編(Link)
第3回 ジンクス編(Link)
第4回 リサンドラ編(Link)
TPのナーフによるトップレーンの変化
パッチ8.14でテレポートがナーフを受け、クールダウンが300秒から360秒へと変更されました。
8.14直後こそそれほどトップレーンのメタに影響を及ぼしていなかったのですが、インフィニティエッジなどクリティカル系のアイテムにバフが入った8.15以降徐々にプロシーンがそれに「順応」してきた印象を受けています。
テレポートのクールダウンが6分ということは、トップレーンが一度不利を背負ったときのリカバリーが効きにくくなったことを意味します。
具体例で示すと、1回味方トップがガンクを受けて、敵ジャングルと味方トップのフラッシュが両方無くなったとします。
倒された味方トップはデスタイマーが終わるとでレーンに復帰するわけですが、
次、敵ジャングラーのがアップするときには、まだはクールダウン中なんですね。
(のクールダウンは300秒)
ここで再びガンクを受けてデッドしてしまうと、でレーンに復帰することが出来ないわけです。
このとのCD差、1分のタイムラグは競技シーンにおいては重く、ガングプランクをはじめとしたアイテム依存度の高いキャリー系トップレーナーをピックすると、ジャングラーにキャンプされてゲームから追い出されてしまう(大量のミニオンをロストして経験値差がつき、1v1が出来ない状況に追い込まれる)事態を招きかねません。
のピックに各チームが慎重になり始めると、このチャンピオンに頭を抑えられていたタンク勢、チョ=ガスやオーンが息を吹き返してきました。
そしてそれらに対して有利を取れるチャンピオンとして、ナーが採用され、8.15では彼がトップレーンの先出し安定のチャンピオンとして扱われ始めました。
このに対する対抗策の1つとしてピックされたのがクインです。
は相棒の効果でレーン復帰やローミング速度を確保できるため、テレポートを持つ必要がなく、かわりにイグナイトを持つことで、対面を破壊し、スプリットプッシュ勝ちを狙うことが出来るチャンピオンです。
ちょっと風が吹けば桶屋が儲かる状態なので、ここまでの流れを整理しましょう。
① TPのナーフでなどのキャリー系が減った。
② などを苦手としていたなどのCCタンクが増えた。
③ などに有利を取れるの価値が上がり、それに勝てるなどが登場した。
もちろんドクター・ムンドやケネン、ジェイスなど様々なチャンピオンが複雑に絡み合ってはいるんですが、簡略化するとこんな感じです。
のナーフ1つでガラっとトップレーンの環境は変わったわけです。
このあたりの解説はパッチ8.14がリリースされた直後に、メタ予測と題してリクルート(@rikuruto_9)さんと対談記事を載せているので、よろしかったらどうぞ。
解説者たちのポストファンネリング時代のメタ予測【Patch8.14】
今読むと当たってるところも外れてるところもあるんですが、ビクターやジンクスなどLCKファイナルで登場したチャンピオンについても言及してあったりします。
ADCのメタ変化がトップレーンに及ぼした影響
LoLの競技シーンでは、1体のチャンピオンが異常に強くなったことで別のレーンに影響が出ることがあります。
パッチ8.15でのヴァルスは、それだけの存在感を持っています。
の問題点はリーサルテンポを持ったDPS型、秘儀の彗星を持ったポーク型に両対応が可能で、そのどちらにビルドを進めてもTier1の性能を発揮できる点です。
たとえばアッシュを取った場合は、ミッドゲームのエンゲージやキャッチに寄せていくことになりますし、カイ=サなら終盤の爆発的なDPSを活かすために試合時間を延ばす構成を目指すことになるわけですが、
は味方の構成に注文を付けないので自由なドラフトが可能なのです。
そのため、8.15前半ではがファーストピック候補になっていたわけですが、他のBan常連チャンピオン、タリヤやエイトロックスが研究され、ある程度オープンにしても対策可能ということが分かってくると、今度はが頻繁にBanされるようになりました。
こうなるとADCのピックで最優先されるのはカイ=サになります。
ラカンやタム・ケンチ、モルガナなどサポートチャンピオンが多くBanされるメタの中で、比較的Ban漏れしやすいアリスターとの相性が抜群で、この2体をセットでピックするチームが増えていきました。
1体のチャンピオンが目立ち始めるとカウンターが用意されるのがLoLの競技シーンです。
のカウンターとして白羽の矢が立ったのはトリスターナでした。
トリスターナは低レベル時からに対して単体ダメージ、射程面で有利に立て、お得意のキラーヴォイドによるダイブに対してもバスターショットで1回ディスエンゲージできるのでカウンターとして機能する、というわけです。
8.15でクリティカル系のアイテムの値段が下がったのも彼女にとっては大きな追い風でした。ストームレイザーで最低限のダメージを確保しつつ、の計3アイテム完成までの時間を稼ぐことが十分可能になりました。
と、いうわけで、8.15後半ではがBanされて対というマッチアップになるドラフトが頻繁にみられるようになりました。
彼女たちは所謂レイトゲームキャリー、ゲーム後半に大ダメージを出すタイプのADC、ですから必然的に彼女たちのダメージアウトプットを補助するチャンピオンが必要になってきます。
その結果、トップレーンは中盤を支えつつ、最後はキャリーの壁になれるCCタンクが多く採用されるようになりました。
具体的にはオーンとチョ=ガスです。
ナーは純粋なタンクではありませんが、レーンでタンク相手に有利を作れる点や後半はイニシエートやピールが出来ることもあって、依然として採用されています。
逆にクインはタンクやに対して有利なピックとして開発されたものの、マークスマンタイプのトップレーナーは存在そのものが高リスクですし、スプリットプッシュ性能とプロテクトキャリー的なメタのアンバランスさもあってパッチ後半では姿を消していきました。
なぜアーゴットがメタに刺さっているのか
さて、ここまで延々と8.15のメタについて話してきましたがここからは本題、アーゴットがなぜメタに刺さるのか、というところに触れていこうと思います。
ここから読む人のために前2項の話をまとめると
・テレポートが弱くなった。
・カイ=サとトリスターナ、レイトゲームキャリーがADCの中でトップティアになった。
・結果、トップレーンはオーンなどのタンクか、ナーのようなオフタンクが中心になった。
といった感じです。
ではなぜアーゴットがメタに刺さっているのか、見ていきましょう。
・メタチャンピオンに対してレーンで有利が取れる
アーゴットは8.15のメタトップレーナーほぼすべてにレーンで有利を取ることができます。
元々このチャンピオンはレーン戦が強力なので当たり前といえば当たり前ですが、レーンで勝てるというのは競技シーンにおいても重要なファクターのひとつです。
ジャングラーの活動できる範囲が増えますし、トップレーンでアドバンテージを取ることが出来れば、リフトヘラルド獲得も容易になります。
トップレーンが1v1で勝ってくれることはタワー1本以上の価値があるのです。
この役割に関してはクインやランブルなどと同じです。
・ゲーム中盤はアーゴットの時間帯
ブラッククリーバーが完成した段階で、アーゴットのダメージ量は飛躍的に上昇します。
特にWのパージとの相性は抜群で、は彼のためにあるかのようなアイテムと言ってもいいくらいです。
ADCのメタがレイトゲーム寄りになっているので、アーゴットをピックしておけば、ゲーム中盤にはやの代わりのDPS要因として活躍できます。
アーゴット自身が大量のダメージを生み出せるため、サイドレーンでタンクと1v1中に味方ジャングラーを介入させてキルを取る、といったプレイも容易です。
早い時間帯のバロンも行いやすく、味方のADCのパワースパイクを待つもよし、作った有利を広げる動きも行える万能なチャンピオンになっています。
・ゲーム後半はダイバーへのカウンターとして機能
メタがレイトゲームキャリー寄りになると、ザックやカミールといったバックラインに圧力をかけられるチャンピオンの価値が上がります。
トリスターナのようなADCは、さっさと倒してしまわないと結局集団戦をキャリーされてしまうことが多いですからね。
こういったダイバーと呼ばれるチャンピオンに対してアーゴットがカウンターとして機能します。
アーゴットの弱点はアルティメットのデスグラインダーを除くと、近距離にしかダメージを与えることが出来ない点ですが、ダイバーたちは勝手にアーゴットのところに飛び込んできてくれるわけですから、まさに「飛んで火にいる夏の虫」というやつです。
Qのコラプトシェルでスローを入れながら、パージを発動して相手をズタズタにするもよし、Eのディスデインでダイバーをキャリーから遠ざけるもよし、と受け手が広いです。
複数体のチャンピオンがダイブしてきても、1人をフォーカスして体力を削ってしまえば、の処刑発動で相手のダイバーたちを文字通り恐怖のどん底へと叩き落としてやれるわけです。
また純粋なダイバーではないですが、メタ上位に位置するオラフに対して強いのも見逃せません。
はラグナロクでCCを無効化して突っ込んでくる恐怖の存在ですが、はCCに頼らずダメージを出すことが出来るチャンピオンですし、の得意とする低ヘルスからの殴り合い性能に対してもの処刑がカウンターになっています。
このダイバーやへのアンチ性能はドラフト面でも非常に強力で、アーゴットは、先出ししてもレーンでのカウンターを取られるリスクがかなり低く、さらに相手のダイバーのピックを抑止することもできるという、ワイルドカードになっているのです。
逆に自分たちはダイブ性能の高いチャンピオンを一方的に抑えられるわけですから、イニシエート力がそれほど高くないアーゴットの性能をドラフト面の強さで補っている、ともいえるでしょう。
なぜ解放の魔導書を持つのか
アーゴットの登場、それ自体も驚きだったのですが、そのキーストーンに驚かれた方も多いはずです。
解放の魔導書は、一時トップレーンの必須キーストーンだった時代もありますが、リメイクされ、以降はサポートがローム性能や戦闘能力を上乗せするために時々採用する程度になっていました。
それを何故いまアーゴットが採用しているのか、これも周りのメタに影響されてのものなのです。
タイムワープトニックの時代
タイムワープトニックは天啓パスの3列目にあるルーンで、効果はポーション類の効果時間を20%増やし、その間移動速度が5%上昇するというものです。
現在このルーンの評価が非常に高く、を入れて、コラプトポーションをスタートアイテムにするというビルドがトップ、ミッドを中心に(時にはADCが選択する場合もあるほどに)大流行しています。
の自動効果もあって、この2つを持っていないとレーンでのダメージトレードに勝つことが難しくなってしまうほどです。
このスタートは、ドランシールドやドランブレードよりも、スタックに限りがあるものの、はるかに高いサステインを得ることができるので、
アーゴットが以前採用していた秘儀の彗星によるポーク・ハラス的なダメージの上乗せはあまり機能しなくなってしまったのです。
そこでいっそキーストーンを解放の魔導書にしてしまって、チームへの貢献、レーン復帰のためのテレポートを持ちつつ、イグナイトやイグゾーストといった戦闘用サモナースペルを使ってキルチャンスをつくったほうが良い、という発想が出てきたわけです。
全てのサモナースペルと親和性のあるアーゴット
はサモナースペルの交換ができるという特殊なキーストーンですが、一度交換したサモナースペルを使用すると、別の種類のサモナースペルを3回使ってからでないと再び同じものを選択できないという、デメリット効果が付いています。
しかし、これがことアーゴットにおいてはあまりデメリットにならないのです。
彼はマークスマンであり、ファイターであり、タンクであるという、彼の足の本数並みに多くの顔を持つチャンピオンです。
マークスマンにマッチするヒールやバリア、ファイターにマッチするゴーストやイグナイト、イグゾーストも自分のDPSを増やすためや相手のバーストを削るために使えるなど、マッチしないサモナースペルがほとんどないのです。
自身のバロンの速さを活かすためにスマイトを持って20分バロンを狙うこともできます。
このようにのデメリット部分がほとんど意味をなさないのです。
キルチャンスをつかむために、あえて直接ダメージの出ないキーストーンを選ぶ、プロが考えるニューメタにはいつも舌を巻きますね。
アーゴットのルーンやビルドについて
ここからはプロプレイヤーの採用しているビルドやルーンについて紹介していこうと思います。
が、
正直いってルーン以外はそれほど一般プレイヤーたちのビルドと変わらないと思います。
ルーンの解説
メインパス:天啓
解放の魔導書:必須です。というか、これの解説記事なので当たり前ですね。
魔法の靴:移動速度+10が近づかないとダメージを出せないアーゴットにとっては大きいです。
ただ相手からのダイブの圧力が厳しそうな場合は、パーフェクトタイミングでもよいでしょう。最終的にはガーゴイルストーンプレートやガーディアンエンジェルにすることが出来ます。
ミニオン吸収装置:ウェーブクリアが早くなり、その分ジャングルの小競り合いに参加したりと、強い時間帯に自由な時間が増えるルーンです。
ハラスが強い相手にはビスケットデリバリーを持って行ってもよいでしょう。
タイムワープトニック:必須です。理由は前項参照のこと。
サブパス:不滅
ボーンアーマー:必須です。トップレーンのダメージトレードでは依然強力です。
羽化:この枠はプレイヤーや対面のチャンピオンによって変わってきます。
羽化はガンク合わせが強いチャンピオンが対面のとき、息継ぎはミッドでピックしたときなどハラスの頻度が多そうな時、
超成長は対タンクでスケーリングを重視した選択肢となっています。
スキルオーダー
スキルオーダーはR>Q>W>E。
レベル1ではを取りますが以降は上げが一般的です。
アイテム
スタートアイテムはコラプトポーション。
これに関しては散々解説したので、もういいですね。
1stコアはブラッククリーバーで固定です。
チャンピオン性能との相性が抜群でこれ以外考えられません。
2nd以降はチーム構成やプレイスタイルによって変わってきます。
アダプティブヘルムやフローズンハートといった防具はダメージこそ伸びないものの、中盤のパワースパイクを大きく底上げしてくれます。
ライチャスグローリーはチームにエンゲージ性能が足りていないときのアイテム。このアイテムも非常にアーゴットと相性がいいので採用率は高めです。
今後もアーゴットはピックされ続けるのか
さて恒例の通信簿タイムです。
LCKファイナルという大舞台で大立ち回りをやってのけたアーゴットは今後もピックされ続けるのでしょうか?
評価は4段階で行いたいと思います。評価は以下の通りです。
4点:エウレカ! これはきっと世界を席巻するNewメタになりますね。
3点:素晴らしいピック! このチャンピオンをピックするフォロアーが各地で出てくるでしょう。
2点:悪くないね! 弱点はあるけど部分的には成立しています。
1点:残念! 意欲的なピックだったけどあまり成功しなさそうです。
さて今回のアーゴットの評価は・・・
4点:エウレカ! これはきっと世界を席巻するNewメタになりますね。
まあ、最後に書くのもなんなんですが、もう実はもう世界中でBan筆頭候補の仲間入りをしています。
EU LCSの決勝でも4試合中3試合でBanされていました。
全然ニッチピックじゃありませんね。
なんといってもメタに上がっているどんな構成にもマッチして、レーンが強く、相手の構成を縛れるというのはドラフト面において強力すぎます。
ただ、もちろん対策も練られつつあります。
LPLではブラッドミアをぶつけてレーンを引き分けに終わらせるという作戦で、この恐怖の処刑人を退けることに成功しています。
試合の動画はこちら(TOP vs SNG LPL PO Round1 game2)
十分なサステインとウェーブクリアをもったチャンピオンをぶつけるのが対策と言えそうです。
イレリアはサステインもあり、先陣の刃のCC、武装解除によって、アーゴットのDPSを大きく削ることが出来るのでカウンターとして考えられているようです。
またアーゴットはガンクにあまり強くないので、トップにキャンプするという作戦も考えられます。
これもLPLで成功例がありますね。
メタの循環のところで解説してきたように、プロのコーチやアナリスト、プレイヤーたちはこういったOPチャンピオンに対して必ず回答を見つけてくるので、
今後アーゴット自身が、プロからの受けるであろう「試練」を乗り切ることが出来るのか、注目していこうとおもいます。
おわりに
いかがだったでしょうか。
今回はあまり個別の具体的な構成やピックというよりも、メタの変遷に重きを置いてみました。
メタが回ると意外なチャンピオンが浮上してくるのがLoLの常ですが、ChallengersKoreaの解説中にアーゴットが先出しロックインされたときは本当に驚きました。
Worldsへ向けてあと数パッチ、各国の代表が出そろってくるタイミングですが、LJLのファイナルやLCKのリージョナルファイナルなどで、が、もしかしたら全く別のチャンピオンが出てくるかもしれない、と思うと、いまから楽しみでなりません。
面白かったらシェア等よろしくお願いします。
変なチャンピオンが出てきたときにまた記事にしようというモチベにつながります。
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